「夢のアリーナ」で売上が大幅アップ 琉球ゴールデンキングスが目論む未来像

永塚和志

アリーナ一帯をキングスの「街」にしていく

今夏のFIBAワールドカップは沖縄アリーナも開催地となり世界の強豪が集う 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

――8月下旬開催のFIBAワールドカップは沖縄も共催開催地となっており、沖縄アリーナには日本を含めた世界のトップチームが集結します。この機会を琉球にとってどのような機会にしたいとお考えですか?

 一つは沖縄の子どもたち、日本の子どもたちが、ワールドカップが日本で開催されるということを誇りに感じてほしいなと思っています。沖縄の子どもたちは実際、間近で試合を見ることが可能なのでぜひ来てほしいと思っています。やっぱり次の世代の子たちにどう影響するかっていうのは、われわれとしては大きいです。2002年にサッカーのワールドカップが日本で開催(韓国との共催)されてそのときの少年たちが夢を抱くことができたように、今回のバスケットボールのワールドカップでそういう機会になってほしいと思っています。

 もう一つは、国際大会があそこで行われるということは沖縄アリーナが注目されるきっかけになります。われわれはそれを実績として打ち出しながら、海外のチームを誘致するとかそういったことをやっていきたいなとも考えています。まずは中国とか台湾、フィリピンといったアジアのマーケットのチームとキングスの試合など、いろいろとやっていきたいなと思っています。ですが、いつかはヨーロッパのチームやNBA、Gリーグのチームなどとも沖縄アリーナでやって、世界と戦うキングスを見てもらうというのが夢です。

――沖縄県は観光立県ですが、これからはスポーツも観光資源の一つとなっていくかもしれませんね。

 おっしゃるとおりです。日本ハムさんが(今年開業した)エスコンフィールドですでに始めていますが、沖縄市さんと連動しながら沖縄アリーナで見学ツアーみたいなものはやりたいなと。ツアーでスポーツがどう運営されているかなどアリーナの裏側なども見ていただきながら、「実際にここで試合を見たいよね」と思ってもらえればいいなと思っています。

――他に先駆けて開業した沖縄アリーナは「夢のアリーナ」の先駆者的な立場ですが、今後、日本全国に新たなアリーナが続々と建設され、それぞれが魅力を打ち出してきます。バスケットボールが盛んでキングスという人気のあるチームがいるから安泰だと考えているのか、あるいは危機感をお持ちなのでしょうか?

 いやいや、もう、危機感しかないですね。群馬クレインサンダーズのオープンハウスアリーナ太田や佐賀バルーナーズのSAGAアリーナも本当にいいと思っていますし。なので、単純に1位を走っているという感覚は全然ないです。危機感しかないですよね。ただ、やっぱり他のところ以上のことをやっていかないといけないと思っているので、バスケットボールだけではなくて、それプラスアルファで楽しめる場所、見てもらえるところの提案ができるようにしたい。

 カープのある広島(Mazda Zoom-Zoom スタジアム広島)とか横浜DeNAベイスターズの横浜スタジアムとかは僕、すごくいいと思っていて、街とスタジアムが一体になっている。われわれもアリーナだけではなくて、沖縄アリーナの近くの沖縄市の中央にある「コザ商店街(キングス商店街)」といった近隣の街を、沖縄アリーナと一体化した楽しみ方がテーマかなと思っています。

――その沖縄アリーナ近隣一帯の街を作り上げていく上で、近隣の方々との協力のソフト面を強化していくのかの構想はどのようにお考えでしょうか?

 いま沖縄アリーナのすぐそばにホテルが建設中でまもなく開業予定となっていて、ハード面での環境も良くなっていくのですが、それ以上にコザの街が変わっていくことが大きい。コザの街へ足を運んで、たとえば「キングスの試合をもう一回、観戦しよう」とか思ってもらえるような街、場所を作っていくべきだと考えます。だからハードウェアじゃないですよね。ソフトだと思っています。

――コザゲート通りのあたりはにぎわいが最盛期から落ち着いてしまったなどと聞きます。そこをキングス中心に再び盛り上げていきたいといったところですね。

 はい。シャッターが下りてしまっていたような商店街が今、若い方々がお店を開いたりしてもう一回盛り上がり始めています。僕らも興行が終わったあとに行ったりもするんですけど、けっこうおいしいお店やおしゃれなお店ができあがっているので、徐々に変わっていくのかなと思います。

キングスを全国区のブランドに

昨シーズンのBリーグ初優勝で高めた認知度も生かしキングスブランドを広めていきたいと白木氏は言う 【写真:永塚和志】

――「集客がすべて」というポリシーがある一方で、今後のスポンサー収入の拡大に向けてはどのような展開を考えているのでしょうか?

 基本は沖縄県内の方々とか沖縄にゆかりのある企業さんに今はスポンサーとして入っていただいている感じなのですが、これからはもう少し、全国的なお客様にも入っていただきたいとも考えています。

 キングスは今年の1月、ファッションブランド・BEAMS SPORTSとコラボレーションプロジェクトを開始して、期間限定でポップアップショップをJR新宿駅構内のBEAMS NEWS内で展開をしました。今後はキングスの「違う使い方」をしながら、いろんな分野で同じような取り組みをしていきたいですね。

 日本でもニューヨーク・ヤンキースの帽子を被っていらっしゃる方はよくお見かけします。そういう感覚で、キングスというブランドが沖縄以外にも出ていくことがすごく重要かなと思っています。その意味では、優勝するかしないかで認知度は違ってくるので、2022-23シーズンで優勝ができたことは大きいです。

白木享(しらき・とおる)

1970年4月22日、愛知県生まれ。1998年に株式会社プロトコーポレーション入社し、2007年に株式会社プロトデータセンター(現プロトソリューション)代表取締役社長就任。2022年7月、沖縄バスケットボール株式会社代表取締役社長に就任。

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著者プロフィール

茨城県生まれ、北海道育ち。英字紙「ジャパンタイムズ」元記者で、プロ野球やバスケットボール等を担当。現在はフリーランスライターとして活動。日本シリーズやWBC、バスケットボール世界選手権、NFL・スーパーボウルなどの取材経験がある

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