高校サッカー選手権準決勝、近江vs.堀越を展望 “変化”で躍進した初の4強同士の対決

安藤隆人

攻守における可変を得意とする堀越。戦術的で柔軟性の高いチーム作りで4強にまで上り詰めた 【写真は共同】

 102回目を迎えた全国高校サッカー選手権大会もいよいよ準決勝。本稿では、共に初の選手権ベスト4進出を果たした近江と堀越の一戦を展望する。

攻撃的な[3-4-2-1]が伝統の近江

 フレッシュな4強対決となったこの一戦。両チームに共通しているのは、確固たる自分たちのスタイルを持ち、そのスタイルをブラッシュアップしてきたことにある。さらに踏み込んで言うと、その過程での“例年との変化”も共通したものとしてある。

 まずスタイル面で言うと、近江は攻撃的な[3-4-2-1]が伝統のスタイル。相手の位置の変化、ズレを見て果敢に縦パスを打ち込んでいくことが共通認識としてあり、3バック、ダブルボランチがまず相手DFラインの変化を見てから、深みを狙いつつ、無理をせずにショートパスでビルドアップしていくことも頭に入れてプレーを組み立てていく。

 今年のチームはかなりそのプレー判断の質が高い。中心となるのが西飛勇吾と川上隼輔のダブルボランチで、共にパスとキックの精度が高く、攻守のバランサーとしてのポジショニング、プレー選択も非凡なものがある。

 ダブルボランチの前には山門立侑と荒砂洋仁のインサイドハーフがおり、彼らがCBからコンバートされた1トップの183センチの長身FW小山真尋のポストプレーから湧き出ていくことはもちろん、3バックのボールの持ち出し、ダブルボランチのポジショニングを見て、ハーフスペースに顔を出してボールを引き出すなど、中央での縦に速いポゼッションに関与。3-2-2でロンドをしながらボールを前に運んで行けるのも強みだ。

 そして常にハードワークと運動量が求められる両ウイングバックには、そのタスクを忠実にこなしながらも個性を発揮できる選手がいる。準々決勝で2ゴールを挙げて初の国立進出のヒーローとなった右の鵜戸瑛士、左の浅井晴孔の両ウイングバックは運動量が豊富で、ボールを持ったら迷わず仕掛けていく打開力を持つ。彼らのハードワークがあるからこそ、5バックになって後ろが重たくなってしまうことはなく、常に中盤に人数がいる状態で試合を進めることができる。縦へのポゼッションで中央に相手を集めてからサイドに展開したり、サイドチェンジを入れたりすることで彼ら2人の突破力とフィニッシュセンスを最大限に引き出しているのだ。

攻守における可変が得意な堀越

 一方の堀越のスタイルは中盤が逆三角形の[4-3-3]。アンカーの渡辺隼大が豊富な運動量を駆使してリンクマンとなり、その前にはずば抜けたキックセンスとドリブルでの持ち出しを得意とする仲谷俊とハードワーカーの吉荒開仁のインサイドハーフが攻撃の中枢を担う。

 この中盤の3枚の運動量と展開力から、180センチのセンターFWの高谷遼太のポストプレー、左の伊藤蒼太と右の中村健太が両サイドから果敢にドリブルで仕掛けてくる。さらに後ろを3枚にしてCB森奏が果敢に前に出てくるのも特徴の1つだ。

 守備時にはアップダウンを得意とする吉荒が渡辺隼と並び、仲谷が高谷と前線を2枚にした[4-4-2]の形に切り替わり、2トップを軸とした前線からの果敢なプレッシングと3ラインでのブロックの守備を状況に応じて使い分ける。こうした攻守における可変は堀越が得意とすることで、佐藤実監督は毎年のように戦術的で柔軟性の高いチームを作り上げてくる。

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著者プロフィール

1978年2月9日生まれ、岐阜県出身。5年半勤めていた銀行を辞め単身上京してフリーの道へ。高校、大学、Jリーグ、日本代表、海外サッカーと幅広く取材し、これまで取材で訪問した国は35を超える。2013年5月から2014年5月まで週刊少年ジャンプで『蹴ジャン!』を1年連載。2015年12月からNumberWebで『ユース教授のサッカージャーナル』を連載中。他多数媒体に寄稿し、全国の高校、大学で年10回近くの講演活動も行っている。本の著作・共同制作は12作、代表作は『走り続ける才能たち』(実業之日本社)、『15歳』、『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、『ムサシと武蔵』、『ドーハの歓喜』(4作とも徳間書店)。東海学生サッカーリーグ2部の名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター

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