星野と落合のドラフト戦略 元中日スカウト部長の回顧録

95年、球団の「外」から福留1位を決めた星野仙一 7球団の競合に敗れるも、「外れ外れ1位」で獲得できた稀代の名手

中田宗男

「4人のショート」で一番評価の低かった荒木

 福留の外れ1位で指名したのは東海大相模高のキャッチャー原俊介(現東海大相模高監督)。残っている選手のなかからポジションに関係なく力のある選手を指名しようということになり指名したのだが、巨人と競合して外した。

「外れの外れ」は誰でいくべきか。ヤクルトも抽選を二度外したため、三度目の抽選になる可能性もあった。「くじ引きにならん奴、確実に獲れる奴でいこう」という星野さんの要望もあり、3位か4位で指名予定だった熊本工業高の荒木雅博を繰り上げて1位指名した。

 指名しておきながら言うのもなんだが、荒木に「1位」は荷が重すぎると思った。正直、荒木を気の毒にさえ思った。

 この年、福留を含めて3人の高校生ショートがドラフト1位指名されている。スカウト内での評価は、福留がもちろん別格。打撃が圧倒的で守備に目をつぶってでも使う価値のある選手だった。その次が銚子商業高の澤井良輔(ロッテ1位)と上宮高の三木肇(ヤクルトの1位)。澤井は長打が魅力だったが守備もバッティングもちょっと荒っぽいところがあった。三木は走攻守のバランスに優れていたが突出したものがなかった。荒木はその次という評価だった。守備と足は図抜けていたものの、打つほうが弱くて評価が低くなっていたのだ。

 そんな荒木が、後にチームの黄金時代を支え、2000本安打を達成する選手になるのだから、ドラフトはわからないものだ。

【写真提供:カンゼン】

「星野さんは人を残し、落合さんは結果を残した」。スカウト歴38年、闘将とオレ竜に仕え、球団の栄枯盛衰を見てきた男が明かすドラフト舞台裏。

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