鳥谷敬の「セ・リーグ○×予想」答え合わせ 注目の主軸打者の今季を独自の視点で分析
前後のバッターの調子で岡本の成績が左右される
本来の力を出せていない岡本だが前後のバッターの調子によって復調もありそうだ 【写真は共同】
3月の鳥谷氏の予想「×」
3月時点での鳥谷氏の見解
「打率を残すには足の速さに加えて、打順の問題も出てきます。チームが岡本選手に期待しているのは、ホームランと打点。そう考えると、三冠王は難しいと思います。たとえば、ランナーなしで岡本選手が打席に入るとき、多少強引でもいいので、ホームランを狙ってほしい場面が出てきます。打率を高めようとすると、ホームランが減っていく可能性があるので、三部門すべての数字を上げるのはかなり難しいですね」
岡本和真7月20日時点での打撃成績
打率.246(28位) 本塁打21(2位) 打点62(3位)
――そもそも、三冠王自体のハードルが高いわけですが……。岡本選手は、ホームランで10本以上、打点で20点以上、トップの村上選手に差を付けられています。
1年通してずっと打ち続けることはまずありませんが、今年は状態が良くない時期が長く続いている印象です。これは、岡本選手だけの問題ではなく、後ろを打つバッターの調子が上がらず、なかなか固定されないことも影響しています。「後ろのバッターで抑えればいい」と思えれば、インコースを徹底的に突いたり、ストライクからボールになる変化球で誘ったり、厳しい配球で攻めることができます。バッターは基本的には打ちたい気持ちが強いので、ボール球に手を出す機会が増え、バッティングが崩れていきやすくなります。
――どうしても、岡本選手にかかる負担が大きくなり、それが調子を崩すことにもつながっていると。
そういうことです。あとは個人的には、村上選手の成長を目の当たりにして、多少の焦りを感じているのでは……と思うところもありますね。それだけ、村上選手が素晴らしいバッティングを見せ、スワローズを引っ張っています。
――岡本選手に対する後半戦への期待はいかがでしょうか。
岡本選手の後ろを打つバッターが、どれだけ打てるかによって、バッティングの状態も変わってくるはずです。中田翔選手やウォーカー選手が数字を残していけば、バッテリーとしても、岡本選手と勝負せざるをえない状況になります。こうした状況を作れるようになれば、バッティングの状態もおのずと上がっていくように思います。
2年目で完全にベンチからの信頼を勝ち取った
球場の有利さはあるが、鳥谷氏は牧選手の技術の高さを絶賛している 【(C)YDB】
3月の鳥谷氏の予想「○」
3月時点での鳥谷氏の見解
「期待を込めて「○」にしておきます。ヘッドスピードが速く、確実性がある中でボールを飛ばすことができるのが、最大の特徴です。確実性と強さを両立するのは非常に難しいことですが、牧選手は1年目から実践できていました。しかも、年間通して試合に出たうえでの成績なので、価値があります。牧選手は、岡本選手や村上選手のような打球の角度を持っているわけではありません。それでも、30本の可能性を感じるのは、本拠地が横浜スタジアムであることです。風向きがバッター有利になることが多く、球場自体も広くはありません。この球場の特性が、牧選手には有利に働くと思います」
牧秀悟7月22日時点での打撃成績
打率.283(10位) 本塁打17(6位) 打点59(4位)
――7月22日現在、十分に可能性のある数字を残しています。
また球場の話になりますが、横浜スタジアムは中距離打者に有利な球場で、風向きも外野方向に吹きやすい。甲子園を本拠地にしていたら難しいですが、横浜スタジアムであれば30本の可能性は十分にあります。
――前半戦の打率はどう見ていますか?
少し調子を落とした時期もありましたが、2年目でこれだけコンスタントに打っているわけですから、高い技術を持っている証です。ヘッドスピードが速く、確実性と強さの両方を備えていることが、最大の特徴と言っていいでしょう。それに、佐野恵太選手、宮崎敏郎選手と、前後を打つバッターの調子がいいので、バッテリーからすると、牧選手と勝負せざるをえない状況が生まれます。こうした打線のバランスも、3割、30本には追い風になるはずです。
――前半戦で印象に残っているのが、千葉ロッテとの交流戦(6月12日)です。8回、1アウト満塁、3ボールの場面で、低めのストレートを打ってピッチャーゴロ。ホームゲッツーに終わりました。あそこで打ちにいくのが牧選手らしいとも思いましたが、鳥谷さんはどう見ていましたか?
ヒットを打てたかどうかは、結果にしかすぎません。3ボールから振りにいったということは、「絶対に打ち返せる」という自信を持った中でのスイングだったはずです。ベンチとしても、「待て」を出さずに、牧選手にすべてを任せている。牧選手の思い切りの良さとともに、ベンチからの信頼を感じたシーンでした。
企画構成:株式会社スリーライト