連載:プロ野球みんなの意見

江本孟紀、槙原寛己、里崎智也が熱弁! 「16球団構想より下部組織の拡充を」

前田恵

下部組織のさらなる拡充を

槙原寛己 【画像:スリーライト】

江本 読売新聞の渡邉恒雄さんはずっと「球団数を減らして1リーグにしたほうがいいんじゃないか」と主張していて、2004年の球界再編問題のときには実際、それを画策した。私は当時、猛反対したけど、日本の現状を考えると、そうなってもいいのではないかと思うことがある。子どもの数、野球人口は減る一方だし。今は球団の数を増やすことよりも、MLBの3A、2A、1A、ルーキーリーグのように下部組織を拡充した方がいいと思う。

里崎 同意です。下部組織の発展を通じて球界全体のレベルアップを図っていく方が、現実的だと思います。

槙原 球団数をいきなり4つも増やせば、レベルの低下も懸念されます。本来、二軍相応の実力しかない選手が、いきなり一軍でプレーするケースが出てくる。選手の立場からするとチャンスが増えていいかもしれないけど、レベルは当然下がってしまう。ファンはそんな選手やチームを見て、果たして「プロ野球」を楽しむことができるのかな。また、新球団の本拠地候補に沖縄県が挙がっているけど、台風の時期にどうやって試合の日程を組んでいくのか。ドーム球場を建設しないと、試合をすることすら難しいんじゃないかな。

里崎智也 【画像:スリーライト】

里崎 「移動」も実は見過ごすことができない問題だと思います。例えば、愛媛県に本拠地を構える新球団がカープと対戦するために広島へ行くとしたら、しまなみ海道を車で3時間半かけて移動するか、特急と新幹線を乗り継いで4時間近くかけて移動するか、フェリーで瀬戸内海を渡るか、三択になる。このように、交通の便がよくない地域間で試合のスケジュールを組むことは、MLBみたいに球団がプライベートジェットでも持たない限り無理だと思います。

江本 「16球団構想」は夢も希望もある話なんだけど、現実的に考えると、球団運営にかかる莫大(ばくだい)な資金負担に耐え得る企業の存在とレベルの低下、移動の問題などがネックになる。球団数は現状が頭打ち、つぶし合うことはないと思うよ。それよりも、プロ野球チームと独立リーグが連携するなどして、MLBのように下部組織を充実させた方がいい。プロを本気で目指す子どもたちのためにも、段階的な成長につながる方法を模索してほしいね。

(構成:スリーライト)

プロフィール

江本孟紀(えもと・たけのり)
1947年高知県生まれ。 法政大、熊谷組を経て、70年に東映(現日本ハム)に入団。72年に南海(現ソフトバンク)移籍後はエースとして、73年のリーグ優勝に貢献。76年には阪神に移籍し、81年に現役引退。92年には参議院議員初当選を果たす。タイのナショナルベースボールチーム元総監督。現在は野球解説者として活動するとともに、独立リーグ「高知ファイティングドッグス」総監督を務める。

槙原寛己(まきはら・ひろみ)
1963年愛知県生まれ。大府高を経て、81年にドラフト1位で巨人に入団。83年に新人王を獲得すると、斎藤雅樹、桑田真澄とともに「三本柱」の一角として、7度のリーグ優勝、3度の日本一に貢献。94年には対広島戦で史上15人目となる完全試合を達成した。2001年に現役引退。現在は野球解説者、タレント、YouTuberとして活動している。

里崎智也(さとざき・ともや)
1976年徳島県生まれ。鳴門工業高から帝京大を経て、1998年にドラフト2位で千葉ロッテマリーンズに入団。2005年のリーグ優勝と日本一、「史上最大の下剋上」と呼ばれた10年のリーグ3位からの日本一に貢献。06年のWBCでは正捕手として王ジャパンを世界一に導いた。14年に現役引退。現在はテレビ、ラジオ、YouTube、書籍など、幅広い分野で活動中。

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著者プロフィール

1963年、兵庫県神戸市生まれ。上智大学在学中の85、86年、川崎球場でグラウンドガールを務める。卒業後、ベースボール・マガジン社で野球誌編集記者。91年シーズン限りで退社し、フリーライターに。野球、サッカーなど各種スポーツのほか、旅行、教育、犬関係も執筆。著書に『母たちのプロ野球』(中央公論新社)、『野球酒場』(ベースボール・マガジン社)ほか。編集協力に野村克也著『野村克也からの手紙』(ベースボール・マガジン社)ほか。豪州プロ野球リーグABLの取材歴は20年を超え、昨季よりABL公認でABL Japan公式サイト(http://abl-japan.com)を運営中。

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