デンマーク戦、大逆転の伏線は8エンド 劇勝のカーリング女子を船山弓枝が解説

竹田聡一郎

最後まで勝敗が分からない面白い試合に期待

デンマーク戦はカーリングの魅力が凝縮したこれ以上にないぐらいの好ゲームだった 【写真は共同】

――デンマーク戦でいえば、他に印象的なシーンはありましたか?

 4エンドの戦い方にロコ ・ソラーレらしさが見えました。リードを許した日本はコーナーガードを置き、複数点を取りにいく展開にしたかったのですが、デンマークが中央で勝負するためにガードストーンを2つ重ねてきました。そのガードを鈴木選手がランバック(ガードストーンからハウス内のストーンを狙うこと)気味に外したうえに、シューター(投げたストーン)を残す好ショットを決めて、戦場をコーナーに引き戻しました。これで2点を取れる土台が作れました。

 バックエンド(サードとスキップ)の攻防で、ハウス奥が混雑した状態になりましたが、最後は藤沢選手の相手のストーンを押し出すタップで2点を獲得。ラストロックは「ちょっと外を走っていたかな」という印象でしたが、吉田夕梨花選手と鈴木選手が適切なタイミングを待って冷静にスイープを始めました。ハウスで待つ吉田知那美選手も適切なコールができていた、チーム全員で運んだ素晴らしいショットでしたね。ああいうショットが増えると、ロコ・ソラーレはどんどん上向きになってくると思います。

――同じリードとして吉田夕梨花選手のパフォーマンスはいかがですか?

 テレビで見ている限りストーンのクセはわかりませんが、ショット率も安定していますし、うまく投げ分けていると思います。夕梨花選手はタッチが優れているんですよね。タッチとは、リリースの仕方、石のクセ、アイスの滑り具合、ハックを蹴る強さなどを調整して、頭と体に取り入れて投げる感覚のようなものですね。説明が抽象的ですが、総合的なセンスに優れています。この大舞台でもしっかり彼女の強さが出ていると思います。

――試合はまだまだ続きます。最後に今後の展望をお願いします。

 夕梨花選手が安定していて、セカンドの鈴木選手の調子もいいです。フロントエンド(リードとセカンド)で大きく崩れることはないですし、知那美選手も効果的なキーショットを決めています。デンマーク戦では藤沢選手がドロー、テイクの両方でビッグショットを決めてくれました。調子は上向きです。同日開催となるROC戦、現在好調の米国戦あたりがプレーオフ進出のカギを握る大切な試合になる気がしています。勝負は時の運なので分かりませんが、いずれにしてもデンマーク戦のように最後まで勝敗が分からない、そんな面白いゲームを期待したいですね。

船山弓枝(ふなやまゆみえ)

【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

 1978年、北海道北見市常呂町生まれ。2002年ソルトレイクシティ、06年トリノ、14年ソチと三度の五輪出場経験は、小笠原歩(日本カーリング協会理事)、石崎琴美(ロコ・ソラーレ)、吉田知那美(同)、本橋麻里(ロコ・ステラ)と並んで日本カーリングでは最多タイ。フォルティウスの不動のリードとして日本選手権連覇を目指す。趣味は温泉旅行。特技は収納とパッキング。

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著者プロフィール

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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