2022シーズンJリーグ戦力ランキング 2位、3位と王者・川崎の差は大きくない

河治良幸

堅守の名古屋は監督交代がどう影響するか

浦和の「守備力」は川崎F、名古屋と並んで最高評価。長く最終ラインを支えた槙野が退団したが、そのCBには犬飼を補強し、なにより昨季以上の活躍が期待できる百戦錬磨の酒井(写真)の存在が頼もしい 【(C)J.LEAGUE】

 守備力は飛び抜けたチームこそないが、やはり川崎Fが浦和、名古屋グランパスと並んでトップ。基本的に即時奪回を狙いながら、ボールの位置に応じた柔軟な対応もできる。日本代表として中国戦、サウジアラビア戦でも活躍したキャプテンの谷口彰悟が中心的存在だ。ケガでの出遅れが心配されたジェジエウも、復帰までにそれほど時間はかからないと見られる。

 浦和は槙野智章が退団した一方、鹿島から犬飼智也が加入し、リカルド・ロドリゲス監督のスタイルを後方から支える。そしてこのチームにはなんといっても酒井宏樹がいる。1対1に強い守備だけでなく、チーム全体に多大な影響を与える日本代表不動の右サイドバック。昨年はオフがないまま浦和に合流し、さらにオーバーエイジとして東京五輪に参加したことで、心身ともに疲労困憊だったようだが、短いながらもオフがあり、リフレッシュして臨む今季はパフォーマンスがもっと上がると見る。また2年目を迎えたリカルド監督の戦術がチームにより浸透し、攻守のバランスがさらに良くなりそうだ。

 名古屋は堅守を植え付けたマッシモ・フィッカデンティ監督に代わり、FC東京を率いていた長谷川健太監督になったことがどう影響するか。より高い位置でボールを奪いに行くスタイルを目指しているようで、ショートカウンターによる得点チャンスは増えるはずだが、裏を取られるリスクも考えて評価は「18」にした。

 ただし、ケガで昨年の後半戦を棒に振った丸山祐市が復帰すれば、統率力は高まりそうだ。長谷川監督と丸山はFC東京で半年だけ一緒だったが、出番を失った丸山が夏に名古屋移籍を決断した経緯がある。それだけに、丸山復帰後の長谷川監督の起用法が注目される。
 

充実補強の浦和、ラストピースの獲得は?

J1復帰1年目の昨季に躍進した福岡は、「監督力」と「完成度」の2項目で高評価。就任3年目の長谷部監督の考えが浸透し、チームは着実に前進している 【(C)J.LEAGUE】

 選手層は、主軸を残しつつ充実した補強を見せている浦和に最高評価の「18」をつけた。強いていえば興梠慎三が札幌に移籍したFWの層は十分ではないが、西野努テクニカルダイレクターは“ラストピース”の獲得を公言しており、開幕までに公式発表があるかどうか。

 川崎Fは山根視来という絶対的な存在がいてバックアッパーに不安がある右サイドバック、横浜FMはセンターバックが手薄だが、どちらも過密日程にも耐えられるだけの陣容は整っている。ただし、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)の決勝ラウンドに勝ち上がると、後半戦のスケジュールがかなりタイトになる。ケガ人などの状況を見ながら夏場に補強があってもおかしくない。

 監督力は、過去4年で3回優勝に導いた鬼木監督の川崎Fと、就任1年目で天皇杯優勝をもたらしたリカルド監督の浦和を最高点の「19」とした。その後に続くのが鹿島と広島。鹿島は気鋭のレネ・ヴァイラー、広島は経験豊富なミヒャエル・スキッベという欧州をベースにキャリアを積んだ新監督が率いる。両チームとも成長が楽しみで「18」をつけたが、コロナ禍で来日できず開幕に間に合わないのはネックだ。

 そのほか、実績十分の長谷川監督が就任した名古屋、マスカット監督の横浜FM、1年目でJ1昇格、2年目で残留にとどまらずチームを8位まで引き上げた長谷部茂利監督の福岡、ミシャ(ミハイロ・ペトロヴィッチ)監督が5年目を迎える札幌、大分で成功を収めた片野坂知宏監督を招聘したガンバ大阪、チョウ・キジェ監督の京都を「17」にした。

 完成度は、2連覇中の川崎Fが文句なしの「20」でトップ。旗手がセルティックに、長谷川竜也が横浜FCに移籍したが、放出は最小限で、チャナティップと瀬古樹をピンポイント補強。他の新戦力はルーキーであり、熟成路線を歩む。ただし、鬼木監督は現状維持にとどまっていたら3連覇は難しいとの認識が強く、戦術的なアップデートを示唆している。そういった変化を恐れぬチャレンジがどう出るか。

 2位は横浜FM。昨夏にアンジェ・ポステコグルー監督がセルティックに去ったが、同じオーストラリア出身のマスカット監督を後任に迎えた完全な継続路線で、基本的には質と精度の追求が成長のベースになる。基本スタイルは変えない中でもポジショニングはかなり入れ替わるので、相手は対応が難しい。ベンチから出ていく選手もチームの戦い方を共有しながら特長を出してプレーする。

 戦術の浸透度が高い福岡も評価に値するため、3位の「18」。やはり完全な熟成路線で、多彩なコンビネーションを駆使した攻撃が常に相手の脅威となる札幌、そして神戸がこれに続く。

(企画構成:YOJI-GEN)

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著者プロフィール

セガ『WCCF』の開発に携わり、手がけた選手カード は1万枚を超える。創刊にも関わったサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で現在は日本代表を担当。チーム戦術やプレー分析を得意と しており、その対象は海外サッカーから日本の育成年代まで幅広い。「タグマ!」にてWEBマガジン『サッカーの羅針盤』を展開中。

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