【対談】4.8 大一番に臨む拳四朗と吉野修一郎 世界4団体統一、“聖地”での世界挑戦に王手をかける

船橋真二郎

スーパースター候補を「ぶっ潰しに行く」(吉野)

2月7日の発表会見。吉野はスティーブンソンの写真に拳を向け、気合い十分の表情 【写真:船橋真二郎】

――では、次の試合に向けてです。拳四朗選手は世界4団体統一、吉野選手は世界挑戦に王手をかけるという意味でも重要な試合になりますよね。

拳四朗 吉野はほんまに重要やね。世界に行けるか、ここで決まるから。

吉野 うん。俺は重要。まあ、拳四朗も4団体統一するために重要だけど。

拳四朗 重要性の意味が違うっちゃ、違う。

――もしかしたらニューヨークとか、ラスベガスとか、ボクシングの聖地と言われるような場所で世界タイトルをかけて戦える権利を得る試合になるかもしれない。

吉野 はい。

拳四朗 すごいよな。今回は俺が先やんな?

吉野 そう。俺が後(日本時間9日)。

拳四朗 今回は俺がプレッシャーかけるよ(笑)。

吉野 俺、見れないんじゃねえかな。まあ、情報は入るか。

――有明の試合もESPN+で全米にライブ配信されるそうですから。

吉野 あ、じゃあ、見れるのかな。

拳四朗 (前回とは)逆の立場や。プレッシャーかけるよー(笑)。

吉野 寝れなくなるー(笑)。

――タイプは違いますけど、同じサウスポーが相手で。

拳四朗 しかも、どっちも逃げる系やろ? 足使う系?

吉野 ちょっと違う。L字(ガード)で、目でよけるみたいな。

――スティーブンソンは、足でさばく、かわすというより、反応して、ボディワークだったり、バックステップとかでよける。

吉野 そうですね。で、カウンターを狙ってきたり。けど、ぶっ潰しに行くよ。

拳四朗 楽しみやな。

――会見でも「心を折りに行く」と。ただ、直近のロブソン・コンセイソン(ブラジル)にしても、その前のオスカル・バルデス(メキシコ)にしても、なかなか当てられなくて、見ていて、逆に心が折れかけたところもあったと思うんですよね。

拳四朗 そんなに当たらないんや。

吉野 当たらない。めちゃくちゃ速いし、目がいいし、当てづらいのは間違いない。

――どっちの心が折れるか、心を折るか、という試合になるかもしれないですね。

吉野 そうですね。ただ、当たらないのは想定内ですから。格上ですし、オリンピックのメダルも持ってますし、2階級で世界チャンピオンになってるし。1発、2発じゃ、絶対に当たらないんですよ。でも、作戦もありますし、相手の嫌がることをして、ぶっ潰すイメージはありますね。

――拳四朗選手の相手のゴンサレスは足でさばくところもあるし、スピードもあります。

拳四朗 どう捕まえるかって感じですね。

吉野 疲れる(試合になる)かもしれないね。

拳四朗 でも、案外、普通に捕まえられると思うけどね。あとスタミナは僕のほうがあるから。そこは自信ありますね。

吉野 (岩田)翔吉の試合、ちょっと見てたんだけど、結構、わざと倒れるよね(バッティングをアピールして、しゃがみ込んだシーンがあった)。なんかあったら、時間稼ぎとかしてくるかもしれないね。

拳四朗 痛がったりとか、嫌らしいところはあるよね。経験というか、巧いのは巧いよな。でも、俺も作戦はあるし、普通に捕まえて、倒せると思う。

吉野 僕はもう拳四朗は問題ないと思ってるんで、心配は何もないです。

加藤トレーナーの作戦を遂行。「練習通りに勝つ」(拳四朗)

WBA、WBCのベルトを肩にかける拳四朗。年内の4団体統一を誓う 【写真は共同】

――作戦というところでは、拳四朗選手は加藤健太トレーナー、吉野選手は椎野大輝(しいの・ひろき)トレーナー、コンビを組むトレーナーの存在はどうですか。

拳四朗 僕はもう加藤さんを信頼しきってるんで。お任せしっきりです(笑)。

吉野 僕も椎野さんを信頼してますけど、一緒にやってきたことプラス、試合の中で感じたことを大事にしますね。

――以前、吉野選手は、試合の中で相手を観察して、このパンチが当たりそうとか、感じ取ると言っていましたね。

吉野 そうですね。で、そこから、自分がこう打ったら、相手がこうしてくるから、こうやって当てようとか。勝手に発想が出てきますね。

拳四朗 俺は相手がどう来ても対策がある感じかな。こうきたら、こうやし、こうしてきたら、こうやし、みたいなんが大体ある。ほんまに練習通りに勝つ。

――加藤トレーナーと一緒にやってきたことを出すと、拳四朗選手はいつも言いますよね。

拳四朗 はい。僕は練習でやってきたことしか出ないっていう感じです。(体に)しみ込ませて、しみ込ませて、考えるより勝手に出るっていうパターンですね。

吉野 俺は勝手に発想が出てくる。試合してて。自分がこうしたら、相手はこう動く、だから、こうするとか、そういうパターンが何個か。で、その状況、状況に応じて、じゃ、こうしよう、じゃ、こうしようみたいな。なんか将棋みたいな感じで。

拳四朗 そこは俺と違うな。それを練習でやっとくタイプ。

吉野 ああ。なんか出てくるんだよな。で、やっていくうちにパターンが増えていくんですよね。

――イメージが湧いてくるんですね。

吉野 はい。うまくいくパターンだけじゃなくて、こうしたら、かわされて、パンチをブロックされて、リターンを返されるとか、マイナスのパターンも。で、それに対して、こうしようとか、それをされたら、こうしてとか、そっちからも発想が出てきます。

拳四朗 はあー。それを試合中に考えるん?

吉野 なんか出てくるんだよな。勝手に。

――出てくるし、やればやるほど、広がっていくんですね。

吉野 そうですね。

拳四朗 俺はコーナーに帰って、答えを全部、加藤さんに出してもらうわ(笑)。

吉野 (笑)。でも、それも拳四朗に能力があるからですよね。練習通りにできる能力、その通りに相手をハメられる能力があるからだと思います。

――加藤トレーナーがよく、拳四朗選手の試合は(対策してきたことの)答え合わせと言いますが、拳四朗選手は練習してきた通りにゴンサレスをハメられるか。吉野選手はスティーブンソンに対して、さまざまなパターンの発想が出てきて、どう追いつめるのか。それぞれ楽しみですね。

2/3ページ

著者プロフィール

1973年生まれ。東京都出身。『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)、『ボクシング・マガジン』(ベースボールマガジン社=2022年7月休刊)など、ボクシングを取材し、執筆。文藝春秋Number第13回スポーツノンフィクション新人賞最終候補(2005年)。東日本ボクシング協会が選出する月間賞の選考委員も務める。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント