40歳の引退表明から、新種目で28年ロス五輪出場を狙う “NFLに一番近い日本人”木下典明が振り返るファルコンズ挑戦

永塚和志

「NFLへの道」を逃したワンプレー

2007年は「可能性」のある挑戦だった 【写真:永塚和志】

 悔やむ場面がある。2007年のプレシーズン第3戦のシンシナティ・ベンガルズ戦の第4クォーター。木下は相手のキックオフを押し戻すリターナーの役割でフィールドに立った。このときベンガルズの選手たちの間にできた穴に、刹那の判断で突進するが、芝に足をとられてつまずいてしまい、タックルされてしまったのだ。うまくいっていればもっと大きくボールを前に進め、あるいはタッチダウンの可能性もあったかもしれない。はたして日本人初のNFLロスター入りはならなかったが、「あそこで結果を残していたらそのまま残れた可能性もあったかな」と木下は回顧する。

「ぼくのNFLへの道は、そこの一発やったんじゃないかなって自分自身では思ってるんです」

 こうして、木下は2年にわたってNFLを体感した。英語や日本にはない激しいチーム内競争などもあったが、彼に残る思いにネガティブなところはない。

「自分よりもレベルの高い人間しかいない環境にずっと身を置いていることがすごく、楽しかったです」

フラッグフットボールの普及に尽力

 大阪府豊中市出身の木下は、以前から母校である大阪産業大学付属高校でコーチを務めているが、他方で、2016年から仲間とJapan American Football Dreamという一般社団法人を立ち上げ、全国の子どもたちにフラッグフットボールを教えるなど、アメフトの普及活動に従事している。

 木下以降も日本人NFL選手は誕生していないが、日本のアメフトがアメリカに勝つという大きな目的を叶えるためには、底辺を広げることが肝要だと考えているからだ。

 ヘルメットとパッドを身につけることはもうないものの、木下がフィールドを完全に離れたわけではない。昨夏、米アラバマ州・バーミンガム市で開催されワールドゲームズ(オリンピックで採用されていない競技で行われる国際総合大会)では、フラッグフットボールが初めて採用されているが、NFLの後押しもあり、2028年ロサンゼルスオリンピックにおいても同競技が入ってくる可能性がある。

選手としての出場を狙うロス五輪

木下典明の挑戦は今後も続く 【写真:永塚和志】

 2028年には45歳となっている木下だが、競技が採用となれば選手としての出場を狙っている。

 日本でのアメフトの認知度は低くマイナー競技の域を出ないが、ほかの多くのそういった競技と同様、オリンピックという世界最大のスポーツの祭典で採用され、認知が広がることの意義は大きい。木下も「だからこそ挑戦しようかなと思った」と言う。

 もっとも、アメフトが11対11で行われるのに対し、フラッグフットボールは5対5で行われ、ルールなど、他にも多くの違いがあり、いわば似て非なるものだ。木下も「まだフラッグがわかっていない」と、これからこの競技を勉強しながらオリンピックという大舞台を目指していくつもりだ。

「アメリカンフットボールはもう十分やったというのはありますが、これからは人に伝えたり、教えたりというところがアメリカンフットボールでの第二の人生だと思っています。また、自分は体が動くと思っているので、なにか新しいことにチャレンジということで、フラッグフットボールでオリンピックを目指そうかなということになったんです」

 フラッグフットボールがオリンピックで採用されれば、ほかにもアメフト選手が転向してくるかもしれない。木下は、そういった選手たちのためにも道筋を作っておきたいという考えも持っている。

 引退表明をしたときのSNSでも記しているが、木下にとってアメフトは「自分の人生」だ。一線は退いたが、これからもこの競技の普及と人気向上のために忙しい日々が続きそうだ。

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著者プロフィール

茨城県生まれ、北海道育ち。英字紙「ジャパンタイムズ」元記者で、プロ野球やバスケットボール等を担当。現在はフリーランスライターとして活動。日本シリーズやWBC、バスケットボール世界選手権、NFL・スーパーボウルなどの取材経験がある

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