12球団の“熱烈”識者が語る!昨シーズンと新シーズン

DeNA識者が感じる優勝の空気、98年の再現 鍵は「1、2番とセンターライン」

Timely!編集部

投のMVPは山﨑、打のMVPはクリーンナップの3人

村瀬さんが「投」のMVPに選んだのは見事な復活を果たした山﨑康晃 【写真:共同通信社】

菊地 思えばオースティン不在というなかでのスタートでしたね。

村瀬 2022年は全員揃ったと勘違いしていたんですよ。シーズン前に球団のファンブックみたいなものにコラムを寄稿したんですけど、その書き出しが「全て揃った」という書き出しで(笑)。
 前年はオースティンとソトが(コロナ禍などで)入国できなくて、今永(昇太)もケガなんかがあったんですけど、2022年は石井琢朗コーチであり、斎藤隆コーチ、相川亮二コーチ、鈴木尚典コーチといった、球団にいなくてはいけない人達が帰ってきたところもあって、全てが揃って開幕を迎えられるというような、そういうことを書いたんです。
 それが、開幕直前になってオースティンが離脱し、ソトも今永も離脱し、そして絶対にレギュラーを獲らないといけない年だった森敬斗もケガで離脱し、あと佐野(恵太)もか? 結局誰もいなくなってしまって、もうコラムは読まないまま段ボールにしまってしまいましたね。

菊地 (笑)

村瀬 そのあとコロナになってしまってもっといなくなっちゃって。でもそこからよく持ち直しましたよ。

菊地 そんななかで村瀬さんが投打のMVPを選ぶとすると誰になりますか?

村瀬 今年は本当にみんな頑張りましたよ。先発で今永、大貫(晋一)が11勝しているんですよね。今永は8月の月間MVPも獲っているし、大貫も与えられたイニングを完璧にやってくれる、本当に計算できるシーズンでした。
 あとは濱口(遥大)投手が一皮剥けたというか。なんか人が変わったようにフォアボールを出さなくなった。フォアボールを出さない濱ちゃんというですね、みんなそこに言及するとなんか壊れちゃうんじゃないか、ちょっとそっとしておいてあげようみたいな空気が出来上がるくらいですね、濱ちゃんが素晴らしい別人のようなピッチャーになりましたよね。

菊地 (笑)

村瀬 濱ちゃんもMVP級の活躍と言いたいですんですけども、ベイスターズはやっぱり中継ぎがすごかったですよ。特に伊勢(大夢)! 71試合登板、エスコバー! 70試合登板。さらに入江(大生)投手がそこに入ってきて57試合も投げていただいて。
 田中健二朗投手もトミージョン(手術)から復活してかなりいいところで投げてくれていましたし。そこに最後の、やっぱり山﨑康晃なんですよ、今年は。去年まで散々苦しい思いをしてきて、なかなか結果も出ずストッパーも外されたりするしたなかで、2022年は56試合で37セーブ、防御率1.33ですから。完全復活ですよね。

菊地 珍しいですよね。このまま下降線をたどるのかなというところからV字回復という。

村瀬 正直、もうダメなんじゃないかと思わせるピッチングも前には多少ありましたけども、よくぞ本当にあそこから戻ってきたというね。特にお母さんも亡くされて、苦しい状況の中にあったと思うんですけどね。
 この前のファン感謝祭もね(編集注:対談は11月28日に実施)、残留宣言で涙の訳というか、ベイスターズファンは全員、入団からの山﨑康晃の物語を知っているわけですよ。それが2022年はやっと復活という形になって、それでまたベイスターズに残って優勝したいと言ってくれる。今年の投手のMVPはやっぱり山﨑康晃なんですけど、それと同時に新シーズンの優勝の空気もできたような感じがすごくするんですよね。

菊地 野手のMVPもお願いします。

村瀬 野手は、佐野(恵太)、牧(秀悟)、宮﨑(敏郎)ですね。息をするようにヒットを打つじゃないですか? 目立たないですけど、気がつくと普通に2安打、3安打するし。これを続けているのが本当にすごいと思うんですよ。
 牧選手なんかまだ2年目ですし。佐野選手だってずっと結果を残し続けているじゃないですか? 宮﨑選手も毎回同じようなスイングで同じようなヒットを打ち続けて、絶対ここで打ってほしいというときには打ってくれるし。
 今永投手が札幌ドームでノーヒットノーランをやりましたけど、あの時も0-0で9回2アウト一、二塁になって、これは下手をしたら佐々木朗希(ロッテ)の2回目の完全試合が目前だった試合みたいに、ノーヒットノーランのまま今永が代えられてしまうんじゃないかと思ったところで、宮﨑選手がライトオーバーを打って1点入れたというね。そこらへんの勝負強さと確実性がリーグでも図抜けていると思うんですよ。そこがやっぱりすごい。だから打つ方のMVPは誰かと言ったら、クリーンナップの3人ですよね。

鍵は1、2番とセンターライン、桑原と森への期待

「キーマン」に指名された桑原将志と、もっとも期待される森敬斗 【写真:共同通信社】

菊地 2023シーズンへ向けての課題というか、優勝を狙う上での補強ポイントなどはどこになりますか?

村瀬 やっぱり1、2番なんですよね。3、4、5番がすごくがっちりしているだけに、1、2番の出塁率、それとセンターラインになってくるんですよね、
 また98年の話になっちゃうんですけど、あの時も石井琢朗、波留敏夫という球団史上最高の1、2番がいて、うしろに鈴木尚典、ローズ、駒田(徳広)という、走者をかえす素晴らしい役がいてマシンガン打線というものが出来上がったんですけども、2023シーズンも1、2番が確定すれば、かなりマシンガン打線に似てくると思うんです。

 キーマンだと思っているのが、センター桑原(将志)なんですよね。まず守備では絶対に欠かせないんですよ。12球団No.1のセンターだと思っています、僕は。速度、打球への反応、球際の強さ、守備範囲の広さも含めて、桑原をセンターから外す手はないと思うんですよね。
 そこにバッティングの思い切りの良さ、積極性と一発もあるのが魅力ですよね。でもやっぱりこれ(調子の波)が激しいんですよね。だから桑原の調子が良ければチームも調子がいいんですよ。よくよく見ると、桑原の調子とチームの状況って、すごくリンクしていて。桑原が活躍してくれればチームは優勝できるのかなという感じがしています。

 あとはやっぱりね、2番ショートのところなんですよ。「2番ショート森敬斗」。本来なら2022年にこれを確立させたかったんですけどケガで出遅れたりがあって、確立することができなかった。ショート森が(石井)琢朗になってくれたら……。
 横浜の時代が来るか来ないかは、彼がレギュラーになれるかどうかだと思うんですよね。

 2022年に森君がレギュラーになれなかったから、京田陽太選手というすごい選手がトレードで来てくれました。これ、どうすんだろうと思って。悩ましいですよね。
 京田選手は守備が全然計算できるし、バッティングだって今年は厳しかったですけど、そもそも全然打てる人じゃないですか? 京田選手をどういうふうに使っていくのか、森君の育成方針も含めてどうなっていくのか。そこをちょっと新シーズンは見たいですよね。
 あとはセンターラインのキャッチャーですよね。

菊地 嶺井博希選手がね、FAでソフトバンクに行ってしまいましたけども。

村瀬 大好きだった嶺井選手、今年は打率こそ低かったですけど本当に良い場面で活躍してくれて。初めてCSに出たときの巨人との死闘でも、嶺井さんが決勝打を打ってくれたのを覚えていますし、FAで出ていってすごく寂しい思いはありますけども……。
 だからこそ、ドラフト1位で松尾(汐恩)を指名したということがすごく大きいと思うんですよ。1988年の谷繁元信さん以来のキャッチャーのドラフト1位なんですよ。
 ロッテは1年目からドラフト1位の松川(虎生)選手をキャッチャーで使っていましたけど、ベイスターズは松尾君を1年目からどれくらい使うのか? 谷繁さんは1年目に80試合に出場しているので、それぐらいは使って欲しいなという思いはあります。

菊地 森選手、松尾選手の名前が出ましたけど、新シーズン特に期待する若手選手などは他にもいますか?

村瀬 そうですね。でもやっぱり森君推しかなぁ。

菊地 2022年は全然投げなかったですけど(ドラフト1位の)小園健太投手もいますね。

村瀬 どうなんでしょうね? 大事に育てている感じはすごい見えているんですけどね。この小園、松尾に僕は80年代の野村(弘樹)、谷繁の若武者バッテリーのように、「令和の若武者バッテリー」として見てしまうわけですよ。まぁ、ベイスターズは高卒投手が育つことがなかなか少ないんですけど、頑張ってほしいです。

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