プロ野球2023シーズン終盤戦の12球団見どころ

「アレ」へ一直線、セ界に敵なしの岡田阪神 日本一への“不足分”を補って悪夢を払拭できるか

三和直樹

ついに優勝マジックを7とした阪神。他を寄せ付けない盤石の戦いぶりを続けている 【写真は共同】

 今年3月31日に開幕したプロ野球は、記録的猛暑の夏を越えていよいよ“勝負の9月”を迎える。セ・パ両リーグの首位球団に優勝マジックが点灯した今、残りの約20試合をどのように戦うべきか。そして注目ポイントはどこか。12球団の終盤戦の“見どころ”を整理しておきたい。最後は阪神だ。

※成績はすべて9月9日時点のもの

焦ることなく6月と8月に大型連勝

 2度、アクセルを踏み込んだ。1度目は5月。4月を終えた時点では貯金3(13勝10敗1分け)の2位だったが、5月11日から7連勝を飾って一気に2ケタ貯金に乗せた。さらに1試合を挟んだ後の同20日からは9連勝という快進撃。結果、5月は球団最多タイ記録となる月間19勝(5敗、勝率.792)をマークし、交流戦前までに貯金17で2位に6ゲーム差を付けた。

 2度目は8月だった。交流戦を7勝10敗1分けと負け越した後に一度は首位の座を明け渡したが、慌てることなく体勢を立て直して前半戦首位ターンを決める。そして8月3日から長期ロードもお構いなしに球団16年ぶりとなる破竹の10連勝をマーク。同19日からも6連勝を飾り、月間18勝(7敗、勝率.720)と敵なし状態で、2位以下を一気に突き放した。

 迎えた9月も7連勝スタートと3度目のアクセルを踏み、9月9日時点で76勝44敗4分けの貯金32。優勝マジックを一気に「7」にまで減らしている。

先発、リリーフともに盤石の投手陣

 この盤石の戦いを可能にしているのが、投手陣だ。先発陣では、村上頌樹(10勝5敗、防御率1.76)、大竹耕太郎(10勝2敗、防御率2.14)、伊藤将司(9勝5敗、防御率2.38)の“3本柱”が非常に充実している。

 特に村上だ。昨季まで1軍未勝利だった男が、優れた投球術と抜群の制球力を武器に白星街道を歩み、今季の先発19試合中12試合で7イニング以上を投げ、15試合が2失点以下という絶対的な安定感を誇っている。防御率1.76に加えて、四球数と三振数で求められる「K/BB」も12球団トップの8.73を誇る。最終的にどのような成績でシーズンを終えるのか、非常に楽しみだ。

 救援陣も盤石の働きを見せてきた。右の加治屋蓮(16ホールド、防御率2.34)、石井大智(16ホールド、防御率0.82)、ケラー(8ホールド、防御率1.71)、左の岩貞祐太(23ホールド、防御率2.68)、島本浩也(11ホールド、防御率1.82)、桐敷拓馬(10ホールド、防御率2.10)と文句なしの成績。WBC組の湯浅京己の長期離脱は大きな誤算だったが、代わりに抑え役を任された岩崎優がチーム最多の55試合に登板して12ホールド31セーブ、防御率1.23と抜群の安定感で守護神として働いている。

 ポストシーズンを含めた今後の戦いを考えると、まず湯浅がシーズン中に復帰できるのかどうか。復帰できた際、すぐに以前のようなピッチングを披露できるのか。救援陣全体、特に岩崎の疲労を取り除いた状態でCS、さらに日本シリーズに臨みたい。

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著者プロフィール

1979年1月1日生まれ。大阪府出身。学生時代からサッカー&近鉄ファン一筋。大学卒業後、スポーツ紙記者として、野球、サッカーを中心に、ラグビー、マラソンなど様々な競技を取材。野球専門誌『Baseball Times』の編集兼ライターを経て、現在はフリーランスとして、プロ野球、高校野球、サッカーなど幅広く執筆している。

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