千賀の抜けた「穴」はどうする? ホークスのベテラン記者がエースの期待をかける男
どうする?どうなる? 千賀の抜けた穴と右の長距離砲
あまりにも大きい、7年連続二桁勝利の千賀滉大が抜けた穴 【写真:共同通信社】
田尻 そうですね。近藤選手はバッティングのコンタクト能力の高さもそうですし選球眼がものすごくいいですよね。ホークスにあまりいないタイプかなと思うんです。ホークスの若い選手はどちらかというと好球必打で、早い仕掛けから打ち損じなく一発で仕留めるということを目指している選手が多いように思います。ですので近藤選手のような相手ピッチャーを苦しめるような打撃をしてくれるバッターは頼もしいですよね。
菊地 なるほどなるほど。
田尻 嶺井選手も、どうしても甲斐拓也選手に依存する部分がホークスはかなり高かったので、甲斐選手への刺激にもなりますし、海野(隆司)選手、渡邉陸選手という若いキャッチャーにとっては、また1人お手本が入ってきたという部分では、キャッチャーの戦力層を厚くしたいという補強ポイントと合致したのかなと思います。
菊地 あとは何といっても千賀(滉大)投手がメジャーリーグに移籍してしまったというのが、非常に大きな穴になるんじゃないかなと思うんですけど、2023シーズンの投手陣は誰が中心になっていくと思いますか?
田尻 7年連続二桁勝利してきた投手が抜けるというのは本当に痛いと思うんですけど、次にチームの柱、エースになっていくとなると、まだ千賀投手と同じくらいの年齢のピッチャーはいますから、そのなかでも特に東浜(巨)投手ですね。2022年シーズンは自身5年ぶりの二桁勝利もしていますし、まだまだ上積みも見込めるんじゃないかなと思っています。
あとは石川(柊太)投手も実績の部分は申し分ないですから、東浜投手、石川投手がエースの座を争いながら、昨シーズン経験を積んだ大関投手、板東投手という次の世代の投手がローテーションに入ってくるんじゃないかなと思います。
あとは投手のMVPに選んだ藤井投手が先発に転向するんじゃないかという話もあるんですよ。藤井投手が先発でどういったピッチングを見せてくれるのかというも楽しみですよね。
菊地 和田(毅)投手もまだまだ健在ですしね。
田尻 いやぁ、本当にすごいですよね。色んな方に訊いても、今でも練習量が若手と変わらないかそれ以上するらしいんですよ。2022シーズンは41歳で自己最速の149キロを出しましたしね。本人は「なんであと1キロいかなかったのかな」って、150キロ出したかったらしいんですよ。
菊地 (笑)。
田尻 今年の2月で42歳になりますけど、この年齢で本気で150キロを目指して、この年明けもものすごい練習量で自分を追い込んだと思いますよ。
菊地 そういうベテランの選手がいるなかで、田尻さんといえば(ファームのある)筑後の方にも精力的に足を運ばれていますけども、ブレイクして欲しいなという活きの良い若手選手がいたらご紹介いただけますか。
田尻 正木智也選手ですね。
菊地 おぉ、昨年慶応大から入団した。
田尻 右の長距離砲として期待されて入団してきて、昨年ルーキーでホームランも本3打ったんですけども、1年目は選手層の厚さもあってなかなか1軍に定着するところまではいかなかったんですけども、シーズンが終わったところで自身のバッティングを見直したらしいんですよね。
それまでは力任せにバットを振っていくようなスタイルだったらしいんですけど、そうじゃなくてヘッドをきかせて、ヘッドの重さをもっと利用しながらボールを飛ばすスタイルに、フェニックスリーグの終盤あたりから取り組みはじめたらしくて。
秋のキャンプもその意識の中で練習をしていたんですけど、明らかにシーズン中と比べて打球の質が違ったんです。軽く振っているように見えるんですけど、ボールがすごく飛んでいくんです。
ホークスは主力打者がみんな左なんですけど、新加入の近藤選手も左なんですよね。藤本監督も(右左で)ジグザグの打線を理想としていると就任当初からされていますから、正木選手がレギュラーを掴み取るようなことがあれば、ホークスの打線は相当面白くなるなと思います。
(編集部注|この対談後に右打ちのアストゥディーヨ、ホーキンス選手を獲得)
菊地 右の長距離打者が出てきてほしいけどなかなか......という状況が続いていますもんね。
田尻 リチャード選手という、2022シーズンにウエスタンリーグ記録の29本のホームランを打った、ものすごい右の大砲がいるんですけどね。3年連続でウエスタンリーグのホームラン王になったんですけど、それはどれだけ1軍に定着できていないのかという証しもであるんですよね。
もちろんリチャード選手も「今年こそ!」という思いももちろん強いですし、そこに正木選手という新たなロマン砲が誕生したわけですから、なんとか若い楽しみな選手が台頭してくれると2023シーズンは面白くなるなと思いますけどね。
開幕戦で実現!? 沖縄尚学バッテリー
田尻さんが開幕投手と「ポスト千賀」に推す東浜巨 【写真:共同通信社】
田尻 それはもう1位で。
菊地 そりゃそうですよね(笑)。
田尻 2年連続でリーグ優勝も日本一も逃してたのは2012年、2013年以来なんですね。リーグ2位だったとしても日本一になったというシーズンもありましたから。ほぼ丸10年間、2年続けて頂点に立てなかったということがなかったんです。その分、近藤選手を初めとした大型補強をしているんですけども、このオフはなんか雰囲気が違いましたもんね。「絶対に頂点を捕りに行くんだ! そのために補強をするんだ!」という、ここ数年見たことがないくらいの思いの強さ、気合いを球団からも感じましたから。
だからもう、僕も「1位」以外は言えないかな(笑)。
菊地 やっぱり警戒するチームはオリックスバファローズになってきますか?
田尻 そうですね。やっぱり手強いと思います。ピッチャーも若いですし、2022シーズンの終盤に出てきたリリーフ陣を打つのは本当に難しいと思います。吉田正尚選手は移籍してしまいましたけど、森友哉選手も入ってきましたし、リリーフ陣が良いチームがある程度上位に行くのが現代プロ野球だと思っていますので、オリックスは手強いと思います。
菊地 「このピッチャーが5回くらいから投げてくるのか!?」みたいな恐ろしさというかクオリティの高さがありますよね。
そもそも若いピッチャーの球速がどんどん上がっていくチームと言えばソフトバンクだったのが、最近はオリックスが一歩抜けた感じがしますよね。
田尻 ファームで体作りからしっかり(取り組んで)育成していますし、1軍でもあんまり無理な連投もさせないような、しっかりリスクマネジメントみたいなことも首脳陣がしているんじゃないかなと、選手起用を見ていて感じますしね。
菊地 最後になるんですけども、2023シーズンの開幕投手を勝手に指名できるとしたらどのピッチャーを指名したいでしょうか?
田尻 さきほどもちょっと名前を出しましたけど東浜投手ですね。千賀投手がいなくなっても「俺がいるんだぞ!」という思いもあると思うんですけど、東浜投手はかなり優しい顔をしているんですけど、実はなかなかの根性の持ち主というか負けず嫌いですしね。すごく粋に感じるタイプなんですよね。そういうピッチャーには開幕投手とか責任ある立場を与えると、さらに燃えるといいますか。そういう意味では東浜投手がまた一つ大きな結果を、2023シーズン残してくれるんじゃないかなと期待しています。
菊地 もしかしたら嶺井捕手が受けて、(開幕戦で)沖縄尚学の先輩後輩バッテリーもあるかもしれないですよね。
田尻 そうですよね。先輩後輩バッテリーが見られるのか、でも甲斐選手も黙っちゃいないだろうし、春のキャンプが待ち遠しいですよね。どんな雰囲気になるんだろうと思って。取りあえず宮崎の宿は丸一ヶ月抑えていますから。
菊地 さすがですね(笑)。
田尻 毎年恒例のことではあるんですけど、今年はここ数年以上の楽しみなキャンプになりそうだなと思っています。