本田真凜のラストダンスが琴線に触れた理由 注目を浴びた競技人生、自らが決めたゴール

沢田聡子

「スケートはすごく好きですし、幸せ」

本田は年明けからスケートの練習を再開したという 【写真:松尾/アフロスポーツ】

 引退会見で、本田は全日本選手権の演技後にみせた氷に触れる仕草について問われている。

「やっぱり全日本の舞台というのは自分の中で特別で、ジュニアに上がって初めて出場資格が満たされた年から9年間ずっと全日本の舞台にはたどり着けてきましたし、それは本当に自分をほめてあげたいなというか、誇らしく思えるところで。たくさんのお客さんの前で自分が演技できるあの舞台がすごく好きで、『これで最後なんだな』というのをかみしめた、すごく幸せな瞬間だったなと思います」

 本田にとって特別な全日本選手権は、最後の試合としてふさわしい大会だった。

「大学4年生のタイミングで競技の場から離れるということは、もうずっと決めていたこと。最後の全日本の前にも、体の状態などもありつつ『もしかしたら今年で、この演技で最後になるんじゃないかな』とは自分の中で思っていたので、『どうしても頑張りたい』という思いで最後まで走り続けられたかなと思います」

「最後の試合はちょっと自分の中で状態が良くなかったのですが、頑張れたと思います。最後までいろいろな支えがあったからこそ、ここまでスケートが大好きなまま、引退という形までたどり着けたんじゃないかな」

 支えとなった大きな存在として、浅田真央さんの存在があった。本田は、会見で一言一句覚えているという真央さんの言葉を明かしている。

「真凜が小さいときから最後まで逃げずにここまで頑張ってこられたのは、すごく偉いことなんだよ。新しいスタートも胸を張って、思い切り進んでいけばいいよ」

 浅田さんは幼い頃から衆目の中でスケートに取り組んできた本田の思いを理解できる、数少ない存在なのだろう。

 本田は、常に視線を浴び続けてきた競技人生を振り返った。

「世界ジュニアで優勝することができたあたりからたくさん注目していただけて、どんなときもカメラの方が一緒で、良かったな、幸せだったなと思うこともたくさんありましたけれども、小さい頃の私はそれですごく辛いなと思うことももちろんあって。でも、そのときより順風満帆という感じには見えなかったかもしれませんが、その当時の私より今の方が、スケートはすごく好きですし、幸せだと思っています」

 傍目から選手の競技人生を振り返る際、成績という判断基準に偏りがちだ。しかし、自ら設定した目標を達成し、スケートが好きという気持ちを膨らませながら引退した本田の競技人生は幸福だったといえる。

 スケートを愛し続けて競技生活を終えた本田真凜は、これからプロスケーターとして臨む舞台で観客を魅了し続ける。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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