特集:Jリーグ30周年~激動の時代を彩った偉大なチーム&プレイヤー

水沼貴史、福西崇史、槙野智章が厳選した「Jリーグ歴代最強チーム」 時代を超えて実現させたい夢のカードは──

吉田治良

水沼貴史氏が選ぶJ歴代最強チーム

1位:2020年の川崎フロンターレ(リーグ:優勝/リーグカップ:ベスト4/天皇杯:優勝)
2位:2019年の横浜F・マリノス(リーグ:優勝/リーグカップ:GS敗退/天皇杯:4回戦敗退)
3位:2006年の浦和レッズ(リーグ:優勝/リーグカップ:ベスト8/天皇杯:優勝)

草創期のJリーグを沸かせた水沼氏だが、ベスト2には近年の王者を選出した。なかでも三笘がブレイクした2020年の川崎には「どの時代に行っても強い」と太鼓判 【Photo by Koji Watanabe/Getty Images】

 2006年に悲願のJ1初制覇を果たした浦和レッズは、私が横浜F・マリノスの監督として実際に戦ったこともあって、強烈な印象が残っています。アウェイで敗れた試合(30節/0-1)は、埼玉スタジアムの雰囲気も含めて忘れがたいですが、やはりワシントン、(ロブソン・)ポンテ、長谷部(誠)、(田中マルクス)闘莉王と、真ん中に芯が通ったチームは強いなと実感させられました。

 04年、05年とあと一歩で頂点に手が届かなかったとはいえ、ポテンシャルは抜群でしたし、(ギド・)ブッフバルト体制3年目の集大成と言えるチームには、強い一体感も感じましたね。

 三都主(アレサンドロ)や鈴木啓太など、他にも魅力的なタレントがそろっていましたが、なかでも得点王(26ゴール)に輝いたワシントンは規格外。1人でフィニッシュまで持っていける力があったし、彼がボールを収め、それに呼応して周りが動き出す攻撃は迫力満点でした。

 19年のF・⁠マリノスは、川崎フロンターレの3連覇を阻止したという事実を高く評価したいですね。しかも、前年は一時残留争いに巻き込まれながら(最終順位は12位)、2年目の(アンジェ・)ポステコグルー監督のもと、アタッキング・フットボールを最後まで貫いて優勝した。したたかに勝ち点を積み上げていく鹿島アントラーズのようなチームとは、また違った強さと魅力を感じましたね。

 私は優勝が懸かった2位・FC東京との最終節を解説させてもらったんですが、戦前には得失点差で不利な状況にあったFC東京の逆転優勝を予想する声も結構ありました。しかし、そんなプレッシャーがかかる大一番でも、F・マリノスは攻撃的に振る舞い、結果的に3-0の快勝を収めて15年ぶりのリーグ制覇を成し遂げたんです。

 ポステコグルー監督が構築したハイプレス・ハイラインのサッカーは画期的でしたが、その戦術を支えていたのがセンターバックのチアゴ・マルティンス。高いディフェンスラインの背後を1人で守り切ってしまう彼のずば抜けたスピードがなければ、あの攻撃サッカーは成り立たなかったでしょう。

 ただ、そんなF・マリノスを上回るのが、翌20年に覇権を奪還した川崎Fです。前年に3連覇を逃しましたが、そのリバウンドメンタリティが物凄かった。

 J1史上最多の勝ち点83、4試合を残しての史上最速優勝といった記録が物語るように、文字通り他を圧倒したシーズンでした。従来のポゼッションスタイルをベースにしながら、この年はデュエルの部分にもかなりこだわり、チームとしてスケールアップを遂げた印象があります。

 両翼に三笘(薫)と家長(昭博)、センターフォワードにレアンドロ・ダミアンがいて、中盤には守田(英正)、大島(僚太)、田中碧、そして最終ラインには谷口(彰悟)や山根(視来)……。大怪我から復帰した(中村)憲剛をはじめ、小林悠や旗手(怜央)などがサブなんですから、それは優勝するだろうっていう強力なメンバーでしたね。

 リーグのベストイレブンには実に9人が選ばれましたが、個人的にMVPを選ぶなら、ルーキーの三笘でしょうか。コロナ禍による5人交代制も追い風に、当初は途中出場で鮮烈なインパクトを残し、最終的にはスタメンの座を掴み取りました。彼にとっては人生を変えたシーズンと言ってもいいでしょうね。

 たぶん20年の川崎Fは、どの時代に行っても強いですよ。今回は「1ステージ制に移行した05年以降のチーム」を条件に、この3チームを選びましたが、例えば「N-BOX」で話題を集めた01年のジュビロ磐田と対戦させたらどうなるのか、想像すると楽しいですよね。

水沼、槙野の両氏が最強チームに選んだ2020年の川崎(左)と、福西氏が推す2001年の磐田の基本布陣 【YOJI-GEN】

(企画・編集/YOJI-GEN)

槙野智章(まきの・ともあき)

1987年5月11日生まれ。広島県出身。2000年にサンフレッチェ広島のジュニアユースに入団し、06年にトップチーム昇格。CBのレギュラーに定着すると、10年にはJリーグベストイレブンに初選出される(15、16年にも受賞)。10-11シーズン途中からドイツのケルンでプレー。12年に帰国後は浦和レッズで10シーズンにわたって活躍し、17年のACL制覇など数々のタイトル獲得に貢献。対人守備の強さはもちろん攻撃力にも優れ、FKも得意とした。日本代表歴は38試合・4得点、18年ロシアW杯にも出場した。ヴィッセル神戸での22年シーズンを最後に現役引退後は、様々なメディアで活躍する。

福西崇史(ふくにし・たかし)

1976年9月1日生まれ、愛媛県出身。新居浜工を卒業後、95年にジュビロ磐田に加入。激しいプレーを身上にボランチの定位置を掴み、チームの黄金時代を支えるとともに、自身も4度(99年、2001年、02年、03年)のJリーグベストイレブンに輝いた。その後、FC東京、東京ヴェルディを経て09年1月に現役を引退。18年には東京都社会人サッカーリーグの南葛SCで現役復帰を果たし、同年11月から約1年間は同クラブの監督を務めた。日本代表としては02年日韓大会と08年ドイツ大会の2度のW杯に出場。通算成績は64試合・7得点。現在は主に解説者として活躍中だ。

水沼貴史(みずぬま・たかし)

1960年5月28日生まれ。埼玉県出身。中学校時代に全国大会で優勝し、浦和南では1年時に右ウイングのレギュラーとして日本一に貢献した。選手権は3年連続で出場を果たし、法政大進学後は総理大臣杯を2度制覇。79年には日本で開催されたワールドユースに出場し、メキシコ戦でチーム唯一の得点も決めている。83年に加入した日産自動車(現・横浜F・マリノス)では2年連続の3冠達成など黄金期を築く。日本代表歴は32試合・7得点。95年の引退後は横浜FMの監督などを務め、現在は主にサッカー解説者として活躍中だ。

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著者プロフィール

1967年、京都府生まれ。法政大学を卒業後、ファッション誌の編集者を経て、『サッカーダイジェスト』編集部へ。その後、94年創刊の『ワールドサッカーダイジェスト』の立ち上げメンバーとなり、2000年から約10年にわたって同誌の編集長を務める。『サッカーダイジェスト』、NBA専門誌『ダンクシュート』の編集長などを歴任し、17年に独立。現在はサッカーを中心にスポーツライター/編集者として活動中だ。

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