GPファイナルメダリスト7名が出場する全日本選手権 昨季優勝の宇野昌磨・坂本花織に精鋭が挑む

沢田聡子

3連覇がかかる坂本花織に死角なし

GPファイナルでは盤石の強さをみせて優勝した坂本花織 【写真:ロイター/アフロ】

 女子では、ファイナルでも安定した強さをみせた坂本が頭一つ抜けている。メンタル面で苦しみファイナルで5位に終わった昨季と違い、今季はGPから完成度の高いプログラムを披露した。高い出来栄え点を獲得する大きなジャンプとスピード感あふれるスケーティングを磨き続けており、唯一無二の強さを誇る。向上心を忘れずスケートに取り組み続ける23歳の女王が、3連覇を達成するか。

 島田は、今季もジュニアの枠を超えた強さをみせている。全日本ジュニア選手権とファイナルではいずれもショートでミスが出たものの、フリーで巻き返して優勝した。さらにファイナルのフリーでは、目標としてきたトリプルアクセルと4回転トウループの同時成功を成し遂げている。逆境でも挑戦する気持ちを忘れないジュニアの絶対女王が、昨季の銅メダルに続き今季もメダルを獲得するか、注目される。

 ファイナルで銅メダルを獲得した吉田陽菜にも、期待がかかる。今季シニアデビューした吉田は、苦しい時期を乗り越えてきた。12歳でトリプルアクセルに成功したが、その後怪我のため試合に出られない時期も経験。昨季はジュニアGPファイナルと四大陸選手権に出場したものの、本番で力を出し切ることはできなかった。ファイナルの表彰台を経て迎える今年の全日本では、一皮むけた強さをみせてほしい。

 ファイナル進出を果たした住吉りをんは、フランス杯でジュニア時代から挑み続けてきた4回転トウループに初めて成功している。大技に加え伸びやかな滑りと曲を体現する表現力も強みで、全日本でも新風を吹かせることができるだろうか。

 渡辺倫果はスケートカナダでは6位に終わったものの、中国杯では演技をまとめて2位に入っている。全日本では、今季まだ試合では跳んでいないトリプルアクセルに挑む意向を明らかにしている。GPは一試合のみの出場ながら、スケートカナダで3位に入った松生理乃にも期待したい。

 昨季の休養を経て今季試合に戻ってきた樋口新葉も少しずつ調子を上げ、9位だったNHK杯では転倒したもののトリプルアクセルにも挑んでいる。2年ぶりとなる全日本では、過去の経験を生かし、力を出し切ってほしい。

 夏に右足首を痛めた影響で中国杯を欠場した三原舞依は、NHK杯が今季初戦となった。万全ではなく8位という結果だったが、ベストを尽くす真摯な姿勢が伝わる演技だった。昨季の銀メダリストとして臨む全日本では、笑顔で演技を終えられることを願う。

 全日本は、すべての選手がピークを合わせてくる大一番だ。さまざまな思いが渦巻くビッグハットのリンクで、今年はどんなドラマが展開するのだろうか。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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