Jリーグ・野々村芳和チェアマンが語る「ソナエルJapan杯」開催の意義と価値
コロナの問題も防災の枠の中に入ってきた
新型コロナウイルス対策も防災の枠組みの中に。「何をどう備えるべきか、次世代にしっかりしたものを残したい」(野々村チェアマン) 【写真:アフロスポーツ】
Jクラブが58に増え、その周りにたくさんのファン・サポーターがいます。リーグ発足30年でここまできたので、発信する情報を多くの人に届けることができるようになりました。そこにJリーグの価値があります。
――58のそれぞれのクラブが、防災という点でもそれぞれの地域に寄与できるはずです。
地域によって想定される災害が異なります。だから、地域によってクラブがしなければならないことが違ってきます。その地域が備えるべきことを各クラブが正しく伝えてほしい。
――災害対策という点で、Jリーグがまだ詰め切れていない課題はありますか。例えば試合開催中、アカデミーの活動中に地震などが起きた場合の対策は万全でしょうか。
東日本大震災後、Jリーグの試合開催中の対応についてはマニュアルができていて、各クラブが防災訓練も行っています。しかし、このマニュアルも都度、バージョンアップしていかなければならないと思います。
新型コロナウイルスの感染症拡大防止の観点で、考え直さなければならないこともあります。ある試合で落雷のリスクが生じた時、コンコースに人を集めるのはコロナ対策上、良くないので、お客さんを席にとどめたことがあります。それでいいのかどうか、対策を考えていかなければなりません。アカデミーの活動中の対応策についても同様です。
――「ソナエル」の中に新型コロナウイルス対策が入ってきていますね。
コロナの問題も防災の枠の中に入ってきました。コロナに対して、何をどう備えていかなければならないのか、どんな知識を蓄えていかなければならないのか、次世代にしっかりしたものを残していかなければなりません。
地域とクラブが抱える課題をリーグが把握する
昨年の第1回「ソナエルJapan杯」で優勝したのは、防災模試で高得点を獲得したJ2の長崎。地域、クラブ、Jリーグが一体となって防災意識向上に取り組む 【©J.LEAGUE】
クラブは地域を豊かにするというスタンスがかなりしっかりしたものになり、地域のためにという考え方が定着しました。クラブが地域の代表的な存在になるのが理想です。防災についても、地域を守るためにクラブがさまざまな発信をしていくべきです。
――JリーグでプレーしたOBが、防災についてできることもあるのではないでしょうか。
各地域で影響力のあるレジェンドが増えてきました。彼らには防災に関する啓発活動も進めてもらいたいです。被害を最小限にとどめるにはどのような準備をしたらいいのか、こうすればより安全だよねという発信、提言をしてほしいと思います。
――今回の取り組みに合わせて、リーグにできることはありますか。
クラブのスタッフは日常の試合の勝ち負け、事業の連続で、他のことに手が回らないこともあります。リーグは全体を俯瞰しながら、足りないところを埋めていく。そのためにはリーグのスタッフがクラブのことをもっと分かっていなければなりません。それぞれの地域とクラブが抱えている防災面での課題を、リーグのスタッフが把握していた方がいいと思います。
(企画・編集/YOJI-GEN)
1972年5月8日生まれ。静岡県清水市出身。清水東高から慶應大を経て、95年にジェフユナイテッド市原(現千葉)に加入。クレバーなMFとして活躍した。2000年にJ2のコンサドーレ札幌に移籍。レギュラーを確保し、J2優勝、J1昇格に貢献した。01年シーズンを最後に現役引退後は、主に解説者として活躍。その後、13年3月には札幌の運営会社、北海道フットボールクラブ(現株式会社コンサドーレ)の代表取締役社長に就任した。22年3月、元Jリーガーとして初めて、Jリーグのチェアマンに就任。