【対談】4.8 大一番に臨む拳四朗と吉野修一郎 世界4団体統一、“聖地”での世界挑戦に王手をかける

船橋真二郎

2人で120%の自信をつくり上げる

4月8日、拳四朗(左)は東京・有明アリーナで世界3団体王座統一戦、吉野はアメリカでWBCライト級挑戦者決定戦に臨む 【写真:船橋真二郎】

 昨年11月1日、さいたまスーパーアリーナで実現した“夢の共演”で、そろってKO勝ちを収め、同じ4月8日、WBAスーパー・WBC世界ライトフライ級統一王者の拳四朗は東京・有明アリーナでWBO王者のジョナサン・ゴンサレス(プエルトリコ)との世界3団体王座統一戦、WBC世界ライト級5位の吉野はアメリカで、同3位で元世界2階級制覇のスーパースター候補、シャクール・スティーブンソン(アメリカ)とのWBC世界ライト級挑戦者決定戦を引き寄せた。アマチュア時代から縁があった同級生2人の関係性に迫りつつ、具体的な戦略については伏せ、それぞれ日本とアメリカで臨む大一番に向けて語ってくれた。(2月23日取材/三迫ジム)

――2人が近くなったのは、大学3年のとき、一緒に日本代表チームとして「台北市カップ」に遠征したときからですか(2012年8月~9月)。同じチームで国別にポイントも争うんですよね(ともに銀メダルを獲得)。

吉野 そうですね。対抗で。

――チームメイトとして応援もするでしょうし。

拳四朗 ですね。まあ、最終日がいちばん楽しかったけどな。

吉野 ああ、みんなで飯食ったよね。(選手宿舎の)ホテルで。フィリピンとか、他の国の選手も集まって。それは印象に残ってるな。

拳四朗 懐かしいな。でも、そんなに2人でしゃべった感じじゃないよな。

吉野 そうね。他のチームメイト、みんなと一緒にいる感じだしね。まあ、拳四朗が三迫ジムに来てからだよね。いちばんは。

拳四朗 台北のときは、そのときしか会わないじゃないですか。で、吉野は関東(東京農業大)やったし、僕は関西(関西大)やし。

――そういう感じで久しぶりに会っても、同級生って、やっぱり違うものなんでしょうね。

吉野 いろいろ話せますよね。気持ち的にも楽だし。三迫ジムで唯一の同級生なんで。

拳四朗 確かに。気楽やな。

吉野 練習のときもそうですね。「今日はスパーリング、ダメだったわ」みたいなことも言うし。

拳四朗 ああ。大体、見てるから、「今日はアカンかったやん」とか、普通に。

吉野 気楽に言えるのがいいよね。

――発散できるじゃないけど、気持ちが紛れるというか。

吉野 そうですね。で、一緒に追い込めますよね。サンドバッグダッシュとか(※)。

※サンドバッグを一定時間、全力で打ち続け、心拍数を上げるインターバル練習。

拳四朗 サンドバッグダッシュはそうやな。あれはひとりではできひん。

吉野 拳四朗と一緒にやるときは、横で(手を叩くしぐさをして)「行け、行け、もっと上げろ」とか煽るんですよ。僕がやってるときは拳四朗が煽ってきて(笑)。

拳四朗 って、一緒にやったら、楽しいんですよ。盛り上げ、大事。部活感も出るしな(笑)。

吉野 そうね(笑)。盛り上げて、盛り上げて。楽しいけども、実際は追い込んで、ひとりでやる以上にきついことをやれるみたいな。

――きつい練習を楽しく。先ほどの話ですけど、2人で追い込むことで、より試合当日に100%勝つ自信のある自分をつくり上げられるところもあるんでしょうね。

吉野 そうですね。100%、120%まで持っていくには、どこまで練習で追い込めるか、どこまで行けるかが大事なんで。特に前回は試合の日が一緒だったから「やった?」「やるぞ」みたいに声をかけ合って、追い込むこともありました。

――練習の段階も重なるから、そういう面でも一緒の日に試合ができる相乗効果があったんですね。

拳四朗 練習もそうやけど、僕は減量も一緒っていうのが安心感ある(笑)。ひとりでするより、誰かいたほうが頑張れへん?

吉野 まあね。「体重どう?」とか、「調子どう?」とか言いながら(笑)。

拳四朗 そう、そう。「あと何kg?」とか。なんか言える相手がいるだけで、ちょっと楽。

――場所は違いますが、今回もほとんど日程が変わらないから。

吉野 そうですね。今回も一緒に追い込めるし、大きいですね。

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著者プロフィール

1973年生まれ。東京都出身。『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)、『ボクシング・マガジン』(ベースボールマガジン社=2022年7月休刊)など、ボクシングを取材し、執筆。文藝春秋Number第13回スポーツノンフィクション新人賞最終候補(2005年)。東日本ボクシング協会が選出する月間賞の選考委員も務める。

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