本多雄一に聞くWBC 周東や牧原の"ジョーカー"に期待
ミスをしたときに、正面から向き合うことが大切
2013年のWBCに出場。今大会では当時の自分の役割に近い周東や牧原の活躍に期待すると話してくれた 【Getty Images】
大谷翔平くんやダルビッシュ有くんがすごく目立っていますけど、やはり自分は(ソフトバンク)ホークスのコーチなので、(甲斐)拓也、近藤(健介)は気になりますし、その中でも当時の自分と同じような役割を期待されている周東(佑京)や牧原(大成)には活躍してもらいたいです。
――周東選手や牧原選手は侍ジャパンの「ジョーカー」ですね。
試合の行方を左右するような『ここ一番』の場面があると思います。間違いなく緊張すると思いますが、周東に関してはプレミア12の経験があります。それでもド緊張はするでしょう。WBCに出場するのは光栄である反面、選手はもの凄い恐怖心とも闘うわけです。トイレで吐き気がしたり、眠れない夜があったり、色んなシチュエーションで自分自身とも闘わないといけない。自分も経験させてもらったので分かります。それに立ち向かう強さは、今の侍ジャパンの選手たちも持っているはずです。また、何が起きるか分からないのが大舞台です。タイミングや運という要素だって少なからずあります。だけど、勝負事の運を引き寄せるにもしっかりした準備が大事になると思います。
――準備を大切にする姿勢は、現役当時から変わらぬ本多コーチらしさですね。昨年出版された『選ばれる人になるための習慣』の中でも綴られていましたが、自著を通して伝えたかったことは?
もちろん準備も大切ですが、感謝の気持ちを持つことも忘れてはならないと思います。よく恩返しと言いますが、それは言葉で伝えるだけではなく行動で示すこと。感謝の気持ちが自分の行動に結びつくと思うのです。両親をはじめ支えてくれたり応援してくれたりする方々への感謝の気持ちが自分自身を顧みるきっかけになることもあります。
――また、三森大貴選手の涙のお話も印象的でした。クールな彼の意外な一面を知りました。(※三森選手が1軍の試合の守備で、内野安打を許した試合後の出来事。)
僕自身も経験がありますが、失敗やミスをしてしまったときは自分を偽らずに、なぜ失敗したのか正面から向き合うことが大切です。彼もそういう気持ちがあったから、今、若くしてホークスの二塁手のレギュラーに最も近い位置まで成長できたのだと思います。
――本多コーチは昨年まで一軍内野守備走塁コーチでしたが、今季は二軍の同職を担当されています。どのような違いを感じていますか?
経験の浅い若手選手がほとんどなので、『伝える力』が試されますね。プロ野球の一軍と二軍では、技術やメンタルの強さはもとより、そもそも選手たちの経験値が違います。なんで理解できないのか、ではなくて経験のないことを前提にして彼らの目線に合わせて説明などをしてあげることで、若い選手というのは劇的に変化していきます。また、十人十色でそれぞれに特徴があり、長所や短所もバラバラです。だから僕は常にメモをとります。選手のちょっとした動きから感じた特徴、伝えたいこと、もしくは表情から読み取れる性格など些細な事までメモしています。最終的には人間対人間ですから。選手の良さを引き出してあげて、選手のために全うするのが僕らコーチの仕事です。
――若手選手は一軍主力に比べれば、成長や変化も早いのでは?
キャンプインして数週間でそれは感じました。毎日毎日、選手たちを観察しているのでちょっとした変化でも自然と分かるものです。僕はまだ30代ですが、若い選手たちは自分の子供のような存在です(笑)。毎日何かを得て成長してほしい。彼ら1人1人にとって何が大切なのか考えることで、自分自身も『伝える力』を勉強させてもらっています。