連載:元WBC戦士は語る―侍ジャパン優勝への提言―

WBC優勝メンバーの里崎智也と谷繁元信が提言 侍ジャパン王座奪回への「最強布陣」はこれだ!

前田恵
 世界野球の頂点を決めるWBC本戦を前に、スポーツナビ野球チャンネルで、谷繁元信さん(元中日監督ほか)と里崎智也さん(元ロッテ)の対談が実現した。共に、日本が世界一に輝いた、記念すべき第1回大会の捕手。「侍ジャパン優勝への提言」のタイトルにふさわしい面々だ。対談の前編は、理想のメンバーを中心に、侍ジャパンが優勝するためのポイントなどについて語り合った。

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僕にとってのビッグサプライズは佐々木朗希(里崎)

里崎智也さんにとって佐々木朗希の選出がなぜサプライズだったのか? 【写真は共同】

 まずは2023年、初の顔合わせとなった2人。年末年始をどう過ごしていたか、お互い近況を報告し合い、ほのぼのムードで対談が始まった。

 収録が行われたのは、ちょうど第1次メンバーの12人が発表されたあと。谷繁さんも里崎さんも、このメンバーについては「ほぼ予想通り」(谷繁)、「順当です」(里崎)と、想定の範囲内だった様子だ。

 今回のメンバーの目玉は、なんといってもMLBに所属する選手が続々加わっていること。第1次メンバー発表で、すでに大谷翔平(エンゼルス)、ダルビッシュ有(パドレス)、鈴木誠也(カブス)の参加が明らかになっている。また、オリックスからレッドソックスに移籍したばかりの吉田正尚、母親が日本人のメジャーリーガー、ラース・ヌートバー(カージナルス)のメンバー入りも決まり、ファンにとっては、実に喜ばしいニュースである。

 ただ、里崎さんは「僕にとってのビッグサプライズは佐々木朗希(ロッテ)」と言う。佐々木朗希の能力とは別のところで、里崎さんが驚いたその理由が明かされる。

 とはいえ、佐々木朗希が選出されなければ、侍ジャパンに「ロッテの選手がゼロ」という由々しき事態になっていたところだった。

 まだ記憶に新しい、2020東京五輪。侍ジャパンに、ロッテの選手は1人も選ばれなかった。「稲葉さんに“(東京)オリンピックも全チームから選びましょう”と言いたかった」と里崎さん。それに対し、「でも06年のWBCは、ロッテの選手が結構多かったじゃない?」と反論(?)する谷繁さん。確かに06年はメンバー30人中、8人がロッテの選手だった。「しかも全員、(打診に対して)“行きます”って答えちゃったから」と笑う里崎さんに、「だからまあ、そういう(少ない)ときもあるよ」と谷繁さん。

 06年といえば、その前年(05年)、ロッテは34年ぶりのリーグ優勝と日本一に輝いている。対談内では語られなかったが、里崎さんのYouTubeチャンネル『Satozaki Channel』によれば、“里崎指数”(得失点差をもとにチーム力を表した数字)における2000年以降の最強チームは05年のロッテだそう。とすれば、「30人中8人」の数字にも納得できるだろう。

話題は各ポジションのベストメンバーへ

セカンドはメンバーに選出された牧秀悟で2人とも意見は一致したが、ファーストも含めて、バックアップメンバーで頭を悩ませた 【写真は共同】

 次に話題になったのは、2人と同ポジションの捕手である。対談収録時点で選出が決まっていたのは、ソフトバンクの甲斐拓也1人だった。2人目は守備の中村悠平(ヤクルト)か、攻撃の森友哉(オリックス)か。そこで谷繁さん、里崎さんの意見は一致したが、果たして侍ジャパン・栗山監督と侍ジャパンOB2人の捕手起用論は一致するか。

 そして2人の話題は、内野手へと移る。

 まずは内野の要・ショートに誰を固定するか。ここは源田壮亮(西武)で、2人の意見がピタリと重なった。次は、源田のバックアップである。これまで不動とも思われていた侍ジャパンのショート・坂本勇人(巨人)は今大会、選ばれるのか。坂本を選ばないとすれば、誰を選ぶのか。フレッシュな名前も挙がり、楽しみが増す。

 激戦区はセカンド。すでに牧秀悟(DeNA)は侍メンバーに選ばれており、正セカンドは牧で決まりだろう、という2人。こちらもバックアップが問題だ。打撃重視か、守備重視か。あるいは一塁兼任か。ここで少し、2人のやり取りを聞いてみよう。

里崎「セカンド問題、難しそうですね」
谷繁「難しいよ。セカンドとファーストに誰を入れるか、(栗山監督も)すごく悩んでいるところだと思うんだよね」
里崎「しかも、誰を入れても正解ですもんね」
谷繁「そう! そうなのよ」
里崎「不正解がないですもんね」
谷繁「だから、最終的には栗山さんがどういう野球をしていくのか次第で、選手が変わってくると俺は思う」

 誰を入れても正解。逆に、これほど難しい選択はないだろう。ちなみに、2人の「好きなセカンド」は守備に圧倒的安心感を誇り、17年の第4回WBC準決勝のアメリカ戦で同点のソロホームランを放った、あの選手だった。

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著者プロフィール

1963年、兵庫県神戸市生まれ。上智大学在学中の85、86年、川崎球場でグラウンドガールを務める。卒業後、ベースボール・マガジン社で野球誌編集記者。91年シーズン限りで退社し、フリーライターに。野球、サッカーなど各種スポーツのほか、旅行、教育、犬関係も執筆。著書に『母たちのプロ野球』(中央公論新社)、『野球酒場』(ベースボール・マガジン社)ほか。編集協力に野村克也著『野村克也からの手紙』(ベースボール・マガジン社)ほか。豪州プロ野球リーグABLの取材歴は20年を超え、昨季よりABL公認でABL Japan公式サイト(http://abl-japan.com)を運営中。

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