“大谷マニアの米国アナリスト”がWBCを展望 日本の先発陣は「全チームでベスト」

丹羽政善

村上のユニフォームを買うほどのファンに

バーランダーは「(レッドソックスの)ラファエル・デバースを彷彿とさせる」と形容するほど村上(ヤクルト)のファンになったという 【提供:ベン・バーランダー】

 さて、彼の注目は当然大谷なのだが、山本由伸(オリックス)、佐々木郎希(ロッテ)がメジャーリーガーらを相手にどんなピッチングを見せ、村上がメジャーの投手に対して、どんな打撃をするのか。日本のファン同様、彼もまた待ちきれないといった様子。山本については、「彼を見られると思うとワクワクする」と目を輝かせる。

「日本代表の顔ぶれを見たとき、みんな翔平やダルビッシュのことは知っていて、彼らが評価を高めていると考えるけど、他にも素晴らしい先発投手がいて、そうした一人が山本だから」

 その山本を含めた大谷、ダルビッシュ、佐々木で構成される先発陣を「全チームでベスト」と評価する。

「山本の過去2年の防御率は1.5くらい? (実際は1.54)。ありえない…。それだけすごいということ。彼がメジャーに来るのを待ちきれない。みんなそう思っているに違いない」

 佐々木は、昨春に完全試合を達成し、次の試合でも8回まで完全ピッチングを見せたが、それはまたたく間に海を渡り、バーランダーも番組で取りあげた。

 その佐々木については、こう話している。「もはや、アメリカのファンにも認知されているのではないか。彼が世界のベストを相手にどんなピッチングをするのか、みんな楽しみにしているだろう」

 バーランダーは、「あまり先のことは予想したくない」というものの、こんな想像をやめられないそうだ。

「日本はおそらく、準決勝と決勝が行われるアメリカまで来る。そうすれば間違いなく佐々木は世界に触れることになる。マイク・トラウトやノーラン・アレナド、フアン・ソト、ラファエル・デバース、マニー・マチャドらを相手にどんなピッチングをするのだろう」

 それはもちろん、勝敗を超え、多くの野球ファンを虜にするはず。結果、どうなるかといえば、バーランダーはこう予想した。

「我々は佐々木がいかにすごいのか、目の当たりにするだろう。なぜなら彼ら(トラウトら)が、どう攻略すべきか、途方にくれることになるから」

 トラウトらにとって佐々木のボールの軌道は見慣れないもの。ただ、それだけで抑えられるわけではない。結局は、佐々木の資質がそれを可能にする。

「それぐらい佐々木のポテンシャルは高いはずだ」

 村上については、「(レッドソックスの)ラファエル・デバースを彷彿とさせる」と印象を語った。

「左打ちの三塁手でパワーがある。スイングも似ている」

 バーランダーが神宮球場を訪れたのは、試合途中に雨が降り出した昨年8月24日のこと。 その試合で村上は1安打、4四球(2敬遠)。ほとんどバットを振らせてもらえなかったが、「ボールの見逃し方が良かった」と記憶しているそう。

「あれは本塁打記録を達成する前だったけど、その記録を達成したことに驚きはない」

 メジャーリーグではアーロン・ジャッジがア・リーグのシーズン最多本塁打記録を塗り替えたが、バーランダーは村上が日本人最多本塁打をマークしたときもそのニュースをSNSや番組で伝え、宮崎合宿でダルビッシュ有からライブBPで本塁打を放ったときには、「彼は本物。世界は間もなく彼を知ることになる。WBC、もしくはMLBに来たときに」とツイートした。

 神宮での試合の思い出を改めてこう振り返っている。

「彼の名前は知っていたけど、彼のユニホームを買うほどのファンになった」

アナリストの勝ち上がり予想は

バーランダーは日本のプールB・1位通過を確信している 【Photo by Koji Watanabe - SAMURAI JAPAN/SAMURAI JAPAN via Getty Images】

 さて、最後に彼の予想を聞いたが、日本については「プールBでは、頭一つ抜け出ている」と1位通過を疑わなかった。

 では、台湾で行われるプールA(オランダ、キューバ、イタリア、台湾、パナマ)からどこが勝ち上がってくるのか。

「日本と対戦するのはオランダかキューバだと予想する」

 オランダにはザンダー・ボガーツらメジャーのオールスタークラスもいて、「好選手が少なくない」という。キューバに関しても「ルイス・ロバートやヨエニス・セスペデスらがいて、戦力は悪くない」とのこと。ただいずれも、「日本ほど層が厚いとはいえない」とキッパリ。続けてこう言い切った。

「これ以上、栗山監督にはプレッシャーを掛けたくないが、準決勝へ駒を進める可能性が一番高いのは日本だ!」

 一方の米国ラウンド。ここはアナリスト泣かせ。

「米国も1次ラウンド突破は問題ないだろう」

 米国はメキシコ、カナダ、コロンビア、イギリスと同組だが、2位以内の条件は問題なくクリアできるはず。「でも、そこからがタフな戦いになる。なぜならプールDは強豪揃いだから」。

 プールDには、優勝する力のあるドミニカ共和国、ベネズエラ、プエルトリコの3カ国が入った。同組のイスラエルとニカラグアは不運だが、強豪3カ国のうち、1カ国が1次ラウンドで姿を消す。

 では、どう予想するのか?

「もし現時点で予想するなら、プールDを勝ち上がるのはベネズエラとドミニカ共和国ではないか。米国は1次ラウンドを突破後、いずれかのチームに(準々決勝で)勝たなければならない」

 プールCを勝ち上がったもう1カ国に加え、4チームで準決勝の2枠を争うことになるが、「それは米国なのかベネズエラなのかドミニカ共和国なのか、もう分からない」とバーランダーは苦笑する。

 準々決勝以降は一発勝負。プエルトリコが勝ち上がってきても侮れず、日本はマイアミに到着後、その行方を見届けることになる。

 さて、冒頭でも触れたが、バーランダーはWBCの期間中、「Flippin’Bats」で日々、WBCのハイライトなどを伝えていく予定とのこと。東京での1次ラウンド、準々決勝のニュースも詳しく扱っていくそうだ。こちらにも注目したい。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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