ずっとサッカーとともに歩めるように──。SSガールズ立ち上げ秘話

川崎フロンターレ
チーム・協会

【©KAWASAKI FRONTALE】

4月から女子スクール生を対象とした15歳以下の女子チーム「川崎フロンターレSSガールズ」が始動した。スクール普及コーチの指導のもと、通常のスクールとは異なり、選手登録を行い公式戦にも出場し、チームとして活動するチームだ。そんなSSガールズが立ち上がった経緯や、コンセプトなどをスクール・普及部マネージャーの後藤静臣さんにお話を聞いた。

だからこそ『フロンターレでやりたいんだ』

立ち上げに関わった後藤静臣さん。プレゼンで熱い思いを伝えた 【©KAWASAKI FRONTALE】

──SSガールズを立ち上げた経緯を教えてください。

「もともとフロンターレのトップチームができた当初から子どもたちがプレーできる女子チームもという声がありました。ただ、当時はクラブとして経営していくためにトップチームの収益を出していくことが優先だったので実現することはできませんでした。そのなかで、今年は新しいアカデミー拠点となるAnker フロンタウン生田が完成し、これまで以上にサッカースクールやアカデミー含め、子どもたちの育成環境(グラウンド)が整ってきました。そこで女子サッカーの普及を目的に行っている小学生向けの女子スクールがあるので、ジュニアユースチームを立ち上げようということになりました。なんとか立ち上げたいと思い、社内の会議で何度もプレゼンをさせてもらいました、私だけでなく、コーチ達の思いもご理解していただきスタートを切ることができました」

──プレゼンではどのような思いを伝えたのでしょうか。

「当然、女子チームをフロンターレが立ち上げるとWEリーグへの参入するのか?と捉えてしまうと思いますが、SSガールズはあくまでも受け皿なんです。全国的に女子のジュニアユースチームは少ないのが現状。私たちの女子スクールを卒業して中学校では部活がないことから、サッカーができずに他のスポーツをやる子もいます。高校では部活やクラブチームがたくさんあるのですが、どうしても中学年代で受け入れ先がないんです。だからこそ、『フロンターレでやりたいんだ』ということを伝えました。それで理解をしてくれたのでよかったです」

──SSガールズは競技レベルの高い選手を集めて強化を図っていくチームではないと。

「そうですね。アカデミーとして投資をして強化するのではなく、女子サッカーの普及をメインにやっていきたいんです。当然、フロンターレのトップチームと同じような攻撃的なサッカーでテクニックを磨くというトレーニングはしていきますが、どうテクニックを積み上げていくかということに関しては育成とは違うやり方をしていかないといけないなと思っています」

──育成とは違うやり方というのは例えばどんなところでしょうか。

「能力のある選手を集めてチームを立ち上げてはいないので、ウォーミングアップからトレーニング1まではボールを自由に扱えるようなメニューをやっていこうと伝えていますが、中学生になるとサッカーコートも大きくなるので、攻撃と守備の局面はしっかり教えたいなと考えています。SSガールズの長沼洋明監督にも、いまのメンバーは9人なので、試合では11対9になるけどコンパクトにしっかり攻撃も守備も距離感を大事にして、切り替えも頑張ってやれば勝てるよと話しています。そういう意識をベースに植え付けて練習をしてくれています」

社会性のある人間を育てていく

練習は笑顔が溢れ、ゲーム形式ではそれぞれがゴールへと向かっていった 【© KAWASAKI FRONTALE】

──サッカーだけではなくフットサルの公式戦も出場するそうですね。

「今回、サッカーは神奈川県女子サッカーリーグ4部からのスタートなのでチーム数が少ないこともあり、なかなか公式戦の場が選手たちに与えることができないのが現状です。ですので、サッカーではないですがフットサルの公式戦で経験をさせてあげたいなと思っています」

──SSガールズではどんな指導方針を掲げているのでしょうか。

「マナーやルールを守る、チームの規律を守るといった社会性のある人間を育てていくことをベースにしています。そのうえでアカデミー全体でも一貫しているボールを自由に扱えるようにすること。あとはチーム戦術、アタッキングサード、ミドルゾーン、ディフェンシブゾーンといったゾーンでの考え方を学んでいってほしいです。『サッカーとはこういうものだよ』『フロンターレのサッカーはこういうものだよ』というのを3年間教えていきたいです。そして卒業後はそれぞれの舞台で頑張ってもらうというところに繋げていきたいです。また、サッカーをやることで、人と人の関わりが出てきます。例えばトップチームのホームゲームでボランティア活動をしたあと、試合観戦するということも考えています。そうしていくことで卒業後も違う形でフロンターレとの関わりが出てくるとも思っています」

──サッカーの楽しさを知ってもらえることが1番ですよね。

「そうですね。将来、大人になって母親になったときに子どもにサッカーを教えるとか。私達が継続してやっていくことで、そういった光景も見られるのではないかなと思っています」

──ちなみチーム名のSSガールズというのは、なんの略なんでしょうか。

「サッカースクールの略です。あんまりSSって付けなくてもいいかな?(笑)。でも、これは他のJクラブにも付いているところもありますよ(笑)」

──フロンターレとして、小学生向けの女子クラスも増設し今年からSSガールズが立ち上がりました。1つひとつ女子サッカーの普及が進んでいる印象があります。

「そうですね。もちろんスクールも男子の割合が多いですが、女子スクールはフロンターレができた当初からやっていこうと話していた構想でもありますので、これから女子のスクール生もどんどん増やしていきたいと思います」

憧れの選手たちに近付けるように

選手たちそれぞれの目標、憧れの選手に近付けるようにボールを蹴り続ける 【© KAWASAKI FRONTALE】

──SSガールズの選手たちにはどんな選手になってほしいと考えていますか?

「選手たちのなかには憧れている選手もいると思います。その選手たちに近付けるように目指してほしいですね。こういう選手になるために逆算してやれるような環境も作っていきたいです。また中学生は学業が大変だと思うので、サッカーの時間をどう作るかが1番大事なポイントになってくると思います。それを自分で考えて行動できるように成長していってほしいです」

──長沼監督を中心としたコーチングスタッフに期待したいところはどんなところでしょうか。

「試合に出る限りは勝っていこうという思いもありますが、1人ひとり特徴や目標も違うので、子どもに寄り添って目を配って、その子に合った指導をして育てていってほしい。そしてサッカーの技術を上げていってほしいなって思っています」

──最後に、立ち上げ初年度となる今シーズンへの意気込みを教えてください。

「選手9人がチームのために自分がどう輝いていけるかをピッチ上で表現しないといけないですし、ピッチ外でもオフザピッチとオンザピッチは繋がっているので、気付いて動けるように成長していってほしいなと思っています。試合には勝ち負けにこだわりながら戦い、3部に昇格できればと思っているので、そこを目指して頑張りたいです」

(取材・高澤真輝)
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著者プロフィール

神奈川県川崎市をホームタウンとし、1997年にJリーグ加盟を目指してプロ化。J1での年間2位3回、カップ戦での準優勝5回など、あと一歩のところでタイトルを逃し続けてきたことから「シルバーコレクター」と呼ばれることもあったが、クラブ創設21年目となる2017年に明治安田生命J1リーグ初優勝を果たすと、2023年までに7つのタイトルを獲得。ピッチ外でのホームタウン活動にも力を入れており、Jリーグ観戦者調査では10年連続(2010-2019)で地域貢献度No.1の評価を受けている。

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