J2首位の町田が主力不在でも5連勝 苦戦しつつ終盤に試合を決めたゲームプランとメンタリティ

大島和人

終盤、リザーブの驚異的な得点力

沼田駿也(左)と荒木駿太(左から2人目)はリザーブ起用で大きな貢献を見せている 【(C)FCMZ】

 町田はここまで6試合で11得点を挙げているが、5点は75分以降で、そのうち4点は交代選手が決めたもののだ。特に荒木駿太は合計93分の出場で3得点と効率的にゴールを挙げている。いわき戦の決勝点に絡んだ沼田、荒木、黒川は、いずれも後半から投入された選手だった。

 荒木は4試合連続ゴールこそならなかったが、いわき戦も71分からピッチに入り、黒川の決勝点をお膳立てした。

「0-0だったら最後に絶対得点が入るからと監督に言われていました。今日もまたベンチのアツくん(黒川淳史)が結果を残してくれました」(荒木)

 黒田監督は黒川の起用についてこう説明する。

「トレーニングも頑張っていた選手ですが、どうしても交代枠やチーム事情でベンチ入りが難しい状況でした。今節に関してはデュークもおらず、この1週間は非常に高いモチベーションで取り組んでくれていました。1点を取りに行きたい展開の中で、黒川は非常にゴールを取る嗅覚のある選手です。エリキのスピードを外して、彼に賭けるという一つのチャレンジでしたが、こちらの意図をしっかりと汲み取って、得点に結びつけました」

「出場2分」だった黒川が決勝点

 黒川は水戸、大宮で攻撃の中心として活躍していた選手だが、開幕戦はベンチ外だった。ここまでの通算出場時間は「2試合・2分」で、いわき戦も投入は85分とプレー時間がかなり短かった。ただ、今の町田はそういう選手がモチベーションをしっかり持てている。

 黒川は言う。

「今日は0対0の苦しい展開で少し長い時間をもらえたので、ゴールに結びついて良かったです。(荒木)駿太が3試合連続で点を取っていましたけど、自分も『出れば取れる』という自信がありました。途中交代の選手が点を取ることは、強いチームになっていく証だと思います」

 ベンチから出る選手が結果を出せば、チームは活性化する。「主力とリザーブ」に隔たりがなく、一体感を保てているチームは強い。

 今季の通算成績が「3試合・7分・1得点」になった黒川は胸を張る。

「競争はありますけど、変なライバル心はなくて、誰が点を取っても素直に喜んでいます。全員が準備を怠らずに、1日1日を過ごしている結果が5連勝につながっているし、いい空気がチームの中で流れている。交代で入った選手が80分以降に点を取っていますけど、そこまでの80分間を戦ってくれる選手の頑張りがあってこその得点です」

 他の選手からも「チームの一体感」「チーム全員で同じ方向を向いてやれている」といったコメントが相次いでいた。

町田が手にした自信

5連勝でサポーターも手応えを得ているはずだ 【(C)J.LEAGUE】

 昭和のプロ野球が誇る名将・三原脩は「アマは和して勝つ。プロは勝って和す」という名言を残している。今季の町田は35名と登録数が多く、試合に絡めない選手もいる。しかしピッチに立っている仲間を信頼しつつ、自分も勝利に貢献できている感覚を持てれば、チームの不和は生まれない。

 相手より先に隙を作らない、バランスを崩さず好機を待つマインドは、言葉にするだけなら簡単だ。しかし、それを定着させるためにはプラスアルファが必要になる。言葉通りの結果が出れば、必然的に黒田監督の求心力は上がる。選手やサポーターも含めた“ファミリー”が、自らのスタイルに自信を得たーー。それは町田にとって5連勝という結果以上の収穫かもしれない。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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