NPBドラフト候補たちの“四国決戦”を見逃すな! 徳島vs.愛媛の「トリドール杯 チャンピオンシップ」に注目

金沢慧

9回を1投手ずつでリレーする「奇策」がまた見られるか?

【スポナビ野球速報データから筆者作成】

 対する愛媛も投手層が厚い。坊っちゃんスタジアムでの計測でストレートの平均球速140キロを超えている投手が9人いる。この投手層は弓岡敬二郎監督の戦術にも影響を与えており、8月13日の徳島戦では9回を1イニング1投手ずつ、9人の右腕で継投し3安打無失点に抑えて勝利するという試合を見せた。特に最速150キロ以上をマークしている内海皓太、羽野紀希、菊田翔友、土居毅人はNPBドラフト会議での指名が十分に期待できる投手だ。

 CSでも各投手に自慢の速球を見せてほしいが、第1戦が行われるむつみスタジアムは球速が他球場より遅めに出る傾向があり、ここで150キロを計測するのは難しい。CSの試合映像はスポナビ上でも配信する予定だが、オンラインで観戦する際にはむつみスタジアムの球速表示はやや遅めであると認識いただけると良いだろう。

 CS第1戦の先発は9月1日の徳島とのレギュラーシーズン最終戦で9回途中まで116球を投げて2失点に抑えた玉置隼翔が有力だが、誰が先発しても投手陣は総動員となりそうだ。

愛媛の中軸は四球を選ぶ能力が高い

 愛媛打線で注目したいのはリーグOPSランキング2位の浅井玲於と3位の河野聡太。出塁率+長打率で表されるOPSは得点に直結する指標で、2人とも長打率こそ1位の井上より低いが、出塁率は同程度。特に浅井はリーグ1位の41四球を選ぶなど選球眼が良い。短期決戦のため、徳島の分厚い投手層は総動員されるはずで、チャンスの回数は少ないだろう。その中で投手のちょっとした乱れを見逃さず、四球を絡めて複数得点のイニングを作れるかが勝負の行方を左右する。

【四国アイランドリーグplusデータサイトから筆者作成】

9月29日(金)からの「日本独立リーググランドチャンピオンシップ」に向けて弾みをつけたい

 以上、22日から行われるIBLJのCSの見どころを紹介したが、徳島、愛媛の2チームは9月29日(金)からの日本独立リーググランドチャンピオンシップ(以下、GCS)2023への出場が決まっており、CS後に日本一を目指す戦いが待っている。

【筆者作成】

 GCSは日本独立リーグ野球機構(以下、IPBL)に参加する5リーグの代表チームで争う大会で、今年は坊っちゃんスタジアムで開催される。各リーグの優勝チームと開催県枠があり、愛媛は開催県枠として出場するため、徳島もCSの結果に関わらずIBLJ代表として出場することが決まっている。現在、各地で出場チームを決める戦いが進んでおり、25日までには全チームが出揃う予定だ。

【筆者作成】

 2023年にIPBLに参加しているリーグ、チームの一覧は次の通りだ。ご覧の通り全国20道県で5リーグ(北海道フロンティアリーグ:HFL、ルートインBCリーグ:BCL、日本海リーグ:NLB、四国アイランドリーグplus:IBLJ、ヤマエグループ九州アジアリーグ:KAL)全21チームが試合を行っている。GCSはその頂点を決める戦いで、昨年はKALの火の国サラマンダーズがBCLの信濃グランセローズを決勝で破り、初優勝を飾った。

 今年は組み合わせ上、GCSの決勝で再び徳島と愛媛がぶつかる可能性もある。IBLJ代表は昨年決勝に駒を進めることが出来なかっただけに、地元開催の今年こそは力を見せたいところ。来年で節目の20年目を迎える伝統あるリーグがGCSで存在感を示すためにも、まずはCSでの質の高い試合に期待したい。

2/2ページ

著者プロフィール

1984年生まれ、福島県出身。学習院大学在学中の2005年夏の甲子園で阪神園芸での整備員アルバイトを経験するなど、基本的には高校野球マニア。 筑波大学大学院体育研究科を修了後、2009年にデータスタジアム株式会社に入社し野球のアナリストとして活動を始めた。NHK-BSで放送されている「球辞苑」には2015年から出演している。2018年からは本所属を株式会社リクルートテクノロジーズ(現・株式会社リクルート)のデータ利活用の部署に移し、主にHRメディアでのデータ分析環境の整備や機械学習を用いたアプリケーション開発のPMOとして従事した。 2022年10月に独立し、現在は四国アイランドリーグplusのアナリティクスディレクターなどプロスポーツリーグ等でのHR領域のデータ活用推進を行っている。また、スポーツアナリティクスジャパン(SAJ)2022ではプロジェクトマネージャーを担うなど、スポーツをきっかけとした文化交流のカンファレンスやイベントの企画、運営にも携わっている。

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント