W杯アジア最終予選特集 #この一戦にすべてを懸けろ

帰ってきたキャプテン・吉田麻也の覚悟 豪州に勝って「日本の歴史を変える」

飯尾篤史

本当に頭が下がる川島、原口、柴崎らの姿勢

試合に出場していなくても、チームの一員として自身の役割を果たす。川島(右)や原口、柴崎は欠かせない存在だ 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

――かつてはミランに本田圭佑選手、インテルに長友佑都選手、マンチェスター・ユナイテッドに香川真司選手、シャルケに内田篤人さんと、トップ・オブ・トップのクラブでプレーする選手がいましたね。

 彼らの経験や場数、慣れというのは、チームにいろんなものをもたらしていたと思います。ただ、これってずっと続いていくものであって、そのときが良くて、今が悪いというわけではない。彼らの活躍があったからこそ今の若い選手たちが当たり前のようにヨーロッパのクラブに移籍できるようになって、移籍市場も日本の選手をある程度評価してくれるようになった。だから今、僕たちがやらなきゃいけないのは、その価値を下げないこと、どんどん上げていくこと、その中で代表チームが結果を出していくことが大事だと思うので、今の選手たちは上の世代へのリスペクトを忘れてはいけないですし、上の世代の人たちは現役を離れてからも日本のサッカーに貢献してくれるんじゃないかなと思っています。

――ターニングポイントのひとつに挙げられた10月のオーストラリア戦ですが、サウジアラビアに敗れてからわずか5日後に迎えました。その間のチームの雰囲気をどう感じ、キャプテンとしてどうマネジメントしたのでしょうか?

 森保(一)監督とも何度も話しましたし、飛行機の中でも(川島)永嗣さんや大迫、宏樹といった上の世代の選手何人かと、チームの雰囲気や戦い方、精神的な準備の部分についてたくさん話をしました。結局は選手が責任を持ってやらないといけないと。僕自身もサウジアラビア戦のあと、イライラして口が滑って余計なことを言ってしまいましたけど(苦笑)、覚悟を持って戦ったので、乗り越えられたのは大きかったと思います。

――川島選手の名前が出ましたが、サブ組も含めた一体感や彼らの貢献についてはどう感じていますか?

 もう本当に頭が下がりますね。サブだからチームの雰囲気を崩さないとか、当たり前のことなんですけど、それってすごく難しくて。特に歳が上に行けば行くほど難しくなると思うんですね。自分のサッカー観やプライド、今までやってきたことへの自負があるだろうから。でも、それを押し殺して毎トレーニングでベストを出してくれているのは、本当に頼りになるなと。あとは、雰囲気を作るとかではなく、シンプルに自分が試合に出るんだと。サブに甘んじるのではなく、チャンスを常に狙っている。永嗣さんをはじめ、(柴崎)岳もそうだし、(原口)元気もそう。そういう姿勢を見せてくれているのが、すごくいいですね。

1秒たりともポジションを譲りたくない

2016年10月のアウェイでのオーストラリア戦は1-1のドロー。今回の対戦では必ず勝利すると燃えている 【写真:ロイター/アフロ】

――さて、W杯出場権の懸かったアウェイのオーストラリア戦が3月24日に迫ってきました。どういう気持ちで臨みますか?

 気をつけなければならないのは、オーストラリアと引き分けても、次のベトナムに勝てばいいという雰囲気を作ってはいけないこと。おそらくサウジアラビアも、前回の日本戦にそうした雰囲気で臨んできたんじゃないかと思うので。結果、日本に敗れ、勝ち点1差に詰め寄られて、難しい戦いを強いられることになった。そうではなく、自分たちが毎試合、自分たちのベストパフォーマンスを出す。森保監督もずっと言っていることですけど、当たり前のことをしっかりやろうと。それは何よりも難しいことなんですけど、しっかりやりたいと思います。

 あと、日本代表ってW杯予選のアウェイのオーストラリア戦で勝ったことがないんですよね(09年6月●1-2、12年6月△1-1、16年10月△1-1)。最終予選でいつも僕らの前に立ちはだがるライバルに勝ってこそチームの成長だと思うので、勝ちに行きたいです。

――そのためには何が必要でしょう?

 ひとつは、全員が良いコンディションで試合を迎えること。オーストラリアに入るのは前日とか、前々日になると思います。特にヨーロッパから行く場合は、時差もあるし、距離も日本に帰るときの倍近くかかるので、かなり難しい。短い練習の中で戦術をブラッシュアップして、試合で安定したパフォーマンスを出すためには、良いコンディションといい気持ちの準備が大事になってくる。そのふたつがキーになると思います。

――では最後に。日本代表としての誇り、日の丸の重み、W杯に行かなければならない責任について、どう感じていますか?

 選手たちともよく話すんですけど、これよりもいい仕事はないと思っています。そのときに選ばれた23人だけが日本代表で、その中から先発で出られるのが11人、センターバックなら2人、キャプテンだったら1人。そういう仕事をさせてもらっているので、責任も感じるし、誇りもすごく感じます。若いときはそんなふうには思っていなかったんですけど、年齢が上がれば上がるほど、いろいろなものがのしかかってくるんですよね。それは、自分がいろいろなことを考えられるようになったからでもあるし、よく言えば、人間として広く思考できるようになってきたからかもしれない。

 そうした責任や重圧を感じながらパフォーマンスを出さなければならないんですけど、やっぱり楽しいんですよね。だから1試合でも多く出たい。この前はケガで欠場して、滉と彰悟が試合に出て結果を出してくれた。それは良いことなんですよ。良いことなんですけど、本音を言えば、僕は1秒たりともポジションを譲りたくない。その気持ちがある限りは代表として戦っていくことができるんじゃないかと思うし、そういう気持ちがなくなったときは去りどきなんじゃないかと思います。僕は常々、日本のサッカーの歴史を変えたいと思っているので、自分の残りのサッカー人生を懸けて、そこにトライしたいですね。

――では、まずはオーストラリアとのアウェイゲームに勝って、日本サッカーの歴史を変えると。

 はい。変えたいと思います。

(企画構成:YOJI-GEN)

吉田麻也(よしだ・まや)

【Office kitto】

1988年8月24日生まれ。長崎県出身。名古屋グランパスU-15、U-18を経て2007年にトップチームに昇格して3年間プレー。10年1月にオランダのVVVに移籍すると、イングランドのサウサンプトンを経て、現在はイタリアのサンプドリアに所属する。日本代表初選出は10年1月。その後、12年ロンドン五輪、14年ブラジルW杯、18年ロシアW杯に出場した。日本代表不動のセンターバックにして、キャプテンを務める。

【試合情報】
AFCアジア予選 -ROAD TO QATAR-
第9戦 オーストラリア代表vs日本代表
3月24日(木)18時10分キックオフ(17時30分配信開始)
DAZNにて独占配信

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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