26年WBCまでにメジャーに挑戦する日本人選手は? 投手の筆頭候補は高橋光成、野手は村上宗隆と──
22年シーズンに史上最年少の22歳で三冠王に輝いた村上。3年契約が満了となる25年オフのポスティング・システムによるメジャー挑戦が容認されている 【写真は共同】
スピード以上に重視されるのは球質
世界一に輝いた今年3月のWBCで、侍ジャパンのエース格として活躍した山本と今永は、ともに以前からメジャー挑戦の思いを球団に伝えており、満を持してこのタイミングで海の向こうへと渡る。松井も抑えとしての実績は申し分ない。WBCでは対応に苦しんだが、やはりメジャー公式球を操れるかどうかが成功のカギを握るだろう。
一方の上沢は、打線の援護との兼ね合いで今季9勝にとどまった。シーズン2ケタ勝利は通算2度と、山本、今永(いずれも3度)に実績で見劣りするが、『スポーツニッポン新聞社』MLB担当の柳原直之記者は以下のような見解を示す。
「上沢投手は直球の平均球速が145キロとメジャーでは遅い部類に入ってしまいますが、フォークの制球力がいい。縦の変化はメジャーの強打者に有効なので、この球を操れるかが生命線になります。変化球の球種が豊富で、制球力が良いことも武器になる。先発ではなく、リリーバーで重宝される可能性もあります。
メジャー公式球に適応して活躍した斎藤隆さん(元ドジャースほか)のようなケースもあります。前田健太投手(ツインズから今オフFAに)も直球が目を見張るほど速いとは言えないなか、メジャーで結果を残しているのは制球力が安定しているからです」
表示される球速に目が行きがちだが、メジャーのスカウト、編成担当はもっと多角的に見ているという。
「メジャーには平均球速で150キロ台後半を投げる投手がゴロゴロいます。スピードは大事な要素ですが、それ以上に球の質が重視される。今永投手の評価が高いのは、直球の回転数がメジャートップクラスに該当する毎分2500回転を超え、空振りを取れるからです。
先日会ったメジャーのスカウトが、『オリックスの阿部翔太は面白い。直球の回転数が多く、軌道もいい。平均球速は145キロ前後だがファールや空振りが取れる』と評価していました。投手のフォームで打者の体感速度や見づらさが変わってきますし、奥深さを感じました」
西武の2投手もメジャー挑戦の意向
今オフの渡米は断念した西武の高橋光だが、1年後の渡米が有力視されている。平均150キロを超える速球、鋭い縦の変化球はメジャーでも通用しそうだ 【写真は共同】
ポスティング・システムは球団や戦力事情によってスタンスが変わってくるため予測が難しい部分があるが、筆頭候補となるのが西武の高橋光成だ。
平均球速は150キロを超え、フォーク、縦に落ちるスライダーに加えて左打者の内角に食い込むカットボールを効果的に使う。スタミナも十分だ。22年オフにメジャー挑戦の意向を表明し、今オフもポスティング・システムの利用を直訴したが、球団の承諾を得られず断念。それでも来シーズン、エースとしてチームを優勝に導くような申し分ない成績を残せば、24年オフにもメジャー挑戦が実現しそうだ。
西武では平良海馬も、昨オフに将来のメジャー移籍の希望を球団に伝えている。直球、スプリット、スライダー、カットボールとすべての球種が高水準で、クイックから150キロを超える直球を投げられる。
敏腕代理人として知られるスコット・ボラス氏が運営する『ボラス・コーポレーション』と契約を結んでいる平良だが、高橋光と同じタイミングでポスティング・システムの承諾が得られるとは考えづらい。最短で26年以降に海を渡るか。
他にもメジャーの評価が高い日本人投手は多くいる。
WBCで好投して株を上げた戸郷翔征(巨人)、高橋宏斗(中日)、伊藤大海(日本ハム)はもちろん、NPB公式戦にもメジャーのスカウト陣が足を運び、今井達也(西武)や山下舜平大(オリックス)の登板試合に熱視線を注いでいた。これらの投手たちはポスティング・システム、海外FA権の行使によるメジャー挑戦に言及していないが、今後の動向から目が離せない。