22歳の大型遊撃手、オリックス・紅林弘太郎 「肉体改造」と「同級生との誓い」で臨む新シーズン

三和直樹

プロ5年目のシーズンへ向けて調整を続けるオリックス・紅林。南国の太陽が、引き締まった表情をさらに際立たせている 【写真は共同】

 オリックスの若き正遊撃手、紅林弘太郎。駿河総合高校からドラフト2位で入団すると、強肩強打を武器にプロ2年目の2021年からレギュラーとして活躍し、チームのリーグ3連覇に大きく貢献した。期待の逸材から球界を代表するショートへと変貌を遂げようとする成長過程の22歳に、プロ5年目となる新シーズンへの意気込みを聞いた。

引き締まった表情、「長く野球やる」ための肉体改造

――プロ5年目のキャンプ、ここまでの仕上がりは順調ですか?

 はい。オフからやってきたことをキャンプでも継続してやれているので、いい感じだと思います。とにかく今年のキャンプは練習量をめちゃくちゃ増やしています。守備にしてもバッティングにしても。それはシーズン中も続けていきたいですね。

――自主トレは地元・静岡で行ったとのことですが、具体的にどういった部分に取り組んだのでしょうか?

 まず、体ですね。肉体から変えていきたいというのが自分の中であって。足の速さであったり、バッティングの強さであったり、根本的な部分を鍛えることを意識して取り組んで、筋肉量も増やして、体脂肪率もだいぶ落ちました。普段からお酒は飲まなくて、食事面ではより気を遣ったりもしましたけど、一番は練習量ですね。とにかく練習量を増やして、動ける体を作ってきたつもりです。

――実際にキャンプが始まって、その鍛えた肉体の動きが去年までとは違うなという感覚はありますか?

 自分自身は、自主トレからずっとこの体でやってきているので、急に変わったというのはあんまり感じないですけど、実際に走るタイムとかは去年より良くなっていますし、周りからも「足が動いているな」と言われます。僕が自分で感じている以上に成果というのは出ているのかなと思います。

――その“肉体改造”というのは、昨年までの自分に足りないものがあったということ?

 そうですね。去年までプロで4年間やってきて、このままではダメだなと思いました。年齢的にもまだ若いですし、もっと上を目指さないといけない。若いうちにしかできないことはあると思いますし、去年はぜんぜん体が動けていなかったので、まずはそこから変えたいと思いました。長く野球をやりたいんで、今からやれることをやっていきたいです。

昨季の手応えを手に「本塁打&打点アップ」へ

昨年5月24日の楽天戦でサヨナラ2ランを放った紅林。中嶋監督からヘッドロックの手荒い祝福を受けた 【写真は共同】

――改めて去年のシーズン振り返ると、127試合に出場して打率.275、8本塁打、39打点と活躍しましたが、開幕は2軍スタートでした。

 オープン戦の時にファーム行きを言われて……正直、そこで腐ってしまいそうになった。でもWBCで宮城(大弥)が活躍してチームに帰ってきて、「あれ? 俺、何してんだろ」って思って……。そこで気持ちを切り替えられました。腐っていたらダメだなっていう気持ちになれましたね。

――5月24日の楽天戦でのサヨナラホームランが非常に印象として残っています。自身初めてのサヨナラアーチだったとのことですが。

 はい、初めてでしたね。あの1本は自分の中でもキッカケになった打席だったので、僕自身もすごく印象に残っています。一番は気持ちですね。あれで自信が付きました。ホームランボール? いや、あんまそういうものを大切に保管するタイプじゃないので……。あのボールどこ行ったっけな……(苦笑)、という感じです。

――そこから一気に調子を上げて、オールスター初出場も果たしました。

 うれしかったですね。プロに入ってからのひとつの目標でもありましたし、すごい選手たちと一緒に野球ができたことは、自分の中でもすごくいい経験になりました。いろんな話を聞きくことができたし、本当にいい経験だったと思います。

――いろんな話を聞けた中で、特に誰との話が印象に残っていますか?

 やっぱり源田(壮亮、西武)さんですね。オールスターに行く前から源田さんの話を聞きたいと思っていて、実際にいろんな話をすることができて、教えてもらうこともできた。源田さんの守備って、ストレスがないというか、すごく洗練されている。僕は肩には自信があるんですけど、逆に肩に頼ってしまう。ちゃんと足を使って、流れるような動きで打球をさばきたいので、そこで源田さんがどういうイメージを持ってやっているのかだったり、普段の練習でどんなことを意識しているのかとか、いろいろと聞くことができました。ありがたかったです。

――その守備面を見ると、失策数が年々、減ってきている(21年17失策、22年11失策、23年6失策)。自分の中で上達している実感があるのでは?

 そうですね。エラーの数を減らすことができているのは良いこと。当たり前のプレーを当たり前にできるようになってきたかなとは思っています。これまでの練習の成果かなと思いますし、今後も継続していきたいですね。

――昨季はポストシーズンでの活躍も光りました。CSでは第1戦で決勝打を放ち、日本シリーズではチームは敗れましたが、個人としては打率.400(20打数8安打)でした。短期決戦で結果出せた要因をどう考えていますか?

 短期決戦は、“あとがない戦い”でプレッシャーはあるんですけど、僕の頭の中では“目立ったら勝ち”というか……。特に僕自身が目立ちたがり屋という訳じゃないんですけど、日本シリーズとかは全国放送もされるので、自然とモチベーションは上がりました。それと、普段あまり対戦しないピッチャーが相手で、「初球からどんどんいけ」というチームの方針が、自分のバッティングの感覚とうまく合ったのかなと思います。思い切りやれたというのが結果に繋がったと思います。

――昨季のレギュラーシーズンの「打率.275、8本塁打、39打点」という成績を見て、これから伸ばしたい数字はどこでしょうか?

 やっぱり、ホームランを増やしたいですね。でもホームランを狙いすぎてもダメになるので、そこは自分の技術を上げていくしかない。僕としては3番を打ちたいと思っているので、もっとチャンスで打てるようになって、得点圏打率も上げて、もっと打点を稼げるようになりたい。

――チャンスの場面で心掛けていることは?

 僕自身はあんまりチャンスで打てていないので言える立場じゃないんですけど……。でも、森(友哉)さんには去年もよく話を聞いて、「得点圏でこそ思い切りよく」「考えすぎるな」「どこに来ても打ちにいけるぞという気持ちで打席に立て」とか、いろいろとアドバイスをもらって、去年の後半ぐらいからは自分の中でもチャンスで結果が出るようになった。今年は西川(龍馬)さんも来ましたし、いろんな話を聞きたいですし、いろいろと盗んでいけたらと思っています。

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著者プロフィール

1979年1月1日生まれ。大阪府出身。学生時代からサッカー&近鉄ファン一筋。大学卒業後、スポーツ紙記者として、野球、サッカーを中心に、ラグビー、マラソンなど様々な競技を取材。野球専門誌『Baseball Times』の編集兼ライターを経て、現在はフリーランスとして、プロ野球、高校野球、サッカーなど幅広く執筆している。

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