J2制覇に向けて苦しむ町田が甲府戦で見せた新機軸 5試合ぶり先発の19歳MFが示した指針とは?
「前半戦と同じように」とはならず
荒木はゴールから遠ざかっている 【(C)J.LEAGUE】
今季は開幕から10試合で5得点を決め、町田が序盤戦にスタートダッシュを決めた立役者になった。半年前に驚異的な決定力を見せていた彼が、その後27試合はゴールから遠ざかっているのだから、サッカーは難しい。
荒木は悔しそうな顔を見せつつこう述べる。
「メンタルの部分だと思うんですけど、決められた時期は『なんか、決められるな』という気持ちで試合に出ていました。今は『出たら、決められる』という感覚がない。後半のチャンスで(宇野)禅斗に出して、禅斗が打って外した場面がありましたけど、シーズン前半だったら自分で打っているし、決めていたなと感じます」
選手もチームも生き物だ。前半戦の町田はいい意味で『波』に乗っていた。今の苦しむ町田を見て「好調だった時期と同じようにサッカーをすればいい」と考えるファンもいるだろう。ただ相手に研究され対策もされる中で、30試合、40試合と同じスタイルをコピーのように通用させ続けることは難しい。夏場の戦いはどうしても遂行力が落ちていたし、優勝や昇格が見えてくる時期にはメンタル的な負荷もある。
アスリートにもチームにも、成長と停滞のサイクルがある。「後ろに戻る」ことは簡単なようで難しく、結局は前に進むしかないーー。町田と荒木は、今そんな時期に差し掛かっているのだろう。
“切磋琢磨”をポジティブなものとして
宇野は攻守で球際の強さも発揮していた 【(C)J.LEAGUE】
彼は試合から遠ざかる試練を、自らの糧に変えた。
「自分は去年から、怪我で試合にすら絡めない期間が長かったと自覚しています。本当に競争率の高い中で試合に絡みながら、逆にメンバーに入れないときも過ごしながらという状況を、全てにおいてポジティブに捉えています。ここなら絶対に出られるというポジションは、正直このチームのどこにもありません。他にも色んな特徴のある選手が同じポジションにいて、見て学ぶのもそうですけど、練習と試合と一緒にプレーしながら学べるところが多くあります。そういう選手たちと切磋琢磨しながら、日々向上心を持ってやっていけていること自体が、本当にポジティブだと思っています」
それはJ2の戦いも同じだろう。終盤戦に差し掛かって、どのチームも戦術的な完成度が上がり、それぞれの目標に向けてモチベーションも高まっている。現時点の順位は単なる数字で、このカテゴリーは仮に下位でも「絶対に勝てる」相手などいない。切磋琢磨の過程では芳しくない結果や、課題に直面することもある。ただ、チームの成長という部分に限ればそれはポジティブな現象だ。
青森山田高から加わってプロ2シーズン目の19歳は『難しさ』との向き合い方を知っている。
「去年は15位で、悔しいチーム状況を見ていました。今はすごく厳しい状況ですけど、1位にいさせてもらっている。追われる立場の厳しさ、難しさもありますけど、逆に追う立場の厳しさ、難しさ、焦りも当然のように出てくるはずです。他のチームのことを考えるより次の1試合に向けて、チーム全体として今日の試合の良かった点、悪かった点を明確にする。そして次の試合をさらに良い状態で迎えて、必ず勝利をつかむことで自ずと優勝、昇格に近づいていく――。自分たちにはそれ以外ないと思っています」
成長につながるJ2終盤戦
そんな難しい状況を結果として乗り越えられれば、町田はJ1に相応しいチームに一歩近づける。初のJ1昇格を目指すチームにとっては「成長への過程」としても意味が大きい秋田戦、そしてJ2の残り5試合だ。