羽生の集大成を示す「4回転半認定」、圧倒的だったチェン 歴史的試合を無良崇人が総括

野口美恵

大会期間中の急成長で銀メダルを獲得した鍵山

初出場の五輪で銀メダルに輝いた鍵山。今大会のシンデレラボーイとなった 【Getty Images】

 鍵山選手も素晴らしかったですね。4回転ループは慎重に行き過ぎた感じはありましたが、あとは勢いがありました。後半の4回転トウループも、シーズン前半の鍵山選手だったらステップアウトしているだろうと思うほど、着氷で耐えるジャンプだったのですが、失敗しそうな空気を自分の自信で抑えきっていた感じでした。やはり団体戦のフリーであれだけいい演技ができたことが、自信につながっていますね。団体戦でほぼノーミスで、もう一度ここまで完成度の高い演技ができるなんて、本当に成長しているのだと感じました。

 得点自体は団体戦の方が高かったのですが、個人戦にはまた違う緊張感があります。ましてやショート2位での折り返しで、メダルを意識してのフリー。さすがに「緊張しました」と言っていましたが、そのなかで「自信を持ってやろう」という気持ちが勝っているのが伝わってきましたね。

 演技構成点(PCS)は9.75点まで出したジャッジもいて、本当によく滑っていました。彼はスイスイ滑るのが、本当に良いところです。銀メダリストに値する滑りだったと思います。

銀から銅になるも4年分の成長を示した宇野

メダルの色は変わったものの、五輪の舞台でスケーターとしてより成熟した姿を見せた宇野 【Getty Images】

 今回、宇野選手が4回転フリップをあえて前半に持ってきたことで、彼の本気を感じました。以前の宇野選手であれば、自分の跳びたいと思っていた後半のままやっていたと思います。でもショート3位で折り返し、一番高得点の4回転フリップを前半にしたのは、絶対に失敗しないで良い点数を狙っていったということ。ある意味、それは彼なりに攻めた結果です。緻密にちゃんと損がないようにやろうとした、その気持ちが感じられました。

本来なら4回転トウループも「4回転+3回転」にしたかったと思いますが、無謀なことはせずに、自分ができる内容で、どうやったら一番ミスなくまとめられるかを考えに考えて演技したということ。宇野選手の頑張りを感じました。

 演技面でも、この『ボレロ』を演じようとしていました。魅せることが板についてきたというか、年齢にともなって成長しています。表現を意識しすぎるとジャンプの精度が落ちることもありますが、「攻める気持ちでジャンプを維持してやる」というアプローチができるのが宇野選手らしさかなと思いました。

 今シーズン通して4回転を5本という攻める気持ちを持って戦ってきて、この五輪という大舞台でそれをやり遂げた。「成長の銅メダル」だと思います。好き勝手にやったら獲れたというメダルではなく、自分がどうしたら良いかを考えたうえで得たメダルだから、本当に価値があると思います。4年分の成長が詰まっているメダルですね。

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著者プロフィール

野口美恵

元毎日新聞記者、スポーツライター。自らのフィギュアスケート経験と審判資格をもとに、ルールや技術に正確な記事を執筆。日本オリンピック委員会広報部ライターとして、バンクーバー五輪を取材した。「Number」、「AERA」、「World Figure Skating」などに寄稿。最新著書は、“絶対王者”羽生結弦が7年にわたって築き上げてきた究極のメソッドと試行錯誤のプロセスが綴られた『羽生結弦 王者のメソッド』(文藝春秋)。

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