【YouTube企画】懐かしの助っ人外国人選手たち

伝説の助っ人ブライアントを訪ねて 近鉄時代の記念品は…いずれ野球殿堂博物館に寄付か

丹羽政善

4打数連続本塁打で歴史に名を刻む

49本塁打を打った記念として贈呈された黄金バット 【丹羽政善】

 やがて、近鉄のリチャード・デービスが大麻所持で退団したことで、ブライアントに白羽の矢が立った。6月終わり、近鉄へ移籍して1軍登録されると、その年は74試合で打率.307、34本塁打、73打点、OPS1.100とすさまじい数字を残す。

 惜しくもリーグ優勝を逃したが、彼はチームが最後の最後まで優勝争いする原動力となった。伝説の「10.19」(連勝すれば優勝。第1試合は勝ったが、第2試合は時間切れ引き分け)では、第2試合の8回、一時は勝ち越しとなる本塁打も放っている。

藤井寺球場の壁に貼ってあったポスターを譲り受けた 【丹羽政善】

 しかし、彼の名が歴史に刻まれたのは翌年のこと。10月12日、首位西武と1ゲーム差で2位につける近鉄とのダブルヘッダーが行われた。さらに近鉄とゲーム差なしの3位につけていたオリックスは同日、ロッテとダブルヘッダーを戦っており、三つ巴のペナントレース争いは熾烈を極めていた。

 西武は、ダブルヘッダーで1勝1分け以上なら、オリックスとロッテのダブルヘッダーの結果次第で優勝が決まる――という状況。近鉄としては絶対に負けられなかったが、第1試合でブライアントは、まず4回にソロ本塁打を放ち、4点ビハインドの6回には満塁本塁打を記録。さらに同点の8回、苦手としていた渡辺久信(現西武GM)から決勝本塁打を放ち、逆転勝ちに貢献。ブライアントひとりで、全得点をたたき出した。

 第2試合も3回、1打席目に敬遠されたブライアントが、1試合目から数えて4打数連続となる勝ち越し本塁打を放つと、チームが勢いづいてそのまま連勝。2日後、リーグ優勝を決めた。ブライアントはこの年、49本塁打をマークし、リーグMVPにも選ばれている。

最多三振記録には理由がある

1989年10月12日、このバットで4打数連続本塁打を放った。オークションにかけたらいくらになる? 【丹羽政善】

 お宝紹介映像に登場するバットこそ、その4連発を打ったときのもの。「オークションにかけたら、どのくらい価値があるんだろう?」と苦笑したが、想像もつかない。

 インタビューの途中、打球にバックスピンをかけて、遠くへ飛ばすことはできるのか、という話になったが、その説明の際、ブライアントはおもむろにそのバットを手に取り、さらにイチローのサインボールを使って解説。ぜいたくな展開となった。

4連発を打ったときのバットとイチローのサインボールで打撃解説をしてくれた 【丹羽政善】

 さらに興味深かったのが、三振についての話だ。彼はたった1年でホームランバッターとしての地位を揺るぎないものとした一方、三振も多く、93年の204三振は今も歴代最多だ。そして3位までブライアントが占めている。

<日本プロ野球 シーズン最多三振記録>
1 ブライアント 204(1993) 127試合
2 ブライアント 198(1990) 108試合
3 ブライアント 187(1989) 129試合

 しかし、彼に言わせれば、これには理由がある。それはスポーツナビ公式YouTubeチャンネルの中で語っているのでそちらに譲るが、大谷翔平(エンゼルス)の三振が多かったことと共通点があるようだ。よって、その対策もアドバイスしているので必見だ。

近鉄時代のユニホーム。いつか野球殿堂博物館などへの寄付も考えている 【丹羽政善】

 なお、同時期に阪急、オリックス(89年から阪急がオリックスに)、ダイエーで活躍したブーマー・ウェルズ(83〜92)とのエピソードも、実にユニークである。

 歴代の助っ人の中でも人気、実力ともトップのふたりは今、ともにアトランタ郊外に住んでいる。ブライアントの兄がブーマーと大学の野球部でチームメートだったことから、昔からの顔なじみ。そもそもブライアントをインタビューすることになったのは、数年前、ブーマーに会ったことが縁だ。

 ブライアントは日本へ行くまでブーマーが阪急でプレーしていることを知らなかったそうだが、「彼の存在は心強かった」と話す。

「日本での生活習慣、野球のことなど、試合後に食事をしながら学んだ」

 もっとも、頼りすぎた結果……一杯食わされる。星野伸之(現野球評論家)を巡ってのやり取りは、彼の鉄板ネタでもあるので、それはぜひ、YouTubeチャンネルで――。

ブライアントは日本でプレーできたことへの感謝を口にした 【丹羽政善】

 さて、これ以上書くことはネタバレになるので控えるが、現在ブライアントは、日本プロ野球外国人OB選手会の理事も務めており、2019年8月にはその活動の一環で来日。今後、新型コロナウィルスの感染・拡大が収束すれば、日本のファンの前に姿を見せることもありそうだ。

スポーツナビ公式YouTubeチャンネルでブライアントがプロ野球の思い出を語る【後編】

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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