町田のJ2首位独走を引っ張る外国人2トップ 真価は黒田監督が「日本人以上」と称えるチームへの献身

大島和人

チームメイトはどう見る?

長崎戦を終えたデュークは、オーストラリア代表に参加し、15日に北京でアルゼンチンと対戦する 【(C)J.LEAGUE】

 浦和レッズ、SC相模原を経て今季から町田に加わったDF藤原優大は言う。

「外国人とプレーすることが毎年ありますけど、(エリキとデュークは)もうダントツで守備するし走ります。『良いところと悪いところがあって、その良いところがスーパー』というのが外国人(アタッカー)に対する自分のイメージで、チームに守備で貢献できる外国人選手はなかなか見たことないです。元々そうなのか、それともこのチームの雰囲気がそうさせているか分からないですけど、どちらも要因になっていると思います。こうやって結果を出せるのは素直にスゴいです」

 もちろん二人は“守備だけ”で評価される選手ではない。デュークはここまで4得点とエリキに比べると数字は残せていないが、空中戦の勝率が圧倒的に高く、配球能力も高い。跳ぶ、当たるといった消耗度の高いプレーを90分間やり続けつつ直接的、間接的にゴールをアシストする場面が多い。エリキ、デュークは攻守両面でチームを支えていて、さらに言うと“数字に出ない”部分の貢献が大きい。

それでも本人たちは

エリキはピッチ内外で「気配り」を発揮する 【(C)J.LEAGUE】

 もっとも当人たちは至って謙虚だ。2トップの活躍について水を向けられたデュークは、記者にこう返してきた。

「平河(悠)が今は(U-22代表への参加で)いませんし、(池田)樹雷人も怪我をして出られていません。でも(藤原)優大、安井が代わってやっています。変わって出た選手がしっかりやってくれるのが町田の強みです。チャンピオンになるチームは11人だけでなく24人目、25人目、26人目まで貢献できるチームです」

 エリキもデュークを「センターフォワードとして素晴らしいポテンシャルを持った選手」と称えつつ、こう続けた。

「ただデュークだけではなく、我々のクラブには素晴らしい選手たちが揃っています。キーパーのポープ(ウィリアム)もそうですし、DFのマサ(奥山政幸)もそうですし、ヒジリ(翁長聖)もそうですし、ボランチのレオ(高江麗央)だったり、シモダサン(下田北斗)、ダイゴ(高橋大悟)、シュンタ(荒木駿太)だったり……。それ以外にも本当に素晴らしい仲間に恵まれて、一緒にプレーと練習ができて幸せに思っています」

エリキ、デュークの献身が生むもの

 二人揃って自分だけ、外国人FWだけが持ち上げられることをやんわり拒否するような言葉だった。「献身」「謙虚」「気配り」といったともすると“日本人的”な美徳を、彼らは持っている。もちろん彼らだけが素晴らしいのではなく、チームにそれを引き出す空気感があるのだろう。

 実績のある、結果を出している選手が率先してハードワーク、チームプレーを見せている――。それが町田好調の大きな理由だ。大物があれだけ奮闘する姿を見せられたら、他の選手も頑張らずにはいられないはずだ。突出した人材がいると、得てしてチームのバランスは崩れやすい。そしてどれだけ予算を使っても、能力の高いタレントを揃えても、噛み合わなければチームは低迷する。それはサッカーに限らぬチームスポーツの宿命だ。しかし今の町田には「自分が頑張るから周りも頑張る」「周りが頑張るから自分も頑張る」という理想的なサイクルが生まれている。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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