巨人識者が語る“ショート坂本問題”の見解は? 浅野は当然、さらに期待したい野手は「背番号55」
控えめなオフを過ごした巨人だが、狙うはもちろん優勝だ 【写真:共同通信社】
第4回目となる今回は読売ジャイアンツ編。ブログ『プロ野球死亡遊戯』でもおなじみ、ライター・デザイナーの中溝康隆さんとライター菊地高弘さんの対談をお届けします。
2022年は「70点」、期待したい新キャプテン岡本和真
新シーズンはキャプテンとしてリーダーシップも期待される岡本和真 【写真:共同通信社】
中溝 シーズンは結構散々な出来だったんですけど、ドラフト会議で雰囲気が一変しましたので元気ですね。これだけの目玉選手(浅野翔吾/高松商)を引き当てるというのは本当に久々なので、シーズン中は何があったのかな? という感じですね。
菊地 なるほどなるほど(笑)。もう忘れたと。
中溝 原(辰徳)監督も浅野君を引き当ててからテンションが爆上がりですから、ファンとしてもそこに乗っかっていきたいなと思っています。
菊地 まずは2022年シーズンから振り返っていきたいと思いますが、68勝72敗3分、チーム防御率が3.69、チーム打率が.242、共にリーグワーストで5年ぶりのBクラスに沈んでしまったシーズンでした。
中溝 そうですね。2022年は夏場過ぎから試合を観るのがちょっとしんどかったですね。すごく印象に残っているのが、8月28日だったと思うんですけど、原監督が試合後に「もう一回2月1日からやり直したい」ってコメントをしたことがあって。いつもなんだかんだ強気な原監督が、ほぼ敗北宣言に近いことを言ってしまって、ファンとしてもしんどい終盤戦でしたね。
菊地 8月28日の段階で言われてしまうと「この半年は何だったんだ!」ということになりますからね。
中溝 その時点で最下位と5ゲーム差とかになってしまったんですよ。正直Aクラスも厳しくなるかなという感じもあったので、そこからの目的の見えない戦いというのが巨人にしては珍しいことなので、ある意味レアなシーズンだったとは感じましたよね。
菊地 そういうなかで、2022シーズンの巨人に100点満点で点数をつけるとした何点をつけますか?
中溝 そうですねぇ、でも70点ですかね。
菊地 結構高いですね。
中溝 確かに惨敗はしたんですけど、でも巨人にしては珍しく若い選手をたくさん使ったんですよね。堀田(賢慎)投手、戸田(懐生)投手、赤星(優志)投手とか、1シーズンでプロ初勝利が8人というプロ野球最多記録というのもあったり、クローザーにドラフト1位の大勢投手がバチッとはまったりとか、惨敗の(シーズンの)中にも光はあったのかなという感じでした。
嬉しい誤算としては、一塁手としてはもちろん、4番打者としても活躍してくれた、中田翔選手の華麗な復活もありました。(前年シーズンの)獲得の経緯に賛否はあったんですけど、2022年はチーム内で「若手にイジられる中田さん」みたいな部分もあって、この一年で全然立場が変わったなというのは感じましたね。
菊地 正直、移籍してきた年はちょっと「触れていいのかな......」という感じの存在でしたもんね。
中溝 坂本(勇人)選手と亀井(義行)選手くらいでしたよね、中田選手と普通に接しているように見えたのは。何となくみんな遠慮がちだったので、ファンとしても「果たして中田選手を使って良いのだろうか......」という雰囲気は正直ありましたよね。
菊地 点数が70点ということで、マイナスの30点分はどのあたりにあったのでしょうか?
中溝 まず4番を打っていた岡本(和真)選手ですね。ホームラン30本以上はクリアしてくれたんですけど、不調に陥るとスランプが長くなったりとか、ファンはどうしてもヤクルトの村上宗隆選手と比較してしまうというのもあって、数字面はもちろん、村上選手みたいに前面で引っ張ってくれるリーダーみたいなものを岡本選手に求めたんです。でも性格的にそこまで声を出して引っ張るタイプでもなく、その辺がちょっと歯がゆい感じもしたんですよね。
シーズン終了後に岡本選手が新キャプテンに決定しましたので、おそらくベンチにも、何だかの肩書きを与えることによって意識改革をしてほしいという思惑もあったんじゃないかなと思っています。
菊地 岡本選手には悪いんですが、「隣の芝生」というか「隣の村上」というか、そこがめちゃくちゃ青く見えるシーズンでしたよね。
中溝 数字的にはこれで文句を言ったらバチが当たるというくらい打っているんです。だから現役時代の原辰徳にちょっと近いのが岡本選手なのかなという気がしますよね。原監督も、数字自体は申し分ないのに三冠王のバース、落合(博満)とかの数字と比較されて「物足りない」って言われていましたけど、それがそのまま今の岡本選手の評価と同じですよね。
だからこそ、新シーズンでは村上選手にホームラン、打点の二冠でさらに争っていくくらいの選手になってほしいし、期待したいですね。
貢献度はチーム1! 投のMVPは文句なく大勢
開幕からクローザーとして大活躍しブルペンを救った大勢 【写真:共同通信社】
中溝 シーズン終盤だったんですけど、9月13日のヤクルト戦ですね。村上選手が55号を打ったんですけど、試合は9-7で巨人が打ち勝ったんです。この試合の下位打線が6番ポランコ選手、7番ウォーカー選手、8番大城(卓三)選手だったんです。
2022年の巨人って「守備はともかく一発で打ち勝つ野球をしよう!」というところから始まったはずなのに、レフトにウォーカー選手、ライトにポランコ選手の二人を置くと不安だねということで、途中で重信(慎之介)選手を使ったりとか、シーズン途中で若干原采配がブレたことがあったんです。それがシーズン最終盤、残り10試合くらいになってから、さきほどの迫力満点の下位打線がようやくできたんです。だからファンとしてはめちゃくちゃ盛り上がった試合だったんです。
ただ、いかんせん残り試合が少ない。ここまで形になるのに時間がかかったな、ということを同時に思いましたね。
菊地 もう少し早くこれを見せてほしかったですね。
中溝 20本塁打以上が5人いたので、一発を前面に出す野球をすればいいのに、ウォーカー選手とポランコ選手をレフトで併用したりとか、ベンチワークに途中で若干のブレが出てきて「序盤に我慢して起用してきたのは何だったのか?」というのもあって、原監督に珍しく若干の迷いというか、これを言ったら怒られるかもしれませんが、若干の加齢、歳を感じてしまったのもありますね。
菊地 (笑)。
中溝 原監督っていろいろ言われるんですけど「なんだかんだ結果を残しているでしょ?」ということで成立していたので、なんだかんだ言われながら結果も残せないと、やっぱりファンはざわつきますよね。
菊地 そんな苦しいシーズンだったわけですけども、中溝さんが選ぶ投打のMVPは誰になりますでしょうか?
中溝 野手は丸(佳浩)選手ですね。143試合に出て打率.272、ホームラン27本打っていますし、丸選手がセンターにいてくれたことによって、ウォーカー選手とポランコ選手を両翼に置いても、なんとか成立したというのは感じますよね。仮に丸選手が巨人にいなかったと考えると、本当に外野陣はヤバかったと思いますよね。もう巨人で4シーズンやっていますけど、改めて良い選手が巨人に来てくれたなと思っています。
ピッチャーはドラフト1位の大勢投手ですね。実際にバックネット裏で観ると、あのストレートの伸びですよね。ストレートだけで球場がざわつくような、こういう日本人ピッチャーは巨人では久々だなと感じましたよね。
菊地 新人王も獲得しましたし、巨人からの新人王も久々でしたよね。
中溝 ドラフト直後は、ファンのなかでも「このピッチャーちょっとよくわかんないな.....」という雰囲気だったんですけど、オープン戦からペナントレースの開幕戦を観ていると、「もしかしたら本当にすごいピッチャーが巨人に来たんじゃないか!?」って思って、中川(皓太)投手、デラロサ投手、ビエイラ投手とブルペン陣が崩壊するなかで、唯一年間通して投げてくれたのが大勢投手でしたし、なんとかチームが戦える形にしてくれたのは大勢投手のお陰かなと感じますよね。貢献度はチーム1じゃないですかね。
菊地 私もドラフト関連の取材をすることが多いのでアマチュア時代から知っていましたけど、ここまでやれるのは全然予想ができなかったですね。大学時代は怪我もありましたし、今みたいなヒールアップで投げていませんでした。プロに入って何が起こったんだ!? という感じです。
中溝 桑田真澄コーチが後ろで使おうと決めたという話が報じられていましたけど、もしも先発で使っていたらどうなっていたのかなと思うと、野球選手の野球人生って本当に紙一重なんだなと感じますよね。
菊地 原監督はドラフト直後に「沢村賞を獲ってほしい」的なコメントをされていましたしね。