角田裕毅は何ランク? 2023前半戦・F1ドライバー通信簿
ドライバ―ランキング2位のぺレスはBランク
セルジオ・ペレス(オラクル・レッドブル・レーシング)
選手権現在2位のドライバーにB評価は厳しすぎるかもしれないが、勝ちまくっているフェルスタッペンと比較すれば、こうせざるを得ない。ペレスのつまづきは、モナコの予選での大失敗から始まった。自らのミスで最下位に。そこからイギリスまで5戦連続のQ2落ちを喫した。序盤5戦は絶好調で、2回のポール・ポジション、レースでも優勝2位を2回ずつ獲得して、タイトル獲得を公言するほどだった。それが大得意のモナコでの失敗で自信を失い、負の連鎖に陥ったということだろう。
前半戦最後のベルギーは予選3番手、レースは2位表彰台と久々に安定した結果を出したが、首脳陣の見方はまだ懐疑的だ。
モナコの予選で大クラッシュに対し、クリスチャン・ホーナー代表からも苦言を呈されている。自信回復なるか 【Red Bull Content Pool】
カルロス・サインツ(スクーデリア・フェラーリ)
今季のサインツは、別人のように精彩を欠いている。予選こそルクレールに対して5勝7敗で、フロントロウ、2列目グリッドも何度も獲得している。しかしその速さが、レースではまったく反映されていない。
フェラーリマシンはタイヤへの負荷が高すぎる欠点を抱えているが、それにしてもサインツの失速ぶりは極端で、グリッド以上の順位でフィニッシュしたレースは12戦中2戦しかない。そして表彰台は、今のところ0回だ。チーム戦略に納得のいかないレースが何度か続き、モチベーションもかなり低下しているように見える。
フラストレーションのたまるレースが続いているが、苦境から抜け出せるかどうかもドライバーの能力として試される 【Ferrari】
ピエール・ガスリー(BWTアルピーヌF1チーム)
「こんなはずでは、なかった」。そんな思いとともに、ガスリーは前半戦を終えたことだろう。昨年末でレッドブルとの契約を解消し、念願の自動車メーカー系ワークス系チームについに移籍を果たした。ところが昨年は選手権4位と健闘したアルピーヌは、ライバルだったマクラーレンにほぼダブルスコアの大差をつけられ、暫定6位に低迷している。夏休み前にはオットマー・サフナウア代表など首脳陣の一斉更迭が突如行なわれ、チーム内の混乱はおさまらない。
ガスリー本人のドライビングに、特に大きなミスや非難すべき点はない。しかしチームメイトのオコンに比べると、コース上のパフォーマンスはかなり物足りない。
22年のアルファタウリではベルギーGP終了時点でランキング14位。今季は12位につけているが、本人は物足りなさを感じていそうだ 【Alpine】
周冠宇(アルファロメオF1チーム・キック)
昨年、中国人初のフル参戦ドライバーとして、F1デビューを果たした周。フェラーリ製パワーユニットの信頼性不足や自身のクラッシュなどでリタイアも多く、それでも3回の入賞は立派だった。シーズン後半には、チームメイトのボッタスに迫る速さも見せていた。
そして今季はここまで、9位が2回。リタイアも信頼性起因の1回にとどまり、安定性も増した。一方でF2時代からうまいドライバーではあったが、物足りなさを感じていた。たとえ結果につながらなくても、観る側の印象に残る走りを見せないと、来季以降の生き残りは難しいかもしれない。
5歳の頃に中国GPでアロンソを応援した経験をもち、今では彼と同じフィールドで勝負を繰り広げる 【Alfa Romeo】
バルテリ・ボッタス(アルファロメオF1チーム・キック)
メルセデスから移籍した初年度の昨年は、ベテランらしい巧さでコンスタントに入賞を重ねて選手権10位。チームの選手権6位に大きく貢献した。今季の開幕戦バーレーンGPも、12番グリッドからタイヤをしっかりもたせて8位に入ったのはさすがだった。しかしその後は、カナダの10位を除いて入賞からずっと遠ざかっている。
マシン戦闘力が相対的に低下しているのが一番の理由だが、チームはシーズン中のアップデートを意欲的に行なっている印象もあまりない。とはいえボッタス自身の走りにも、キレが見られない。選手権では周を上回る暫定15位だが、あえてチームメイトの下の順位にした。
絶対王者と言われたチームメイトから解放された環境で、本来の輝きを取り戻したいところだ 【Alfa Romeo】
ランクCにはデ・フリースら4名
ランス・ストロール(アストンマーティン・アラムコ・コグニザントF1チーム)
相手がアロンソとはいえ、同じマシンを駆るチームメイトに対してあまりに見劣りしすぎる。昨年まで一緒だった同じ世界チャンピオンのセバスチャン・ベッテルとは、2021年は予選・レースともにほぼ互角の結果を出していた。それでも、すでに引退を決めたベッテルに大きく離されてシーズンを終えている。そして今季は予選2勝10敗、レースは1勝11敗、獲得ポイントも3倍以上の大差をつけられ(149対47)、アロンソに完敗の状態だ。父ローレンスがチームオーナーとはいえ、シート喪失の危機も噂されている。
F1にデビューして7年目。母国カナダGPで入賞や表彰台はあるが、チームの実力を考えるともう少し実績がほしい 【Aston Martin F1】
ケビン・マグヌッセン(マネーグラム・ハースF1チーム)
決して遅いドライバーではない。レースでもしぶとく完走を果たす。そのあたりが評価されて昨年ハースに復帰し、チームメイトのミック・シューマッハーを予選でもレースでも圧倒した。しかし今季はヒュルケンベルグ相手に、かなり手こずっている。特に予選は4勝8敗。さらにヒュルケンベルグがトップ10内グリッドを7回獲得しているのに対して、マグヌッセンがQ3に進出できたのはマイアミの1回だけだ。これではレースでの大幅な順位アップも難しく、10位入賞2回に留まっている。
メルセデス、ホンダ、ルノー、フェラーリ製のPU搭載車に乗った経験があるだけに、現状打開が期待される 【Haas F1 Team】
ローガン・サージェント(ウィリアムズ・レーシング)
前半12戦にすべて出場したドライバーのなかで、1ポイントも獲得できていないのはサージェントだけだ。開幕前テストは3日間のみ、シーズン序盤の数戦はほぼ未経験のサーキットと、ルーキーにとって厳しい1年目であることは事実。それでも同じ新人のピアストリは、しっかり結果を出している。ウィリアムズマシンの戦闘力も、アルファタウリよりは間違いなく上であり、サーキットによってはアルファロメオやハースより優れている。経験も実績もしっかり積み上げているアルボンと比較するのは酷だが、それでもアルボンの11ポイントに対し0ポイント、予選も全敗なのは残念という他ない。
15年以来となるアメリカ人ドライバー。後半戦に控えるアメリカGP、ラスベガスGPで結果を出せるか 【Williams】
ニック・デ・フリース(元スクーデリア・アルファタウリ)
もうひとりの新人デ・フリースも、厳しい洗礼を受けた。開幕戦から一度も入賞できないまま、7月のイギリスGPを最後にF1から去ることに。確かに序盤は予選、レースともに角田裕毅にまったく太刀打ちできなかったが、ヨーロッパラウンドに入ってからは着実に差を縮めていた。わずか10戦での解雇は、さすがに早すぎた感は否めない。ただし交代したダニエル・リカルドは、8カ月間レースから遠ざかっていたブランクを感じさせない速さを見せつつある。そもそもデ・フリースは即戦力として抜擢された経緯があり、早期に結果を出すことを求められていた。その意味では、仕方のない更迭ではあった。
ハーバード・ビジネススクールのゲスト講師を務めるトト・ウォルフの影響か、今後は学業に専念するようだ 【Red Bull Content Pool】