楽天投手の兄も活躍するカバディ マイナー競技普及の課題とは?

平野貴也

指導者や対戦相手が少ない「地方のハンデ」

 しかし、地方は、チームとしてのモチベーション維持が難しい。カバディの場合は、試合数が圧倒的に少ない。学生大会や競技歴の浅い選手を対象としたチャレンジカップなどもあるが、すべての選手が目指す公式戦は、年に2~3回。鹿児島の小峯は「この大会(全日本)が終わると、半年以上、試合がない。チームに入って競技を始めてくれた人が、その間に辞めていってしまう」と嘆いた。チームや選手が多い関東地方は練習試合や合同練習を行えるが、九州は、鹿児島と福岡の2チーム。練習試合をするにも九州縦断が必要。試合を楽しむまでのハードルが高い。今大会では春に始動したVijeta(ヴィジータ)静岡が初心者チームとは思えない鋭い動きを見せたが、東京から日本代表の選手や指導者を招いた成果だった。地方では、指導者不足で競技力の向上に苦労する面もある。

 選手個々の競技意欲を保つのも容易ではない。日本代表は4年に一度のアジア大会が大目標となるが、世界選手権の開催は不定期。国際試合も少ない。代表活動に魅力を見出せずにいる若い選手は少なくない。加えて、地方の選手は、東京で定期的に開催される日本代表候補合宿に参加できず、実質的に対象外となってしまい、個人目標を持ちにくい。

協会は、いかにバックアップ体制を作るのか

人気漫画「灼熱カバディ」の影響は、普及の大きな追い風。キャラクターが登場するInstagram用ARフィルターが会場で先行提供された 【写真提供:株式会社ProVision】

 男子日本代表の新田晃千監督は、地方勢の躍進を喜びつつ、協会として後押しができていない状況に抱えるじくじたる思いを次のように話した。

「最近は、インターネットを使って交流を図り、経験者からアドバイスを得たり、地方から東京のチームの練習に参加したりする選手もいる。その熱意が続けば、日本全体の成長につながる。日本カバディ協会で地方をバックアップできれば良いが、現状は、東京の一極集中。もう少し地方のチームや選手が増え、指導者の派遣や定期的な交流会が行えるようになれば良い。東京にしか可能性がないと、競技を始めた人のモチベーションが下がるし、学生は卒業と同時に競技を辞めてしまう。東北、関西、九州などブロックごとに指導者がいて定期的にブロック代表練習ができればとも思うが、指導者が東京にしかいない」

 マイナー競技は、競技協会に人材や財源が不足しており、競技の普及や発展に打てる手が少ない。チームや選手も競技に専念できる環境ではないために余裕がなく、改善を協会頼みにしてしまうと、双方が「待ち」の姿勢になり、停滞してしまう。カバディでは、以前にも新たなチームが生み出された時期があったが、他を巻き込むバイタリティのある中心選手がいなくなるとチーム自体が消滅する状況を繰り返している。地方のチームを活性化し、全国に競技が可能な活動拠点を持ち続けることは、普及への大きな課題だ。

 全日本選手権後、静岡や栃木のチームが練習試合の計画を立てていたが、チームは競技協会による環境改善を待つのでなく、自力で目標を作り進むべきだ。定期戦などを行って目標にするのも一つの手だ。東京では日本代表選手たちが協会の活動としてYouTubeチャンネルの運営を始め、基本練習の方法を地方に伝える試みを始めた。人材も財源も少ない中で、東京と地方、代表と初心者、それぞれに両輪を自力で回さなければ進めないのが、マイナー競技の辛いところだ。しかし、アイデア次第で動ける自由度の高さもある。地方勢がエネルギーを見せているカバディで、今後どのような発展が見られるのか、注目したい。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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