「実は送りバントはしたくなかった」宮本慎也×岩本勉が語る2番打者論
打線論を根本から覆した小笠原道大
小笠原道大の通算成績は打率.310、2120安打、378本塁打、1169打点、出塁率.389、長打率.540。豪快なフルスイングが信条の、強打の2番打者だった 【写真は共同】
ヤクルトで2番打者として活躍した宮本、90年代の日本ハムのエースとして多くの2番打者と対戦してきた岩本にも同様のアンケートを行い、印象に残っている2番打者を5人選定してもらったところ、2人の選手で意見が一致。ここではその選手を紹介しよう。
1人目は小笠原道大。3番打者のイメージが強いかもしれないが、小笠原は日本ハム時代の1999年から01年7月中旬にかけて、主に2番を打っていた。この間に残した成績が圧巻で、クリーンアップ顔負けと言っても過言ではない。
99年:打率.285、156安打、25本塁打、83打点、出塁率.349、長打率.499
00年:打率.329、182安打、31本塁打、102打点、24盗塁、出塁率.406、長打率.552
01年:打率.339、195安打、32本塁打、86打点、出塁率.407、長打率.582
「これまでの日本の野球は(1番打者が)出て、(2番打者が)送って、クリーンアップが返すというイメージだった。2番打者が送らないというのは、僕には衝撃的だった。打つ選手を2番に入れた方が点は入ると思わせてくれた」と宮本は述懐する。また、チームメイトの岩本も「日本における攻撃的な2番打者の走り。根本的な打線論を覆す、衝撃的な存在だった」と振り返る。
川相昌弘の通算成績は打率.266、1199安打、43本塁打、533犠打。犠打の成功率は.906で、97年は47度の企図で失敗が0だった 【写真は共同】
そんな川相を目指したという宮本も「川相さんは基本的に引っ張りが得意で、(後に)右打ちを覚えた選手。当て勘も良く、ヒットエンドランもできる。昭和から平成を代表する2番打者」と賞賛。岩本は「攻撃態勢を整える、エキスパート中のエキスパート」と絶賛する。
強打の2番か、つなぎの2番か。宮本と岩本が選定した全選手は、ぜひ動画で確認してほしい。宮本が「監督の思いが出る打順」というように、さまざまなタイプの選手が2番を任されてきたことがわかってもらえるはずだ。
「打てる選手を配置せよ」宮本慎也の2番打者論
宮本慎也の通算成績は打率.282、2133安打、62本塁打、408犠打。粘り強いバッティングが持ち味で、シーズン打率3割を5度達成している 【写真は共同】
番組は冒頭から「送りバントはしたくない」という、宮本の衝撃的な一言から始まる。01年にシーズン67犠打の日本記録を樹立した宮本が理想とするのは、あくまでも攻撃的な2番打者。「多く回ってくる打順だから、ある程度打てる選手が向いている」という。送りバントについては「ゲーム終盤に迎える1、2塁といったケースでは重要だが、序盤は打った方がいい」と考える。
ネタバレを防ぎたいので、本稿での紹介はここまでに留めたい。自身の現役時代、そして野球界のトレンドを分析しながら語る、宮本の2番打者論は必見だ。
セイバーメトリクスの観点から、MLBでは2番にチーム最強打者を配置するようになって久しい。NPBでも、2番打者が記録した犠打の数が14年の577から21年には226(※)まで減少するなど、作戦が変化しており、強打の選手を配することは珍しくなくなった。宮本が言うように、2番打者にはチーム、そして監督の野球観が如実に現れる。今後も2番打者から目が離せない。
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