堀島行真が銅獲得で日本勢メダル第1号 モーグル頂上決戦の雌雄を西伸幸が解説
予選1回目から苦しみながらも決勝3回目まで勝ち上がり、日本勢初となるメダルを獲得した堀島 【写真は共同】
予選の上位20名が進出した決勝では、3段階の勝ち残り方式を採用。1回目は上位12名、2回目は6名が通過し、最後の3回目は6名で滑ってメダルを争う。堀島は日本勢でただ一人決勝3回目に残ったが、表彰台の一番上に立つことはできなかった。今季のW杯で3勝をあげるなど好調を維持していた堀島だけに、上位二人との差は一体何だったのか。元モーグル日本代表で、バンクーバー、ソチ、平昌と3大会連続で五輪に出場し、堀島ともかつては日本代表のチームメイトだった西伸幸さんに勝負の分かれ目を振り返ってもらった。
本来の力は発揮できずも、抜群のリカバリーでメダルを死守
着地でバランスを崩すなど決勝3回目でミスがあったものの、最小限に抑えてメダルを死守した堀島 【写真は共同】
日本勢メダル第1号という結果をしっかり残した堀島選手を称えたいですね。ただ、仮に出場選手全員が持てる力を100%発揮したとしたら、堀島選手が金メダルを獲ると思っていました。今大会は序盤から本来のパフォーマンスとは異なり、実力を遺憾なく発揮できたとは言い切れない内容でしたね。それでもミスを即座にリカバリーし、得点への影響を最小限に留めた点は「さすが」の一言です。
――今大会直前のW杯で優勝するなど、堀島選手は万全の状態で五輪に臨んだように見えましたが。
今季はW杯で3勝を挙げ、すべての試合で表彰台に上がるなど抜群の安定感がありました。しかし、予選1回目は16位で、2回目に回る結果になりましたね(※決勝進出は計20名。予選1回目で全体の上位10名が先に決勝行きを決め、残りは予選2回目の上位10名が進出)。誰もが「信じられない」という結果からのスタートで、関係者も「まさか」と思う試合展開でした。
――予選1回目での16位のパフォーマンスはどう見られましたか?
堀島選手らしくないパフォーマンスで驚きました。予選1回目はエアで飛び過ぎてしまいましたね。本来はエアを飛ぶ準備を周到に行うはずがオーバースピードでエアに入り、そのまま踏み切った印象です。モーグル選手はジャンプが左右どちらかに飛びやすいという癖がある選手がいます。堀島選手はエアのレベルが高く、本来まっすぐ飛ぶはずがスタートエリアから見て右に飛んでおり、着地地点のコブの影響でミスにつながりました。
ただ、五輪という雰囲気に飲まれることなく、すごく落ち着いているようにも見えました。その後は予選でのミスをリカバリーし、エアの難易度を上げながら順当に決勝まで駒を進めましたね。
――予選のエアで右に流れたのは、会場で吹き荒れる風の影響もあったのでしょうか?
堀島選手のスタート時に強風が吹くのが画面越しにも分かりました。向かい風の中で滑ればタイムを伸ばせませんし、横から吹けばエアに大きく影響します。予選で右に流れてしまった際に、風による影響がかなりあるように思いました。
――エアに入る前のスピード調整ですが、会場が人工雪であることの影響もありましたか?
人工雪は天然雪よりも硬いという特徴があります。ただ、堀島選手はW杯でも雪が硬いコンディションのコースで好成績を収めているので、この点に関して影響はなかったと思います。ただ、北京五輪のコースは少しトリッキーだなと感じました。第1エアを終えた後に滑る部分をミドルセクションと呼びますが、ミドルセクションではコブの間隔が異なっていて、リズムに変化をつけたコースという印象ですね。
――決勝3回目でも少しミスがあるなど、堀島選手の本来の滑りではないように見えました。
そうですね。第1エアへの侵入速度が速くなりすぎて大きく飛び過ぎていましたね。モーグルでは、エアに入る前の速度調整や重心の位置など、飛ぶための準備が大切になります。堀島選手は、世界でもトップクラスの技術を持ち、ジャンプを得意としています。それだけに、珍しい失敗だなと思いました。
モーグルはターン、エア、スピードという3要素の合計得点を競うので、第1エアで失敗した場合に、ミスの挽回のためにスピードを上げてタイムを稼ぐことがあります。ただ、堀島選手自身、そういった展開は予想していなかったと思います。しかしながら、第1エアの後は堀島選手らしい攻めの滑りが見られましたし、非常に良いパフォーマンスでした。堀島選手はスピードも速いのですが、タイムも23.86秒と追い上げましたね。