“親日派”のオーストラリア人、名古屋D・デニスHCから見た日本代表「W杯は何が起こるかわからない」

永塚和志

オーストラリアを応援も日本との対戦は複雑

昨年のアジアカップのオーストラリア戦で中に切れ込む富永啓生 【REX/アフロ】

ーー8月29日にはオーストラリアと日本が対戦します。デニスHCにとっては少し複雑な心境もあるのではないでしょうか。

 そうですね。日本でBリーグのコーチとなって7年が経ちます。ここまで長くやっているので自分のチームだけじゃなくてリーグを通じて多くの選手たちと知り合いになって、彼らがどれほど努力して毎日励んできているかも見ています。

 ですから、間違いなく複雑な気持ちはありますし、理想を言えば、日本とオーストラリアの2チームが予選ラウンドを勝ち抜けてほしいなと思っています。大会ではオーストラリアを応援はしますが、日本との対戦の時だけはそれは例外となります。

ーーただやはり、両国の対戦ではオーストラリアが圧倒的に優勢だと見られています。

 みんなそうだと思っているでしょうね。ただオーストラリアは油断してはいけません。連続してターンオーバーを2つ、3つしてしまったり、3Pを2、3本、ポンポンと決められてしまうと、接戦となり、日本に自信を与えてしまうでしょう。それが今の日本の危険なところなのです。

 我々の名古屋も同様で、絶対にあきらめない。なぜなら我々のディフェンスは相手をいやがらせることができて、ターンオーバーを誘引して点差を一気に詰めることができる。そうしたことができると、チームの中には一気に自信が生まれます。日本にとってもワールドカップで戦う上で、そこが非常に重要になります。

今大会はより多くの国に勝つチャンスがある

新シーズンへ向けての準備に忙しいデニスHCだが、ワールドカップは待ち遠しいと言う 【スポーツナビ】

ーーバスケットボールはいまやグローバルなスポーツとなり、今回のワールドカップもより面白い勝負が見られそうですが、今回はどのような大会になると予想されますか。 

 何が起こるかわからないとはいえ、今回はアメリカが優勝するとは思えません。今は多くの国々がNBA選手を抱えていることもあって、アメリカが優勝候補の筆頭ではないと思っています。

 今回のワールドカップはこれまでの大会よりもより多くの国に勝つチャンスがあると思います。戦術的にも、どこのチームも相手に良さを出させないような手立てを考えてくるでしょうし、非常にエキサイティングなバスケットボールが見られそうで、待ちきれません。

ーーワールドカップ直後に開幕するBリーグも、今年は一段と盛り上がるでしょう。名古屋Dでは今年、どのようなシーズンにしたいと考えていますか。

 今年は、私が滋賀レイクスでも指導していた佐藤卓磨やブラジル代表のティム・ソアレス、そしてロバート・フランクスを加えました。

 そうした変更もあって今年はもっと機動力を持たせ、ペリメーターからのシュートももっとよく決めていきたいと考えています。そしてアップテンポで速いペースで戦いながら、平均で90点(2022-23はB1 2位の85.4点)を取る戦い方を目指していきます。

 もちろん、狙うのはリーグ優勝です。

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取材後記

 本文中にあるように日本のBリーグで指導歴も長く、この国のバスケットボールについてデニスHCの造詣の深さが話を聞いていてよくわかった。

 とりわけ自身が直接指導したことのある選手に対する思い入れは強いようで、栃木ブレックス(現・宇都宮ブレックス)でも一緒で、現在、名古屋Dで彼の下でプレーし、残念ながら昨日、ワールドカップ本戦メンバーから外れてしまった須田侑太郎の代表の動向も、強化試合などを見て気にかけていたようだ。

 10月からのBリーグシーズン開幕へ向けて自チームの指導に忙しいデニスHCだが、「練習が終われば急いでテレビの前に行ってワールドカップの試合をできるだけ多く見ようと思っています」と語っていた。彼のような経験豊富なコーチもわれわれ同様、この世界大会を純粋に楽しみにしている。

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著者プロフィール

茨城県生まれ、北海道育ち。英字紙「ジャパンタイムズ」元記者で、プロ野球やバスケットボール等を担当。現在はフリーランスライターとして活動。日本シリーズやWBC、バスケットボール世界選手権、NFL・スーパーボウルなどの取材経験がある

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