町田のJ2首位独走を引っ張る外国人2トップ 真価は黒田監督が「日本人以上」と称えるチームへの献身
デューク(右から2人目)とエリキ(右)が町田の攻守を引っ張っている 【(C)J.LEAGUE】
エリキとデュークは“超J2級”の大物
今季のFC町田ゼルビアは、強力な外国人FWを二人獲得していた。エリキは2019年途中から20年まで横浜F・マリノスに在籍していたブラジル人アタッカーだ。小柄だがスピードとスキルは圧倒的で、J1で41試合21得点と得点を量産し、19年のJ1制覇にも貢献している。ミッチェル・デュークは185センチの屈強なFWで、現役オーストラリア代表。昨年11月のワールドカップでは、チュニジアから決勝ゴールも決めている。
つまり昨季はJ2の15位だったクラブに「J1上位のエース級」と「Jリーグ唯一のW杯カタール大会得点者」が加入した。エリキとデュークは町田の“サンクチュアリ”として、特別扱いされるのだろう――。そう予想していたファンもいたに違いない。
長崎戦は合計4得点
特にエリキは2得点2アシストと4ゴール全てに絡んだ。30分の先制点は相手の中途半端なクリアに鋭く反応して奪い、右サイドからデュークに低いクロスを合わせる形。43分には、荒木駿太のクロスをヒールキックでわずかに擦らす“技あり”のシュートを決めた。
ブラジルのクラッキ(名手)が見せるアイデアとクオリティーを発揮した場面だった。エリキは言う。
「ああいうボールが来たとき、ワンタッチでシュートを狙うのは子供の頃からの習慣です。シュンタ(荒木駿太)からいいボールが来たので、あとは空いているコースに流し込むだけでした」
後半もエリキの動きは落ちなかった。58分の3点目はデュークの落としを収めて、ピンポイントのクロスをエリア内に送るアシスト。64分の4点目はチームメイトと前線から連動したプレスをかけて奪い切り、最後はゴールキーパーをかわして流し込んだ。エリキ個人の活躍でなく2トップ、そしてチーム全体が噛み合っていた。
デュークは2トップの関係性についてこう口にする。
「お互い補完し合った、とてもいい関係ですね。例えば私は空中戦が強いですけど、そのボールをしっかりエリキが走って取ってくれる。エリキがボール持ったときには、しっかり良いパスが出てくる。チームとしてしっかりやっているところが一番素晴らしい。彼も私もセルフィッシュ(利己的)な選手ではないので、そこがうまくかみ合っている」
守備で「日本人以上の貢献度」
長崎戦後の黒田剛監督はこう述べていた。
「彼らに与えられている役割は得点だけでなく、前からの規制を加えることと、チェイシングです。色々なプランがある中で、相手に制限を加えながらボールを奪うところまで彼らには要求しています。そこをしっかりと90分間抜くことなく、ハイプレスでもミドルプレスでも、チームの志向している形をやり続けてくれます。外国人は往々にして守備を一定のレベルでやれないということが聞かれますけど、彼らはチームのやるべきことを日本人以上の貢献度を持ってやってくれる」
2位・大分トリニータに勝ち点8差をつけている町田だが、躍進の理由を一言で言えば守備になる。得点数32はJ2の4位だが、11失点(1試合平均0.55失点)は最少。黒田監督は常々「1-0が一番いい勝ち方」と口にしていて、失点回避に重きを置く戦いをしている。
大量リードの時間帯にも
例えば64分のダメ押しゴールは、3-0とリードした中でエリキが安井拓也、荒木駿太とともに前線からプレスをかけたことで生まれた。
エリキは言う。
「マリノス時代もポステコグルー監督から前線でしっかりとプレスをかけて守備することを要求されていました。町田でも黒田監督からそれを言われているので、そこは狙っていました」
長崎のセンターバックとして二人を迎え撃った櫛引一紀は、こう述べている。
「途中4-0でしたけど、黒田監督も(2トップを)変えなかった。普通はあれだけ点差が開いたら、交代してもいいところですし、外国人選手ですけど、しっかりプレッシャーも来ていた」