巨人識者が語る“ショート坂本問題”の見解は? 浅野は当然、さらに期待したい野手は「背番号55」
鍵を握る「ショート坂本」、期待したい背番号55
中溝氏は「坂本選手が年間を通してショートをちゃんと守れるのか?」が巨人の鍵だと語る 【写真:共同通信社】
中溝 2022年は控えの選手層がすごく薄くてですね、例えば守備に不安があるウォーカー選手、ポランコ選手を下げると、代わりで出てくる守備固めが重信選手であったり若林(晃弘)選手だったりで、打つ方では打率2割ちょっと、ホームラン0本みたいな、一気に打線の厚みがなくなってしまう状況だったんです。そこでどうするかと思ったら、長野(久義)選手、松田(宣浩)選手の獲得があったので、そこら辺はピンポイントで弱点を補強できたのかなと思いますね。
菊地 このオフは森友哉選手をはじめFA線戦が活況でしたけども、僕は「巨人は全然いかないんだなぁ」と思ってしまったんですが、そのあたりはどうでしたか?
中溝 一昔前までの「FAと言えば巨人」という時代が完全に終わったのかなというのは感じますね。森選手に関してはすごく良い選手だと思うんですけど、巨人は今年、キャッチャーの大城選手がホームランを13本打っているんですね。ですので、来てくれたら嬉しいですけど、補強ポイントとしては......というくらいの感じだったと思うんです。
近藤健介選手は補強ポイントではあると思うんですけど一切報道が出ませんでしたよね。その辺は巨人ファンとしては謙虚にですね、昔の「GIANTS AS NO.1」時代は完全に終わったなと感じています。
菊地 そんななかで、2023年のキーマンを1人挙げるとしたら誰になりますでしょうか?
中溝 ここはやっぱり坂本選手じゃないですかね? 結局、坂本選手が年間を通してショートをちゃんと守れるのか? これができるかできないかによって、チームをどう作っていくかがまったく変わってしまうので、一時期の「キャッチャー阿部慎之助」と同じくらいの影響力があるのかなと思っています。
昨シーズンは若い中山(礼都)選手を起用したりとかもあったんですけど、原監督も2023年はまだショートは坂本選手で取りあえずは行くんじゃないのかなと。
2022年はちょっと色々とありましたし、ピーク時よりも力は落ちているかもしれませんけど、それでも打率は2割7分から8分、本塁打も15本前後くらいは期待できますし、それでも今のプロ野球界では十分に「打てるショート」なので、坂本選手が年間を通してずっとスタメンで出られること、というのが2023年の巨人が勝てるかどうかという、結構大きなウェイトをしめるのかなと思います。
菊地 新シーズンではキャプテンも岡本選手が引き継ぎますし、そういう意味ではプレーに集中できる環境にはなるのかもしれないですね。
中溝 そうですね。ただ、もし坂本選手がまた故障してしまったら、復帰するときに果たして原監督がどこのポジションで使うのか? 坂本選手のデビュー時から見ている原監督だからこそ、サードにコンバートするのか、あるいはファーストなのかとか、そういった問題も出てきますので、その辺の原采配もちょっと注目していきたいなと思っています。
菊地 ショートはどうしても負担のかかるポジションですからねぇ。
中溝 過去の名ショートたちを見ていても35歳というのが一つの山になっているんですけど、坂本選手も2023年は35歳になる年なんですよね。巨人ファンとしては、ずっと「打てるショート」の坂本選手を見てきたので、打てない若手のショートにどれだけ我慢ができるかですよね。
キャッチャー阿部の後釜が大変だったように、ショート坂本のあとも誰を持ってきても大変だと思うので、これをファンとしては長い目で見ていきたいと思いますね。
菊地 2023年、中溝さん的に注目してほしい若手選手はいますか?
中溝 ドラ1の浅野君は当然として、背番号55の秋広(優人)選手ですね。この前まで巨人の若手といえば秋広選手! という感じだったんですけど、2022年はファーストだけではなく外野も経験しつつ、イースタンリーグ最多安打にもなっているんですね。このまま大型外野手なのか、中田選手のあとのファーストなのか、一体どこで育てていくのかというのと、そろそろ1軍でなんだかの爪痕を残してほしい選手ではありますよね。
投手陣では井上(温大)選手ですね。2022年も終盤に4試合くらい先発したと思うんですけど、11月の侍ジャパンとの試合でも先発を任せられましたし、おそらく来季はローテーション入りを争ってくるんじゃないかなと期待しています。
菊地 井上投手はボールのキレも素晴らしいですもんね。
中溝 一巡目までは「すごい良い投手だなぁ」と思うんですけど、でも二巡目に入ると打たれだすんですよね。もしかしたら、中川投手の状態次第ではセットアップとしてもちょっと期待したいかなとは感じますよね。
戸郷に登ってほしい、エースの階段
中溝氏は戸郷翔征投手に新しいエースとして開幕投手と15勝を期待する 【写真:共同通信社】
中溝 ここは辛口にギリギリ1位かなと。
菊地 (笑)。
中溝 巨人ファンってどうしても独走優勝を求めがちなんですけど、ここは謙虚に僅差での優勝かなと。実際に2022年も打線はそこそこ良かったので、いかに投手陣を整備していくかとなったときに、新外国人投手は誰が来るかとか、あとは菅野(智之)投手の状態ですよね。昨シーズンも何度か離脱していたので、ここから15勝くらいするくらいに復活してくれたらとか、タラレバが結構ありつつも、まぁ普通に考えたらギリギリ1位かなと。
菊地 ちなみに2位以下はどうなりそうでしょうか?
中溝 どうしても高津ヤクルトがV3を目指してくるだろうなというのもありますし、阪神も岡田(彰布)監督が復帰しましたので、原監督vs岡田監督の昭和の香り漂う争いもファンとしては注目ですよね。岡田監督は時々、原監督の考えはお見通しだよというマウントを取ってくるのもありますし、原監督も年上の監督からそういうふうに来られるのも久々だと思うんですよね。阪神の投手陣は脅威ですし、本当にセ・リーグは混戦になりそうですよね。
菊地 最後になるんですけど、2023年の開幕投手を勝手に指名してください。
中溝 ここは新しい巨人を作るという意味でも戸郷(翔征)投手ですね。
菊地 菅野投手ではなくあえて?
中溝 WBCの選考も関係すると思うんですけど、巨人の新しい体制が岡本キャプテンで、投手キャプテンが戸郷投手ということなので、ここで世代交代というか世代闘争ですよね、菅野投手と戸郷投手がバチバチに争ってもらいたいなと。菅野投手のやる気を出させるためにも戸郷投手に初の大役を任せたいですし、組織への刺激というか、新しい風を吹かせるのもありなんじゃないかと思います。
菊地 戸郷投手も2年続けて9勝、9勝と来て、そこから壁を破って二桁勝って、さらに上へ、というところですもんね。
中溝 2022年は一つの壁であった二桁は突破したので、ここから15勝、さらに最多勝と、エースの階段を登ってほしいなと思っています。菅野投手もいつまで表のローテで投げてくれるのか分からないので、ここで一本立ちというか2023年は戸郷投手が新エースになった年だね、と言われるような1年を期待したいですね。
菊地 お話を伺っていると様々な希望が見えてくる感じがしますね。ジャイアンツファンの皆様も安心されたところもあるんじゃないかなと思います。では来季に向けてこんな部分を楽しみにしたいという想いがあればお願いします。
中溝 来季はやっぱり浅野選手です! しばらくは二軍でじっくり育てると思うんですけど、だからこそジャイアンツ球場で、近い距離で皆さんも見てほしいなと思います。
菊地 分かりました。中溝さん、今日はありがとうございました!