5度目の天皇杯制覇に向かう千葉ジェッツ 7年前の初優勝を知る富樫、西村が支えた21点差からの逆転劇
西村が試合を決める
西村は試合の「締め」で大きな働きを見せた 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
西村は言う。
「大事な試合の勝ち方は、やはり僕らの方が知っているつもりです。そういうときの戦い方を背中で見せる……。特に僕みたいなベテランが身体を張って頑張ることで、チームの士気は上がると思っています」
78-72で大一番は決着した。富樫は試合をこう総括する。
「これだけしびれる試合はそんなに多くないかな、と思うような展開でした。最悪な出だしでしたけど諦めず、これほど力のあるチーム相手にカムバックできたのは、一つチームの成長につながると思います」
西村の感想はこうだ。
「ホームの力。この言葉に限るのかなと、思います。久しぶりに鳥肌が立つような展開だったので、さすがの自分でもグッとくるものがありました」
リーダー2人が果たした役割
パトリックHCは金近、小川ら若手を積極的に起用していて、未来に向けた明るい兆しは見えている。宇都宮戦の後半のようにチームが「ハマった」ときの爆発力も素晴らしい。ただしチームの安定感、成熟といった面では物足りなさもある。
宇都宮との準決勝は、そんなチームをベテラン2人が引っ張って、決勝まで引き上げた。富樫は29得点、9アシストの大活躍。西村も20分7秒の出場で8得点を挙げ、勝負どころで攻守のビッグプレーも決めた。
富樫は2015-16シーズンから、西村は2014-15シーズンからこのクラブでプレーしている。2人はこのチームでBリーグのチャンピオンシップ、天皇杯を計5度も勝ち取った。今の彼らは豊富な経験を積んで「タイトルの取り方」を熟知し、リーダーシップをまとったベテランだ。
初優勝から7年
千葉の天皇杯初制覇は日本バスケにとっても歴史的な出来事だった 【写真:アフロスポーツ】
振り返ると2017年1月の天皇杯は彼らが全国区になった契機だった。2016年9月にBリーグが開幕した直後の開催で、千葉が初タイトルを獲得した大会だ。そもそも実業団のルーツを持たないプロチームとして初の天皇杯制覇だった。
39歳の大野篤史HC(現三遠ネオフェニックス)が率いた新興チームは栃木ブレックス(現宇都宮)、シーホース三河、川崎ブレイブサンダースを連破する快進撃を見せた。23歳だった富樫は、そこから日本を代表するスターへと駆け上がっていく。
当時の富樫はこんな初々しいコメントを残している。
「プロになって初めての優勝だったので、言葉にできないくらい嬉しいです。オールジャパン(=天皇杯)でプロのチームが優勝したことは無いと聞いていました。今までの歴史を知らないけれど、凄いことだと思います。アルバルクと栃木を追い抜けるように戦っていきたい」
今や千葉は人気実力を兼ね備えた「ビッグクラブ」で、今春には新アリーナも完成する。チームは世代交代の途上だが、それも産みの苦しみだろう。クラブの歴史を彩ってきた2人は、若手を引っ張りつつ、また新しい歴史を作ろうとしている。