12球団の“熱烈”識者が語る!昨シーズンと新シーズン

千賀の抜けた「穴」はどうする? ホークスのベテラン記者がエースの期待をかける男

Timely!編集部

育成から這い上がった藤井皓哉の大活躍

誰もが驚いた、開幕直前まで育成選手だった藤井皓哉の大活躍 【写真:共同通信社】

菊地 2022シーズンのなかで、特に印象深い試合やターニングポイントになったと感じた試合はありますか?

田尻 2022シーズンは途中一度もBクラスに転落しなかったと思うんですけど、それは開幕8連勝(新人監督としてのプロ野球記録)して開幕ダッシュに成功したことが大きなポイントだと思うんですよね。
 開幕戦では新外国人選手のガルビス選手が逆転満塁ホームランを打って勝ったんですけど、あの勝利がなかったら開幕8連勝なんて勢いがつくことがなかったと思うんですよね。
 特に相手が新庄(剛志)監督が就任した日本ハムファイターズで、新庄監督からも色んな言葉の攻撃を受けていたと言いますか、ソフトバンク側を取材していても動揺していたというまではないにしても、少なからず色んな心理的影響は受けている雰囲気を僕は感じたんですよね。「ここで負けたら世間から何を言われるか分からないぞ......」くらいの。
 ただでさえ開幕戦は緊張するんですけど、プラスアルファの緊張感も持って臨んだ開幕戦で0-1の展開がじりじりじりじりと続いて、「これはマズい......」と思っていたなかで、おそらくそういった雰囲気に全く無縁だった新外国人のガルビス選手が打ってくれたんですよね。

菊地 なるほどなるほど。

田尻 結果的にガルビス選手は奮わないシーズンにはなりましたけど、あの一発だけでも十分価値ある働きをしてくれたかなと思っています。ちょっと甘いかもしれませんけど。
 逆に残念なターニングポイントを振り返ると、9月にシーズン最長の11連戦があったんですよね。ここをどう乗り切るかというのがシーズンの山場だったと思うんですけど、順調に白星を積み重ねていたんです。

菊地 はいはい。

田尻 そして乗り込んだ京セラドームでのオリックス3連戦。そのときの状況では、ソフトバンクが1つ勝てばかなり優勝に近づくだろうというような感じだったんですけど、そこで見事にやられまして.......
 初戦は山本由伸投手に完封され、2戦目は宮城投手に5回まで無得点に抑えられて、そのあとはオリックスの鉄壁リレーですよね、宇田川(優希)、山崎颯一郎が出てきて、その試合も1点も取れずに0−2で負けたんです。
 何としても負けられない第3戦、0−4とリードされたんですけど、一旦は5−4と試合をひっくり返したんです。もうこれで1勝さえすればソフトバンクが随分有利だぞと思いながら見ていたのですが、ところがところが、9回にモイネロ投手が追いつかれてしまい、延長でサヨナラ負けですよ。
 あの3連敗を後々振り返れば、本当に痛すぎる3連敗になっちゃいましたよね。

菊地 終盤戦のここぞの場面で勝ちきれなかったことが、最終的に2位になったことに繋がってしまった感じですよね。

田尻 そうですね。オリックス戦の負け越しでリーグ優勝を逃してしまっていますし、振り返ったら京セラドームが2022シーズンのソフトバンクは鬼門になっていまして、3勝10敗だったんですよね。
 タラレバを言うのは禁物なんでしょうけど、一つ勝っていれば、せめて引き分けに持ち込んでいればなぁ.....と、今思い出しても悔やまれますね。

菊地 そんな2022シーズンの投打のMVPを選ぶとすると誰になりますか?

田尻 ピッチャーは、さきほど菊地さんもお名前を出された藤井投手ですね。本当にフル回転してくれましたし、1年前の今頃(編集部注:対談が行われたのは12月19日)を思えば独立リーグから入ってきた背番号3桁のピッチャーで、支配下登録されたのも開幕の直前でしたからね。そこから敗戦処理のような役割から、あそこまで(55試合 5勝1敗3セーブ 防御率1.12)這い上がってきたわけですからね。

菊地 衝撃的でしたよね。層の厚い投手陣のなかでのあの活躍は。

田尻 特にフォークボールが武器なんですけど、ちょっとスライダー気味に落ちていくのが特徴なんですよね。真っ直ぐもどんどんどんどん力強くなっていって150キロ中盤くらいをコンスタントに投げられましたから。
 キャンプで見たときは正直そんなにインパクトを受けなかったんです。それが試合で投げ始めてからですよね。オープン戦の頃には「いつ支配下にあげるんだろう?」ってみんなでザワザワするくらい、抜きん出ていましたね。

菊地 野手の方のMVPはいかがでしょうか?

田尻 1人に絞るのが難しくて、今宮(健太)選手か牧原大成選手のどっちかかなぁ、という感じなんですよね。今宮選手はリーグ4位の打率.296。3割には惜しくも届きませんでしたけど自己最高打率を残しましたし、選手会長としてもチームを引っ張りましたしね。
 牧原選手は、シーズン前から藤本監督がずっと「打線のキーマンだ」と推していましたから、その期待以上の活躍を見せてくれたのが牧原選手だったのかなと思います。

菊地 牧原選手はポジションも色んなところを守ってくれて、それも大きかったですよね。

田尻 そうなんですよ。内野も外野も守りますし、打順もあらゆる打順を打ちましたから。彼も育成から這い上がった誇りを胸にプレーをしていますし、年齢が30歳になったと思うんですけど、まだまだ楽しみですよね。スピードもまだまだ落ちていませんし。

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