連載:打順別・最強打者は誰だ!?<2番打者編>

「実は送りバントはしたくなかった」宮本慎也×岩本勉が語る2番打者論

柴山高宏(スリーライト)

打線論を根本から覆した小笠原道大

小笠原道大の通算成績は打率.310、2120安打、378本塁打、1169打点、出塁率.389、長打率.540。豪快なフルスイングが信条の、強打の2番打者だった 【写真は共同】

 2本目は「歴代最強の2番打者は誰だ!?」。収録に先がけ、スポーツナビでは5月下旬に「最強の2番打者」に関するアンケート調査をユーザーに行い、6月上旬にOBと現役に分けて結果を発表した。また、プロ野球のデータ分析の専門集団・DELTAには、セイバーメトリクスの観点から2番打者の格付けを依頼した(2014年度以降が対象)。皆さんがお気に入りの選手は、何位にランクインしているだろうか。

 ヤクルトで2番打者として活躍した宮本、90年代の日本ハムのエースとして多くの2番打者と対戦してきた岩本にも同様のアンケートを行い、印象に残っている2番打者を5人選定してもらったところ、2人の選手で意見が一致。ここではその選手を紹介しよう。

 1人目は小笠原道大。3番打者のイメージが強いかもしれないが、小笠原は日本ハム時代の1999年から01年7月中旬にかけて、主に2番を打っていた。この間に残した成績が圧巻で、クリーンアップ顔負けと言っても過言ではない。

99年:打率.285、156安打、25本塁打、83打点、出塁率.349、長打率.499
00年:打率.329、182安打、31本塁打、102打点、24盗塁、出塁率.406、長打率.552
01年:打率.339、195安打、32本塁打、86打点、出塁率.407、長打率.582

「これまでの日本の野球は(1番打者が)出て、(2番打者が)送って、クリーンアップが返すというイメージだった。2番打者が送らないというのは、僕には衝撃的だった。打つ選手を2番に入れた方が点は入ると思わせてくれた」と宮本は述懐する。また、チームメイトの岩本も「日本における攻撃的な2番打者の走り。根本的な打線論を覆す、衝撃的な存在だった」と振り返る。

川相昌弘の通算成績は打率.266、1199安打、43本塁打、533犠打。犠打の成功率は.906で、97年は47度の企図で失敗が0だった 【写真は共同】

 2人目は川相昌弘。犠打の世界記録保持者(533犠打)であり、日本球界が長年追求してきたスモールベースボールにおいて重要な役割を担う、つなぎの2番の象徴であるように思われがちだが、川相は犠打だけでなくバッティングも良かったことはご存知だろうか。川相が初の規定打席に到達した90年には、打率.288、9本塁打、出塁率.356、長打率.450をマークしている。

 そんな川相を目指したという宮本も「川相さんは基本的に引っ張りが得意で、(後に)右打ちを覚えた選手。当て勘も良く、ヒットエンドランもできる。昭和から平成を代表する2番打者」と賞賛。岩本は「攻撃態勢を整える、エキスパート中のエキスパート」と絶賛する。

 強打の2番か、つなぎの2番か。宮本と岩本が選定した全選手は、ぜひ動画で確認してほしい。宮本が「監督の思いが出る打順」というように、さまざまなタイプの選手が2番を任されてきたことがわかってもらえるはずだ。

「打てる選手を配置せよ」宮本慎也の2番打者論

宮本慎也の通算成績は打率.282、2133安打、62本塁打、408犠打。粘り強いバッティングが持ち味で、シーズン打率3割を5度達成している 【写真は共同】

 2番打者シリーズの3番組の中で、筆者が最もおすすめしたいのが「名手・宮本慎也が語る2番打者論」だ。2番打者に特化した前述の2番組で60分近い収録を行ってきただけに、これ以上の話が出てくるのかと思ってしまったのだが、それは杞憂だった。宮本が語る「2番打者論」は予想外のものであり、制作スタッフはもちろん、岩本も驚きを隠すことができない様子だった。

 番組は冒頭から「送りバントはしたくない」という、宮本の衝撃的な一言から始まる。01年にシーズン67犠打の日本記録を樹立した宮本が理想とするのは、あくまでも攻撃的な2番打者。「多く回ってくる打順だから、ある程度打てる選手が向いている」という。送りバントについては「ゲーム終盤に迎える1、2塁といったケースでは重要だが、序盤は打った方がいい」と考える。

 ネタバレを防ぎたいので、本稿での紹介はここまでに留めたい。自身の現役時代、そして野球界のトレンドを分析しながら語る、宮本の2番打者論は必見だ。

 セイバーメトリクスの観点から、MLBでは2番にチーム最強打者を配置するようになって久しい。NPBでも、2番打者が記録した犠打の数が14年の577から21年には226(※)まで減少するなど、作戦が変化しており、強打の選手を配することは珍しくなくなった。宮本が言うように、2番打者にはチーム、そして監督の野球観が如実に現れる。今後も2番打者から目が離せない。

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(動画編集、企画構成:スリーライト)

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