【準々決勝クロアチアvs.ブラジル】王国の夢を打ち砕いた“延長マイスター”が、2戦連続のPK戦を制して4強入り

吉田治良
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尽きることのない運動量で、120分間を走り続けた37歳のモドリッチ。3番手で登場したPK戦でも、左隅に正確なシュートを沈めてみせた 【Getty Images】

 下馬評ではブラジル優位の声が圧倒的多数を占めていた。タレントの質と量で上回る優勝候補の筆頭が、決勝トーナメント1回戦で日本に苦しめられたクロアチアを凌駕するだろうと。しかし、東欧の雄はどこまでもしぶとく、どこまでもしたたかだった。得意の延長戦に持ち込むと、先制されながらも土壇場で追いつき、PK戦の末に勝利(1-1/PK4-2)して2大会連続のベスト4入り。今大会のベストとも呼べる白熱の好ゲームで、勝者と敗者を分けたものとは──。

急先鋒となったのは右SBユラノビッチ

 ヴァトレニ(炎の男たち)の魂が音を上げることなど、果たしてあるのだろうか。

 どんなに追い詰められても、どんなに疲労困憊の体でも、彼らは決して膝を折らない。クロアチアがその愛称通りの熱情で、優勝候補の大本命ブラジルを延長PK戦の末に飲み込んだ。

 決勝トーナメント1回戦で、日本と120分間の激闘を繰り広げたクロアチアに対し、韓国を余裕で退け、後半は流した感さえあったブラジル。コンディション的には間違いなく後者に分があった。ところが、前半はある程度引いてブロックを築き、様子見を決め込むかと思われたクロアチアが、予想に反して立ち上がりから果敢に前に出る。

 急先鋒となったのは、ヨシップ・ユラノビッチだった。縦に持ち運ぶドリブルでチームに推進力をもたらした右SBは、同時にブラジルの崩しの切り札ヴィニシウス・ジュニオールに、自由に前を向かせない止水栓のような役割も担っていた。

 中盤の攻防で効いていたのは、やはり37歳の重鎮ルカ・モドリッチだ。影が薄かった日本戦とは異なり、積極的にボールに関与しながら巧みにゲームをコントロール。これに対してブラジルも、昨シーズンまでレアル・マドリーで同僚だったカゼミロがマンツーマン気味に抑えにかかるが、前後左右と目まぐるしく立ち位置を変える司令塔を捕まえきれない。

 ミドルプレスからの素早いポジティブ・トランジション(守→攻)が、喉元に突き付けたナイフのような抑止力となって、ブラジルの出足を鈍らせる。どちらも決定的なシーンは作れなかった前半だが、それでも主導権を握っているように映ったのは、いつ足が止まってもおかしくないはずのクロアチアだった。
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著者プロフィール

1967年、京都府生まれ。法政大学を卒業後、ファッション誌の編集者を経て、『サッカーダイジェスト』編集部へ。その後、94年創刊の『ワールドサッカーダイジェスト』の立ち上げメンバーとなり、2000年から約10年にわたって同誌の編集長を務める。『サッカーダイジェスト』、NBA専門誌『ダンクシュート』の編集長などを歴任し、17年に独立。現在はサッカーを中心にスポーツライター/編集者として活動中だ。

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