連載コラム「工藤公康の野球ファイル」

工藤公康が話題の「ピッチクロック」について語る 前夜に祈った千賀滉大のメジャー初勝利

工藤公康

物議を醸すピッチクロック

ピッチクロックに対して賛否両論あるが、工藤氏の考えとは? 【写真:Steph Chambers/Getty Images】

 さて、メジャーリーグといえば、今シーズンからピッチクロックが導入され、オープン戦から物議を醸しているようです。

 実は私自身も現役時代に、日本での「15秒ルール」に違反したことがあります(2009年8月18日、巨人対横浜にて)。しかもその当時、私がその「15秒ルール」の初の適用者であったと記憶しています。

  審判にタイムをかけられ、ボールカウントが加算されたときは「何で?」と思いましたが、そこからはキャッチャーからボールを受け取り、ロジンを触り、サイン交換から投げるまでの一連の流れのテンポを上げるように心掛けたことを覚えています。

 メジャーの場合は、走者がいるときにも適応され、思った以上に厳しく取られているようです。先日は、大谷選手も1死2塁の場面で、初球を投げる前に違反を取られ、1ボールとなっていました。

 投手にとっても、配球を組み立てる捕手にとっても、1ボールが自動追加される影響は大きいと私は思います。

 1ボール2ストライクからインコースを攻めようと考えていたが、1ボールが自動追加されてしまった。こうなると2ボール2ストライクになり、次に投球する球は勝負球にしなければならない。

 2ボール1ストライクから違反すれば、3ボール1ストライクとなり、次の投球はカウント球を選択する。

 ボールカウントが1球、自動追加されてしまうことで、組み立てが大きく変わってしまいます。ピッチクロックが適応されてしまい、ボールカウントが加算された場合には、配球の組み立てや、戦略の変更も当然起こることだと思います。そういった意味でも、投手や捕手の戦略や組み立て、配球という考え方も柔軟性が求められるようになるのではないでしょうか。

 私自身はというと、賛成・反対というものはなく、ルールで決められた以上は、まずはやってみて、対応していくことが大切だという考えです。

 私も、日本での「15秒ルール」を取られてからは、投球間隔のテンポを上げる練習を経験しました。ルーティンを変えなければいけない部分もあるかもしれません。その中で、早くそのルールに順応し、自分の中で新たにルーティンを確立することが、シーズンを通して戦っていくうえで、必要になるのではないかと思います。

工藤氏はメッツ・千賀滉大のメジャー初勝利を喜ぶ 【写真:Megan Briggs/Getty Images】

 そして、ホークスで共に戦ったメッツの千賀滉大投手がついにメジャーデビューを果たしました。 彼が先発で初登板をする前日、夜寝る前にお祈りをしてから寝ました。

 まず1勝できて良かったなと、ほっとしました。 9日(日本時間)の登板では2勝目も挙げて、本当に素晴らしい活躍だと思います。

 中4日での登板間隔や、日本と異なるマウンドやボール、ピッチクロックによる制約など、適応しなければいけない部分も多くあると思います。疲れが出てくると重心が上にいき、メカニックの崩れやリリースの乱れにもつながってしまいます。疲労回復のサイクルをうまく作って、このままシーズンを通して頑張ってもらいたいです。

(企画構成:スリーライト)

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著者プロフィール

1963年5月5日生まれ。愛知県出身。名古屋電気高校(現:愛知名電高校)から1981年、西武ライオンズからドラフト6位指名を受け、入団。西武黄金期を支え、福岡ダイエーホークス、読売ジャイアンツ、横浜ベイスターズに在籍。現役時代は14度のリーグ優勝、11度の日本一に貢献し、優勝請負人と呼ばれた。現役通算で224勝を挙げ、最優秀選手(MVP)2回、最優秀防御率4回、最高勝率4回など数多くのタイトルに輝き、正力松太郎賞は歴代最多に並ぶ5回受賞。2016年には野球殿堂入りを果たした。2011年に現役を引退後、2015年に福岡ソフトバンクホークスの監督に就任。7年で3度のリーグ優勝と5度の日本一に導いた。現在は野球評論家として活動しながら、筑波大学大学院博士課程に進学。スポーツ医学博士取得に向け研究や検診活動を行っている。

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