連載:元WBC戦士は語る―侍ジャパン優勝への提言―

岩隈久志は「侍投手陣は世界レベル」と断言 悲願の優勝へ不可欠なのは選手たちの順応力

小西亮(Full-Count)

2009年のWBCで先発としてチームに貢献し、MLBでも実績を残した岩隈久志が挙げる侍ジャパン優勝のカギとは? 【写真:アフロスポーツ】

 国際大会は決して一筋縄ではいかない。環境の違いや短期決戦の難しさ、極度の重圧…。過去にもさまざまなドラマが生まれてきた。いよいよ3月に開幕する野球世界一決定戦「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」の第5回大会でも、日本代表「侍ジャパン」の選手たちは厳しい戦いを乗り越えていかなければいけない。

 求められるのは順応力。2009年の第2回大会で2連覇に貢献した岩隈久志氏は、国際舞台に順応してみせたひとり。韓国との決勝をはじめ、大会を通して抜群の安定感を誇って「影のMVP」と称賛された。メジャーも知る元右腕は、日本の投手力を「自分の投球さえできれば、そんなに打たれることはない」と断言。自らの経験を踏まえ、優勝へのカギを語った。

変化の大きいWBC球「有効に使って武器に」

侍ジャパンメンバー入りが決まったロッテ・佐々木朗希。WBC球の感触を確かめながら準備を進めている 【写真は共同】

 WBCに臨む投手たちがまず乗り越えなければいけないのが、ボールの違い。NPBで使用している公式球に比べてわずかに大きく、縫い目が高いため変化球の曲がりが大きくなると言われている。一方で滑りやすいため扱いに苦慮するケースも少なくない。実際に2022年11月に行われた豪州との強化試合では、佐々木朗希投手(ロッテ)が何度もマウンドで首を傾げる場面があった。

 指先の繊細なズレが、大きな違いを生む投球。「それぞれの感覚の問題になってくるので、早めに慣れていく必要はあると思います」。経験者である岩隈氏も、オフの段階からWBC球の感触を確かめていたという。「僕はあまりNPB球との違いを感じなかったですかね」と飄々と振り返る裏には、“今までの自分”に固執しなかった柔軟性もあった。

「いつも日本のプロ野球でやる時と同じボールは投げられないと思ってやっていました。普段のボールを追い求めるというよりは、このボール(WBC球)が持っている特性を生かしてやるしかない。やっぱり変化球の曲がり幅が大きかったので、それを有効に使って武器にしようと。ボールの性能を早めに自分のものにできたのは大きかったですね」

 とはいえ、まったく苦にしなかったわけではない。「やっぱりブルペンで投げるのと、打者相手に投げるのではまた違うので」。打撃投手や実戦形式の中で、自らが描くイメージと、実際の相手の反応を微調整。「やっていきながら、なんとなく自分のものにしていく感じでした」。手探りだった14年前を思い出す。

 大会では計4登板(3先発)で20イニングを投げ、1勝1敗、防御率1.35。ボールの違いを上手く活用したゆえの結果でもあった。それに加えて「キャッチャーの城島さんと話し合いながらできたのもよかった」。バッテリー間で、微妙な感覚をすり合わせていくことは不可欠。「良さを引き出してもらうこともある。自分の中で、ひとつ安心感を作っておくというのは投手にとっては特に大事だと思います」と力を込める。

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著者プロフィール

1984年、福岡県出身。法大卒業後、中日新聞・中日スポーツでは、主に中日ドラゴンズやアマチュア野球などを担当。その後、LINE NEWSで編集者を務め、独自記事も制作。現在はFull-Count編集部に所属。同メディアはMLBやNPBから侍ジャパン、アマ野球、少年野球、女子野球まで幅広く野球の魅力を伝える野球専門のニュース&コラムサイト

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