工藤公康のWBC侍ジャパン戦評 ダルビッシュに感じる「人として大切なこと」
チームを支えるダルビッシュの人間性
真剣に野球に打ち込みながら、社会においても、人生においても視野を広く持ち、若い選手に関わるダルビッシュ投手。彼の発信やチームメイトに対する言動を見ていると、そういった明るさや楽しさ、その中での真剣さをうまく選手に伝えているようにも見えます。
ダルビッシュ投手のチームでの様々な配慮や気遣い、そういったマインドがあるからこそ、若い選手たちもチームで思い切りプレーができているのだと思います。
少し話が逸れてしまうかもしれませんが、私自身は幼少期から厳しい家庭環境で育ち、55歳になるまで、写真でさえも実の母親の顔を見たことがないという人生を歩んできました。
そういった環境で育った自分だからこそ、結婚をして、家族ができた時に「家族を守るんだ」「養っていくんだ」と、野球に打ち込んできました。根底は家族のためでしたが、それを成し遂げるために、常に野球を中心に考え、自分のペースに家族や子どもたちが合わせてくれていました。「もう少し家族や子どもたちともうまく関われたのでは?」と反省や後悔もあります。
まだ30代半ばの年齢で、野球を中心に置きながらも、家族に対する愛や感謝を示し、パフォーマンスを発揮するダルビッシュ投手。家族や周りの方々への感謝をはっきりと口にすることや、オープンなマインドで自分の意思を示すこと、若い選手の指針を示すことはなかなかできるものではないと思います。こういった部分というのは、野球界だけでなく、社会全体にも通ずるような、“変わっていかなければいけない”部分なのかもしれません。
私自身も、これからを担う若い選手や世代の方々に寄り添って、少しでも力になれるように頑張りたいと、最近のダルビッシュ投手を見ていて感じました。
(企画構成:スリーライト)