0-1に終わったブラジル戦は「惜敗」? あらためて浮き彫りになった日本の課題
長友の右サイド起用は「ビニシウス対策」だったのか?
試合後のブラジル代表の会見。右からチッチ監督、サンパイオ分析コーチ、ファビーニョフィジカルコーチ。 【宇都宮徹壱】
試合後のチッチ監督のコメントからは、よくあるリップサービスとは異なる、対戦相手の苦労の痕跡が見て取れた。とはいえ、日本は「惜敗」とぬか喜びすべきではない。ブラジルとの実力差は明らかで、シュート数だけを見てもブラジル18に対して日本はわずか4。しかも枠内シュートはゼロだった。FIFAランキング1ケタ台の強豪国に対し、うまくすれば引き分けに持ち込めるかもしれない。が、中3日が続くW杯のグループステージで、奇跡を2度起こすこともまた容易ではない。
PK以外の失点を許さなかった、日本の強固で粘り強いディフェンスについては、一定以上の評価が与えられるべきだとは思う。一方で、かねてからの課題も浮き彫りになった。特に気になったのが、招集できなかった選手たちの不在の大きさ。冨安健洋の穴は、板倉が十分に埋めてくれた。兼任も含めて、センターバックの人材は問題なさそうだ。心配なのは、右サイドバックと1トップである。
長友の右サイド起用に関して、森保監督は「ひとつオプションが増えたと思います」と評価していたが、これはビニシウス対策というよりも、酒井宏樹不在のソリューションと考えた方が自然だろう。一方の1トップについては、古橋も前田も相手の裏を突くスピード系。指揮官は「大迫(勇也)がいない中、違うタイプの選手を使っているように見えるかもしれませんが、起点としてのプレーでも彼らには期待しています」としていた。であるならば、より高さのある上田綺世も試してほしかった。
スコアだけなら「惜敗」のようにも見えるブラジル戦。成果が感じられる一方で、メンバー固定による弊害が、あらためて浮き彫りになるゲームでもあった。とはいえ、今は後ろを振り向いている時ではない。3日後から始まるキリンカップでは、顕在化した課題に取り組みながら、本大会に向けた有意義なトライの場となることを望みたい。