連載:プロ野球みんなの意見

江本孟紀、槙原寛己、里崎智也がセに提言! 「DH制より“二刀流”を育成するべき!?」

前田恵

野球は本来、9人でやるもの

巨人「三本柱」の一角・槙原寛己。平成唯一の完全試合達成者だ 【スリーライト】

里崎 セ・リーグは“二刀流”の育成に本気で取り組んだ方がいいですよ。プロ入りする投手のほとんどは、高校時代までエースで四番だったんですから。セの投手は二刀流を前提に育て、大谷(翔平)君みたいに週に一度はしっかり打席に入る。この方が時代のニーズにもマッチしていると思うんです。

江本 昔の投手は、二刀流みたいな選手ばかりだった。通算38本塁打の先輩・金田正一さんのように、バッティングのいい投手が結構いたんだ。巨人の堀内(恒夫)だって、通算21本打っている。僕も阪神時代のチームメイトの川藤(幸三)よりは打つ自信あったからね(笑)。

一同 爆笑。

槙原 里崎君の言うこともわかるんだけど、大谷君は100年に一人の逸材じゃない? あんな選手、さすがにいないよ(笑)。

2000年代のロッテの躍進を支えた里崎智也。正捕手として2005年、10年の日本一に貢献した 【スリーライト】

里崎 高校時代からやってきたバッティング練習をプロでも続けていれば、2割くらいは打てるようになるんじゃないかと思うんですよ。中日の柳(裕也)なんて、なかなかいいバッティングを見せますからね。

江本 投手にバッティングを本腰入れて取り組ませるというのは、おもしろいアイデアだな。新庄(剛志)監督がセ・リーグにいたら、やっていたんじゃない?

槙原 巨人はやるみたいですよ。投手コーチの桑田(真澄)がそんなことを言っていました。彼は通算打率.216ですからね。

江本 野球は本来、9人でプレーするもの。そこは変えてはならない伝統であり、守っていく意識があってもいいと思うよ。

里崎 そもそもDH制のほうが、後から入ってきたわけですから。東都大学野球リーグが94年からDH制を導入しても、東京六大学野球は頑として採用しない。そこは江本さんのおっしゃるように、「野球は本来、9人でプレーするもの」という意識があるからこそ、なんでしょうね。やはり野球の本質にかかわるような伝統は、守ったほうがいいと思います。

江本 私がコミッショナーになったら、野球の伝統は守りつつ、冒頭で述べた「隔年DH制」を導入して、この論争に終止符を打ってみせますよ。

(構成:スリーライト)

プロフィール

江本孟紀(えもと・たけのり)
1947年高知県生まれ。 法政大、熊谷組を経て、70年に東映(現日本ハム)に入団。72年に南海(現ソフトバンク)移籍後はエースとして、73年のリーグ優勝に貢献。76年には阪神に移籍し、81年に現役引退。92年には参議院議員初当選を果たす。タイのナショナルベースボールチーム元総監督。現在は野球解説者として活動するとともに、独立リーグ「高知ファイティングドッグス」総監督を務める。

槙原寛己(まきはら・ひろみ)
1963年愛知県生まれ。大府高を経て、81年にドラフト1位で巨人に入団。83年に新人王を獲得すると、斎藤雅樹、桑田真澄とともに「三本柱」の一角として、7度のリーグ優勝、3度の日本一に貢献。94年には対広島戦で史上15人目となる完全試合を達成した。2001年に現役引退。現在は野球解説者、タレント、YouTuberとして活動している。

里崎智也(さとざき・ともや)
1976年徳島県生まれ。鳴門工業高から帝京大を経て、1998年にドラフト2位で千葉ロッテマリーンズに入団。2005年のリーグ優勝と日本一、「史上最大の下剋上」と呼ばれた10年のリーグ3位からの日本一に貢献。06年のWBCでは正捕手として王ジャパンを世界一に導いた。14年に現役引退。現在はテレビ、ラジオ、YouTube、書籍など、幅広い分野で活動中。

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著者プロフィール

1963年、兵庫県神戸市生まれ。上智大学在学中の85、86年、川崎球場でグラウンドガールを務める。卒業後、ベースボール・マガジン社で野球誌編集記者。91年シーズン限りで退社し、フリーライターに。野球、サッカーなど各種スポーツのほか、旅行、教育、犬関係も執筆。著書に『母たちのプロ野球』(中央公論新社)、『野球酒場』(ベースボール・マガジン社)ほか。編集協力に野村克也著『野村克也からの手紙』(ベースボール・マガジン社)ほか。豪州プロ野球リーグABLの取材歴は20年を超え、昨季よりABL公認でABL Japan公式サイト(http://abl-japan.com)を運営中。

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