工藤公康が取り組む球界への恩返し「いろんなスポーツも楽しもう」
野球教室で子どもたちを指導する工藤氏。野球界の未来のためにどんな取り組みが必要なのだろうか 【写真提供:工藤事務所】
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「遊び」から学んだ体の使い方
工藤氏の代名詞である落差のあるカーブ。その原点とは? 【写真は共同】
この質問は、私がよく聞かれる質問の1つです。
実は私は、カーブを誰かから教わったという記憶はほとんどありません。父親に変化球を投げてみたいと言ったところ、変化球の握りと投げ方が書いてある本を渡され、その握りで書かれているように投げたら、カーブの軌道になったというところが始まりです。
見たことを一回で理解して自分のものにできるほど、器用な人間ではありません。そんな私が、どうしてカーブをすぐに投げることができたのか?
その理由は、当時の私たちの“遊び”にあったと思います。
私が子どものころ、近所の子たちと集まって、“メンコ”や“コマ回し”をよくしていました。このメンコ遊びとコマ回しですが、対戦相手に負けてしまうと、自分の持っているコマやメンコが相手に取られてしまう決まりがありました。家があまり裕福でなかった私は、コマやメンコはめったに買ってもらえなかったので、たとえ遊びであっても、1戦1戦が絶対に負けられない戦いだったのです。
そんな状況ということもあって、私はというと、どうすれば強くメンコを叩きつけることができるのか、どうすれば相手のメンコをひっくり返すことができるのか、どうすれば強くコマを回すことができるのか、子どもながらに研究し、考えてきました。
その結果、自然と手首の使い方や、コマを強く回すために必要な動きなどが自分の身体に刷り込まれていったのだと思います。当時はまったく意識もしていませんでしたし、理解もしていませんでした。今思えば、そういった遊びの中で養われた力を入れるタイミングや手首の使い方などが、カーブを投げる際の動きと非常にマッチしていたのではないかと思っています。