大津vs.青森山田、注目すべき3つのポイント 両校の「10番対決」は実現するのか?

安藤隆人

大津(写真左)と青森山田(写真右)の決勝戦を3つのポイントに分けて展望する 【写真は共同】

 まずこのプレビュー原稿を書く際に、とても複雑でやりきれない思いがある。準決勝第一試合に臨むはずだった関東第一に新型コロナウイルスの陽性反応が出た選手がいたため、協議の結果、出場辞退が決まり大津が不戦勝という形で決勝進出となった。

 辞退を決めた関東第一の選手、スタッフ、関係者への思いとともに、意図せず初の決勝進出となった大津の選手、スタッフ、関係者は変な後ろめたさを抱いていないかが心配される。

「昨日(7日)の夜8時に報告を受けて、選手たちの動揺は隠せなくて、午前の練習も少し元気はなかった。準決勝に向けていろんな人からメッセージをもらっていたので、そこがなくなったのはぽっかり穴が空いたような感じ。座っていても言葉を一切交わさない状況でした」と大津・山城朋大監督が重い口を開いたように、大津としてもショックは大きい。それだけに、大津の選手たちには堂々とファイナリストとして戦ってほしいと切に願う。

 前置きが長くなってしまったが、ともにユース年代最高峰の高円宮杯プレミアリーグに所属するチーム同士の戦いとなった決勝戦を3つのポイントに分けて展望する。

左の田澤夢積と右の藤森颯太をどう封じるか

藤森颯太(写真左)のドリブル突破はわかっていても止められないほどの切れ味で、かつトップスピードに乗った中でも周囲を見渡せる力を持っている 【写真は共同】

 青森山田のストロングポイントの1つとして、田澤夢積と藤森颯太の両サイドハーフの突破力とクロスの精度がある。田澤はボールキープ力とビルドアップに関わる能力が高く、左足のキックの精度は群を抜いている。藤森は縦への鋭いドリブル突破はわかっていても止められないほどの切れ味で、かつトップスピードに乗った中でも周囲を見渡せる力を持っている。そのため、ドリブルの『先』のプレーの選択肢が多く、右足のクロスやシュートの精度が非常に高い。

 大津はいかにこの両サイドを自由にさせないかが重要になってくる。多くのチームがこの両ワイドに対して5バックを敷いて、サイドと縦へのスペースを消しにかかった。準決勝の高川学園も5バックにして両サイドを消しにかかったが、後半は巻き返しのために4バックに戻すと、藤森の突破力がより際立つようになった。

「5バックで縦のスペースを消される時は、周りを使ってパスを駆使しながら打開することを考えましたが、後半は4バックになったのでサイドで1対1ができるようになって、もっと自分の良さを出せるようになったと思います」

 藤森がこう語ったように、4バックの相手の方が良さが生きるのは間違いない。大津の基本布陣は4-4-2。果たして平岡和徳総監督、山城監督はどの選択をして来るのか。大津はプレミアWESTで強豪Jクラブユースと対等に渡り合ってきており、『対青森山田布陣』を敷かずに真っ向勝負を挑んでもハイレベルな戦いになることは間違いないだけに、その采配には注目が集まる。

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著者プロフィール

1978年2月9日生まれ、岐阜県出身。5年半勤めていた銀行を辞め単身上京してフリーの道へ。高校、大学、Jリーグ、日本代表、海外サッカーと幅広く取材し、これまで取材で訪問した国は35を超える。2013年5月から2014年5月まで週刊少年ジャンプで『蹴ジャン!』を1年連載。2015年12月からNumberWebで『ユース教授のサッカージャーナル』を連載中。他多数媒体に寄稿し、全国の高校、大学で年10回近くの講演活動も行っている。本の著作・共同制作は12作、代表作は『走り続ける才能たち』(実業之日本社)、『15歳』、『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、『ムサシと武蔵』、『ドーハの歓喜』(4作とも徳間書店)。東海学生サッカーリーグ2部の名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター

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