報徳学園・今朝丸が忘れられないマウンド 夏の苦い記憶から殻を破れるか

沢井史

長身で器用、ドラ1候補に投げ勝つポテンシャル

報徳学園の今朝丸は今春のセンバツで4試合に登板して決勝進出に貢献した 【写真は共同】

 報徳学園の今朝丸裕喜(2年)はセンバツで4試合に登板。春の県大会でエース番号を背負い、グングンと状態を上げた。だが、夏の大会中に思わぬ事態となり、結果がなかなか伴わなかった。

 マウンドでは表情を崩さず、黙々とミットをめがけて腕を振る。1年秋からマウンドに立ち、スライダー、カットボールなどをうまく操って三振を奪い、当時からストレートは140キロ近いスピードを誇っていた。185cmという長身からも未知数のポテンシャルの高さを感じさせる。

 今春のセンバツでは4試合13回1/3を投げ、12奪三振8失点。3回戦の東邦戦で甲子園初登板、しかも初先発。強力打線を相手に6回2/3を投げ2失点にまとめた。準決勝の大阪桐蔭戦では同点となった8回から3番手として登板し、2回を1安打無失点。決勝進出に弾みをつけた。

 センバツ直後の春の県大会ではエースの盛田智矢(3年)がケガでベンチを外れ、背番号1を背負った。だが、「盛田さんがケガをして自分が代わりに背負っただけなので、自分が勝ち取った背番号ではないです」と謙そんする。県大会決勝の滝川二戦では先発し、7回を6安打1失点。昨秋の県大会準々決勝で接戦の末破った相手がリベンジに燃え、最後まで食らいついてきたが、サヨナラ勝ちへ良い流れをもたらした。

 今朝丸の良さをあらためて大角健二監督はこう明かす。

「角度のあるストレートがあって、フォークや横のスライダー、カーブなどもある。調子が良ければインサイドにストレートを投げられて、外にスライダーも投げられるし、器用なところもあるんです」

 6月の練習試合では、今秋のドラフト候補の最速152キロ左腕・東松快征(3年)擁する享栄戦に先発し、1失点ながら15奪三振で完投勝ち(2-1)。初回にいきなり1点を失うも、2回以降は大きなピンチを作ることはなかった。この日は制球力も良く、フォークやスライダーのキレ味が抜群。無駄な球がほとんどなかった。安定感が増し、このまま夏の大会に向けて一気に状態を上げていくはずだった。

 迎えた夏の兵庫大会。3回戦の滝川戦で2番手として初登板。先頭打者からいきなり3連打を浴びるなど、5安打3失点と振るわず、わずか2回で降板した。大会中に患ったぎっくり腰が原因だったが、試合後は反省の弁ばかりを口にしていた。

 そして、今朝丸にとって忘れられないマウンドが、この夏にある。

「特にあの1球は今でも頭の中から離れません」

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著者プロフィール

大阪市在住。『報知高校野球』をはじめ『ホームラン』『ベースボールマガジン』などに寄稿。西日本、北信越を中心に取材活動を続けている。

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