工藤公康は「現役ドラフト」をどう見たか? 3度の移籍経験から綴る選手たちへの思い
現役時代にFA、トレードでの移籍を経験している工藤氏。移籍の経験からどんなことを学んだのだろうか? 【写真は共同】
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現役時代の移籍で学んだこと
現役時代に3度の移籍を経験した工藤氏。それぞれの移籍で得たものに違いがあるという 【写真は共同】
FA移籍をしたことで、初めて見えてきた部分がありました。それまで一面しか見えていなかった物事の全体が徐々に分かるようになり、多くのことを学びました。球団が目指している野球、チームとしての方向性や選手の育成、監督の思いなどさまざまな側面を見ることで、自分自身が納得できたこともあります。当時は分からなかったことも、時間が経ったことで理解できたこともたくさんありました。
最初に私は、西武からダイエーに移籍しました。対戦相手となって初めて西武の強さの理由を実感しました。「強いチームとは何か?」西武にいた時に“当たり前”だと思っていたことも、それは西武にいたからそう感じていただけだったことがわかりました。外の世界を知ることで、西武というチームの強さの本質がわかったのです。「勝つためには何をしなければいけないのか?」「勝つチームとは何か?」を自分自身に問いかけ、実践する機会をいただけたことも、移籍で外の世界を知った経験があったからだと思います。
ダイエーから巨人に移籍する前も、当時の王貞治監督に相談すると、「他の球団を知ること、外の世界を見ることは自分自身の今後の野球人生につながる」とアドバイスをいただきました。巨人に移籍した時には、勝ち続けなければいけないチームのプレッシャーや、その中での自分の役割や立ち位置を理解することを学びました。
トレードで横浜に移籍した時には、2年目にリリーフを経験しました。リリーフ投手の大変さや苦労を学び、その中でどう調整しなければいけないのかを学びました。トレードであっても、そのチームで自分が求められていること、勝つために、チームのために、自分がすべきこと、できることに応える努力をしてきました。これは後からもお話させていただきますが、FA移籍であってもトレード移籍であっても変わらない部分かと思います。
これまでのすべての経験が、今の私につながっています。現役当時はここまで考えていなかったかもしれませんが、10年、20年経ってから見えてくるものや理解できたことがあり、大変貴重な経験だったと感じています。